『君は青空の下にいる』
(森本里菜・著/集英社・りぼんマスコットコミックス)
(山口県・くらたともひろ)
野球をとりあげたマンガはプロ野球に高校野球に草野球と各種かつ数あれど、これは存在自体が異色である。なぜなら、この作品、少女マンガだからである。
視点を変えて考えても、高校野球の「選手」を主人公にすえたのは、少女マンガとしては異色である。
ストーリーはと言うと、美浜高校の野球部に、一人の女の子が入部してきた。一ノ瀬渚がその人。はじめのうちは反発する部員もいた。それもそのはず、前代未聞の女子部員だったからだ。しかし、彼女のひたむきな姿に、彼らも考えを改める。
そして目標である夏の甲子園大会へ向けて歩みを始めた…といった具合である。
作品自体はもともと「りぼん」という雑誌の増刊枠のひとつ「秋のびっくり大増刊号」の平成6年度版に発表された読み切りで、この時は、夏の大会の県予選の準々決勝で敗れてしまった時点で終わっている。
その後、春の甲子園をテーマにした4回ものの連載を「りぼん」本誌の平成8年2月号から5月号にかけて連載、さらに、再び夏の甲子園をテーマにした物語を、今度は「りぼんオリジナル」平成9年8月号から平成10年4月号にかけて発表、そして甲子園球場での大会の開始前の渚の苦悩をメインに描いた物語の「完結編」を「春のびっくり大増刊号」も平成10年度版に発表している。
ただし、単行本には他の作品も収録されている巻があるので、その点は注意が必要。
また、野球マンガの割に試合のシーンが少ないが、これは、本来の対象である女の子は野球そのものを知らないという人が多い、そのためにそれを極力少なくした、という事情があるためで、その点を念頭において読んでいただきたい。
ところでこのマンガは、実は千葉県が舞台なので、何と千葉マリンスタジアムが出てくるシーンがあるのだ。ロッテファンの方は、このあたりをチェックしてみては?
他にも見どころはいろいろあるのだが、いちいちとりあげていては、これからお読みになる方々の興味をそいでしまうおそれがあるので、それはこの単行本全4巻をお読みになられて、ということで。
ただし、これの1巻がリリースされた平成7年から、最終巻である4巻がリリースされた平成11年現在まで、単行本の注意書きにもあるのだが、高校野球への女性選手の試合出場は認められていないので、この作品はフィクションである、と割り切って読まなければならない。この点は少しつらい所だ。
でも、「あ、こんな野球マンガもあるんだな」という感じで、この作品は読んでいただきたい。
でも、このマンガのように、女の子が甲子園のグラウンドに立つという風景、考えただけでも楽しいと思うけどね。