3月22日オープン戦 ロッテ−阪神
(千葉マリンスタジアム)

(千葉県・ふさ千明)

暴風が吹き荒れたこの日。何の酔狂か私は自転車で千葉マリンスタジアムに向かった。

理由は簡単。我が家から球場まで、電車バスを乗り継いで約1時間かかるのだが、自転車でも同じくらいで行ってしまうので、お金と体力を天秤に掛け、お金の方に針が傾いたというわけである。それともう一つ、昔から「家から自転車で行ける野球場」という存在に憧れていたから、ということもある。

途中、マリーンズボールパークに立ち寄って2000年度のファンブックを購入。この日売り出したばかりということだったが、なぜか結構売れているようである。平日の昼間で、しかも開店してからそう時間がすぎていない。これは今日試合を見に行く人間がかなりの数立ち寄っているということなのか。

自転車をこぎながらそんなことを考えていると、程なく球場が見えてきた。球場手前まで来てみると係員の姿が目に入った。どうしたのかな、と思って近づいたら「球場の駐車場は現在満車でございます」という声が。我が耳を疑った。中に入ってみて謎は解けた。要は車で来た人が多かったというだけのことで、別に球場が満員というわけではなかったのだが、平日昼間のオープン戦にしては予想外の盛り上がり。

この日、ファンクラブ割引は内野自由席のみということで、選択の余地無くきっぷを購入。入ってみれば、席割りが公式戦時と違い2階席が閉鎖され、この日内野自由とは普段「内野指定A」とされている辺りからバックネット裏一帯のシーズンシートを除いた全1階席のことだった。

「おお!」と思わず声が出たのは、この席が昨年最後のロッテ戦を見、園川の引退セレモニーに涙した場所だったからである。見回せば、そこそこの埋まり具合。私はあの時と同じあたりに陣取る。前には家族連れ、後ろにはいかにも「見巧者」と思われる老人2人。

「内野指定」とされているバックネット裏一帯にはこれまた不思議なことに人が結構いる。後で知ったのだが、どうやら招待客のようだ。

風速計は12〜17mの辺りで動いているのだが、客席ではさほどの風はなく、春の陽射しのおかげでかえって心地よい。しかし、買い物をするためいったん通路に出るとその数値が身に沁みる。うかつに汁物など買えないほどの風量である。

この時昼食として買い込んだのは『ジョニー黒木弁当2000』である。昨年のステーキ丼と違い、栄養バランスも考慮された内容になっている。さつま揚げ、ニンジンとインゲンのソテー、牛肉とタケノコの炒め物、野沢菜、明太子などがあり、これらのおかずとごはんの間に薄く焼いた卵焼きがしいてある。昨年同様、ひもを引けば発熱が起こって温まる構造になっている。

記録を付けながらのあわただしい食事となったのだが、大変美味しくいただくことができた。今年はさらに石井浩雄弁当が加わると言うことで、千葉マリンに来る楽しみがまた一つ増えた。

両チームの先発は阪神・福原、ロッテ・武藤。互いにローテンション入りの期待がかかる存在だけに、それなりの投球を見せてくれそうだな〜、などとぼんやり考えていた。

展開は期待以上のものになった。福原は毎回ランナーを出しつつも点を与えぬねばり強さ、武藤はストレートと変化球を織り交ぜて三振の山を築く。特に武藤は5回に三者三振を奪うなどほぼベストピッチと言っていい内容だった。

緊張感のある投げ合いが続く。ロッテが5回にエラー絡みで一点を奪えば、阪神も8回大豊のスリーベースで同点に追いつく。

しかし、8回裏。出てきた藤川が先頭の石井に四球を与えると、球が真ん中に集まりだして続くボーリック・初芝・立川とつるべ打ちを食らった。代打サブローにピッチャー強襲の当たりを受けたところで交代。

藤川が交代する際ライトスタンドから「ピッチャー新庄」コールが起きた。思わず笑ってしまったが、それに新庄が手を振って応えたことにさらに笑った。続いて「ピッチャータラスコ」コール。タラスコも手を振って応えていた。「ノンキだなぁ」と、思わず呟く。

3/22といえば「オープン戦だから」と言っていていい時期ではない気もしたが、洒落っ気ということで微笑ましく眺めていた。続く山崎も火消しの効果無く、連打が続く。

そしてついには打者一巡し、先頭の石井の代走で出た本西の打席となった。どうしても守備の人というイメージがあったのでさしたる期待もしていなかったのだが、見事な流し打ちで一・二塁間を抜いた。場内から期せずして拍手が湧く。

一塁ベース上で息を弾ませる本西の背中に、意地と誇り、そして現役への執念を見た思いだった。彼の背番号「37」はロッテ入団時の彼の年齢である。「37歳のルーキー」という「初心」を背中に刻んだと考えるのは穿ちすぎかも知れないが、そう感じさせるだけの気迫が彼にはあったのだ。

一挙8点の猛攻。この後、ロッテのマウンドに現れたのは、守護神ウォーレンだった。

「お兄ちゃん、ロッテ勝つかな?」
「あたりまえだ。ウォーレンから1回で8点取れるチームなんか地球上にある訳無いんだ」

前列の兄妹が微笑ましい会話をしていた。

結局ウォーレンが無安打に抑えてロッテの勝利となった。この日、例年にない控え層の厚さを目の当たりにした私は、今季のロッテに期待を抱くようになった。

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