『0対122 けっぱれ!深浦高校野球部』      

 (川井龍介著/講談社彩流社)

(福岡県・まっちゃん)

1998年夏、青森で突然飛び出した試合。
0対122。ラグビーでもバスケットボールでも射撃でもない。野球、である。

全国高等学校野球選手権大会青森大会、東奥義塾対深浦。かたや甲子園出場歴のある古豪、こなた小さな町の小さな学校。1998年7月18日青森県営球場においてこの両者が対戦した第三試合はとんでもない珍試合となってしまった。

部員わずか10名、そのうち野球経験者は4名の深浦に対し、東奥は初戦からレギュラークラスを揃えて全力でぶつかってきた。その結果、東奥は打者116、安打86、四死球33、盗塁76、一方深浦は打者20、三振16、安打0、そして7回コールドで試合時間3時間47分、122対0という、気の遠くなるような記録が残ってしまったのである。

この試合は翌日のスポーツ紙一面を飾るなど大々的に報道され、「最後まであきらめずによく戦った」「いや、深浦は果たして参加する資格があったのか?」と賛否両論の意見が飛び交った。はては「深浦と(その年全国優勝した)横浜が試合したら何点入るか?」というコントまで発表されたというから、反響の大きさがわかるだろう。

しかし、この本は問題の試合だけを取り上げたものではない。両校をとりまく背景や、深浦のその後の奮闘ぶりについても大きくページを割き、そして当時の一年生部員が全員無事に卒業したところで物語は終わっている。

残念ながら当時のメンバーは一勝もできなかったが、少しづつ点差の詰まったゲームができるようになった。そして現チームは練習試合では勝利を収めているとのことである。

「あってはならない試合だったのか?」…という疑問を投げかける人もいるらしいが、そうは思いたくない。この試合をきっかけに学校全体が立て直しを図り、結果校則違反行為や停学者の数が大幅に減ったという。また全国から励ましの手紙や差し入れが届いたり、小学校の道徳の副読本に取り上げられたりするなど、各方面への影響も計り知れない。そして私自身も「自分も何か頑張らなければ」という気になった。

ともあれ、選手やチームや学校の未来に幸あらんことを。

青森県立深浦高校ホームページ
http://www.fukaura-h.ed.jp/

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