優勝招き猫?〜「CATS」
(岐阜県・うし)
劇団四季の十八番、ロンドン・ミュージカル「CATS」。「CATS」上演中は劇場のある街を本拠地とする球団が優勝する、と言われて久しい。果たして、その信憑性は?
《表1》は日本初演から今までの公演先と優勝球団をまとめたものである。下記の通り、「CATS」は足掛け19年、延べ12会場で公演されており、プロ野球と縁のない公演地は札幌のみである。
統計学を学んだことのない方もある方も、暫しの間お付合いをお願いします(参考文献:「チャート式確率・統計」←高校時代の参考書)。詰めが甘いのは重々承知しているので、あまり深く追求しないように。なお、会場近郊を本拠地とする球団も考慮に入れようと思い、表には印を付けたが、対象となるのは東京と大阪だけなので計算に入れていない。
《表1》
年 |
公演先 |
セントラル | パシフィック | イースタン |
ウエスタン |
マスターズ |
1983 | 東京 | 讀賣 |
西武 |
西武 |
中日 |
― |
1984 | 東京 | 広島 | 阪急 |
西武 |
南海 |
― |
1985 | 大阪 | 阪神 | 西武 |
西武 |
広島 |
― |
1986 | 大阪 東京 |
広島 | 西武 |
讀賣 |
阪神 |
― |
1987 | 東京 | 讀賣 | 西武 |
讀賣 |
中日 |
― |
1988 | 名古屋 | 中日 | 西武 |
讀賣 |
中日 |
― |
1989 | 名古屋 | 讀賣 | 近鉄 |
讀賣 |
オリックス |
― |
1990 | 福岡 | 讀賣 | 西武 |
讀賣 |
中日 |
― |
1991 | 札幌 | 広島 | 西武 |
讀賣 |
広島 |
― |
1992 | 札幌 大阪 |
ヤクルト |
西武 |
讀賣 |
中日 |
― |
1993 | 大阪 | ヤクルト | 西武 |
讀賣 |
中日 |
― |
1994 | (公演なし) | 讀賣 | 西武 |
讀賣 |
オリックス |
― |
1995 | 東京 | ヤクルト | オリックス |
讀賣 |
近鉄 |
― |
1996 | 東京 | 讀賣 | オリックス |
ロッテ |
近鉄 |
― |
1997 | 札幌 | ヤクルト | 西武 |
日本ハム |
オリックス |
― |
1998 | 札幌 福岡 |
横浜 | 西武 |
ヤクルト |
阪神 |
― |
1999 | 福岡 名古屋 |
中日 | ダイエー |
日本ハム |
阪神 |
― |
2000 | 名古屋 | 讀賣 | ダイエー |
讀賣 |
中日 |
― |
2001 |
名古屋 大阪 |
ヤクルト | 近鉄 |
西武 |
阪神 |
大阪 |
2002 | 大阪 | ? |
? |
? |
? |
? |
注1/ホークスは1988年に本拠地を大阪から福岡へ移動。
注2/公演先と本拠地が同じの場合、チーム名、公演先の近郊の場合、チーム名とした。
注3/マスターズリーグは2001年より開幕。
T公演先と本拠地が一致する確率(会場の勝率)
@一軍だけの場合
単純に考えて、一致したのは、1983,1987,1988,1995,1996,1999,2001年で延べ7会場、延べ8球団が優勝している。確率を計算する(以下A式)と、6割3分6厘。
また、会場毎の勝率(以下B式)、例えば、大阪公演は今までに3回行われているが、その3回のうち、近鉄又は南海が優勝している確率は・・・、という様に計算すると、東京・名古屋・・・10割、大阪・・・3割3分3厘、福岡・・・5割となる。
A二軍も考慮に入れた場合
(1)一軍も二軍も優勝した場合
一致するのは1987,1988,1995年の延べ3回、2会場のみ。A式では2割7分3厘、B式では東京・・・6割6分7厘、名古屋・・・5割、大阪・福岡・・・0割となる。
(2)一軍もしくは二軍のどちらかが優勝する場合
計算結果は@の時と同じであるが、こちらの場合は下記に述べる。
U公演中、本拠地球団が優勝する確率(標準偏差を求める)
Tの方法は単純計算の結果であり、実は不都合な点も出てくる。「CATS」が半年以上のロングランをすることを考慮に入れなければならない。当然年をまたいだ公演も出てくる。初日と千秋楽も考慮に入れなければならないだろうが、ここでは無視する。
計算方法であるが、標準偏差を求める公式↓に当てはめて考える。
χの標準偏差=
なお、χの平均値= 、また、χの平均値=で求める。
例えば1983〜1984年の東京公演の場合、足掛け2年の公演で地元球団が優勝したのは1回なので勝率は5割・・・というように各公演地の確率(階級値χ)を求め、またその階級値χが何回あったかも数える。
@一軍だけの場合
集計結果は《表2》の通り。標準偏差を求めると、χ=0.432 となる。
《表2》
優勝する確率χ | 0 |
0.333 |
0.5 |
1 |
計 |
回数 f | 3 |
1 |
4 |
2 |
10 |
χf | 0 |
0.333 |
2 |
2 |
4.333 |
χ2f | 0 |
0.111 |
1 |
2 |
3.111 |
A一軍と二軍が同時に優勝する確率
上記と同様に計算すると、χ=0.075。
B一軍もしくは二軍のどちらかが優勝する確率
こちらも同様に計算すると、χ=0.584。
C参考
初日と千秋楽を考慮に入れて計算すると、@の場合、χ=0.45になる。なお、AとBについても似たような値を求めることが出来た。 ただし、これに関しては別の計算方法を考えたほうが良い。
Vまとめ
計算結果は上記の通りで、成績が芳しいとはお世辞にも言えない。また、どう考えても広島東洋カープは「招き猫効果」を期待できない。ただ、札幌公演を除く1995年以降を見ると、1998年以外は二軍も含めて公演先と優勝球団の本拠地が一致している為、「招き猫効果」が言われるようになったのではないだろうか。
また、劇団四季は地方公演ももちろん行っているが、ロングランを前提としているだろう「CATS」は集客や装置のこと等を考えると、どうしても大都市での公演ばかりになってしまう。もし広島公演が実現するならば、その時は公演先近郊にある球団も含めた「招き猫効果」を考えてもいいのではないかと思っている。
最後に、1992年7月〜1993年9月の大阪公演は大阪スタヂアムで行われたことを付記しておく。
【作品データ】
作曲/アンドリュー・ロイド=ウェーバー
作詞/T.S.エリオット
日本語訳詩/浅利慶太
25匹の猫の物語。劇中のナンバー、「メモリー」は有名。
1981年ロンドンのニューロンドンシアターで初演、2002年5月閉幕(21年間のロングランを達成)。