最悪観客はよ終われ観戦記

 

この文章を書いてくれたT.Nさんは私のチャットでの友人で、ご本人も本文で書かれているとおり野球とはとんと縁の無い方なのですが、私が観戦記や書評などの校正をお願いしているのがきっかけでこの文章を思いついたそうです。本来は私あてにきたメールだったんですが、あまりに面白かったので発表の許可をもらいました。野球とは距離のある人間の視点もまた面白いと思います。ぜひご一読下さい。〜ふさ千明(ダラ球会)

★ ★ ★

私は野球に興味がない。はっきり言って野球より特撮である。更に言えば野球より前田愛である。もうちょっと幼いころの前田愛なら尚良かったのだが長島監督よりはベターである。

というわけで私は近年の傑作との呼び声高い「ガメラ3邪神覚醒」が日テレ系で放送(2000年9月8日)との報に狂喜したわけであるが、ここで大きな壁が立ちはだかった。

日テレ系が中継をその使命と自認しているらしい巨人×ヤクルト戦である。これがガメラを放映するゴールデン洋画劇場の前にどんと居座っているのだ。ビデオ録画するというのに延長になってはたまらない。おかげで何回「陽だまりの樹」を撮り逃したことか! 「ガメラ3」の番宣CMのあとに入った「日テレ式」はまるでイヤガラセみたいに「劇空間!」とほざきやがった。前からあの黄色い丸顔は気に喰わなかったんじゃ。いつかコロス。

こういったよんどころない事情により、「どっちにでもいいから時間内に終われ」というサイテーな視点からちょろっとだけ野球を観戦することになった。

八時半過ぎごろにテレビを点けると、ちょうどチェンジのシーンであった。次は九回裏。時間的にはいいペースなのでは無かろうか?点差はヤクルトが一点リードの三対二。ちっ、びみょーな数字じゃねえか……とそこまでみたところで私は「あんぎゃーっ!」とギャオスの断末魔のごとき叫びをあげた。画面の端に表示された次の回の打者オーダーは松井・清原・江藤。私のような野球音痴でもその名をうかがうことの多い巨人の誇る強打者陣であった。

九回裏。マウンドには石井一久投手。フジテレビのアナウンサーと結婚したらしいちょっとぼんやりした顔のお兄ちゃんである。どこかの番組でヤクルトおばちゃんに混じってオフィスへの訪問販売をやっていたような気もするが気のせいだったかも知れない。今日は試合最初から投げ続けていたようで、解説者はしきりにスタミナを気にしていた。

対する打席にはゴジラ松井。オロナミンCロイヤルポリスのCMで無茶なバッティングやってバットを焦がしてしまう人である。オロナミンCの宣伝というと巨人の選手が一山いくらで出ていた覚えがあるが、スター選手の松井が一人で出てくる分ロイヤルポリスはフツーのオロナミンCより効くのかも知れない。そう思わせるところはさすがにスター選手ということか。

とりあえず松井はこの回最初の打者なんだから走者がいない。ゴジラ松井がたとえホームランを打ったとしても同点にしかならんというかそれこそオレ的に最悪の展開である。私にとってもっとも望ましからざるのは同点になってこの回が終わってしまう事なのである。とっとと三振になってくれるかあるいは逆転の走者になってくれるか、そのどちらかに転んで欲しいところ。

ゴジラなんだからガメラに気を使え、とワケの分からないことを考える私。細かい駆け引きはよく分からんがゴジラヒットを打つ。次は清原。

走者松井が出たことで状況は大きく変わる。ここで清原がガツーンと打ってくれてホームランになれば二人かえって逆転、それならそれでもこっちとしては別にいいんだ。サイテーなのは凡ヒットに終わって単なる走者として溜まっていくことである。

いつまでたってもアウトにならなかったら試合がおわらんではないか! あっ、でも逆転してもアウトが三つにならんとおわらんのだから一緒か。はよ終われや(あとになって考えるとサヨナラで終わり、ということもあるのかも知れないが詳細は知らん)。大体この辺りで8時45分ぐらい。

それにしてもなんでこうチェンジの時といいバッター代わるときといい時間がかかるんだろうか。相撲の立ち合いじゃないんだから。他の視聴者や純粋な観客はちっとも気に掛けてないようなことに一人でイライラしてる私。どあほうである。

解説者が高津を交代に出した方がいいんじゃないかみたいなことを言う。石井氏はずっと投げ続けて疲れてるわけだし、ソレだけ大事な場面なのだろう。「ニュースJAPAN」見る関係上行きがかりでプロ野球ニュースも見るので、高津氏が苦労して150セーブをあげたという話を聞いていた。でもなにかの罰ゲームで東京中を巡って「大都会」を歌ってる姿しか知らない。細身ときょろりとした目がフェリックス・キャットっぽい兄ちゃんである。ところでセーブって何だろ?

“何でもいいから早く終わるんならそうしてくれ、でもリリーフとか言って又、立ち合いに時間かかったらカナワンなあ……”などと思っていたが交代はナシ。

ぱかん、と打球が上がるがセカンドが取って松井アウト、綺麗にファーストに投げて清原アウト(多分そういうことだと思う)。ダブルプレーである。スタンドで沸くヤクルトファンの皆さんと違う理由で喜ぶ私。

次は江藤。実はそれまで全然知らなかったんだけど移籍のときに騒ぎになったのでそれで記憶に残っていた名前。わざわざ騒がれる位なんだからトレードってことはないだろう多分。つまりはこのヒトも十分打ちに来る人ってことね。

状況的には松井の時とちょっと似てる。走者ナシでコイツがホームランこきやがったら(暴言)、一点入って同点延長になるかもしれん。凡ヒットで歩かれるのもやだなあ。ンなことなったらもうギリギリの放送時間上確実に伸びる。伸びた上にすぐ終わったりしたら区切りのいい時間まで解説者のダルい無駄話が続く。気分としてはかなりピンチ。ガメラの運命やいかに。どきどき。

しかしそれは杞憂に終わり、江藤氏はフツーのフライで終わってゲームセット。巨人は連勝を7でストップ。優勝の日が少し延びることになった。石井氏は今季初完投だったそうな。勝ったヒト負けたヒト色々あるようだけど私にとっては何はともあれガメラである。ガメラは時間内に放映されることになってまずはめでたい。その上、かなり間違った方向ながら私の知らない勝負の世界の推移に思いがけずドキドキできて結構楽しい時間であった。

そして、「ガメラ3邪神覚醒」放送開始……

昔の特撮映画を模した最初のスタッフロールに「ヨシ!」

渋谷大崩壊シーンで堂々登場したガメラに「ヨシ!」

前田愛ずぶ濡れボディラインくっきりシーン(笑)に「ヨシ(=^^=)/!」

心の闇を演出する映像描写に「ヨシ!」といちいち唸り声を上げる私。ばかまるだしである。

“たとえバカ丸出しでも野球バカならまだ外聞がいい気がするなあ……”などと思うがでも好きなんだもん。

おっ、「ヨシ!」

戻る

inserted by FC2 system