5月18日 ロッテ−ダイエー
(千葉マリンスタジアム)

(千葉県・ふさ千明)

 この日の昼、ダラ球会の面々で元日ハム矢作公一選手のお店「ピンチヒッター」へと出向いた。そして、その帰途にて。

「たけがわさん、ロッテに変な呪いとかかけた覚えあります?」

もちろん冗談だが、ホークス&ファイターズファンのたけがわさんにそう言いたくなるくらい、マリーンズは両チームに勝っていない。この日までで、今シーズンホークスには0勝6敗、ファイターズには0勝5敗。2チームで借金11もこさえてしまっている。

特にホークスには99年9月1日以来勝っていない。深刻な状況。「ようし、なら疫病神のあたしが試合見に行けばダイエーが負けるだろう!」とおっしゃるたけがわさん。かねこくんも加わり、かくして急遽千葉マリンスタジアムでゲリラ観戦会と相成った。

先発はM黒木H松本。この「先発黒木」と分かっていたのも、来る気になった理由の一つ。ホークスのスタメンはいかにも「攻撃重視」な面々で(後でオーダー見直したら実際はレフトのニエベスぐらいであったが、それでもそういうイメージを持った)、「強気だなぁ」と声が漏れた。

一方マリーンズはといえば‥。スタメンに、アニキこと石井浩郎がいない。かわりに6番DHとして大村巌が座っていた。イワオファンとしては、それはそれでよし!なのだが、一種複雑。

この日、石井浩郎弁当もジョニー黒木弁当2000も買えたのだが、そちらはたけがわさんと金子くんに任せ、私はホットドッグコンボにした。最近お気に入りなのである。席に戻ると、試合開始直前。黄昏時の、赤みが残る空を見ながらのプレイボールになった。

1回表、とんとんとツーアウト。三番の吉永、5球目に自打球を足に当て、苦しむ。「ニセ吉永」ともっぱら評判(?)の私としては他人事と思えず手に汗を握った。治療にえらく時間がかかったので交代かと思われたが、出てきた。結局アウトだったが。

チェンジになってふと見ると、マーくんが内野指定席(シーズンシートの辺り)を回ってファンに写真を撮られている。なかなかの営業っぷりだ。

その裏、サブローがエラーで出塁すると、内野ゴロ2つで3塁まで進むものの、結局点にならず。2回表、松中セカンドライナーで倒れるも、続くニエベスがライト前。しかしあとの小久保・秋山が連続三振でスリーアウト。ランナーを背負いつつも、後続を断っていると判断すべきか、それとも捕まりつつあるのか。判断に苦しむ。

その裏、福浦・大村と凡退し、このまま終わるかと思ったが、初芝フォアボールで出て、続く橋本がライト線を破るツーベースを放つ。前走者が初芝でなければ三塁打だったかも知れないほどのいい当たりだ。

そして初球ストライクを取りに来た球を小坂がセンターに返して先制の1点を挙げる。打順が一番に返ってサブロー。ここで、よもやのスリーランがスタンドに突き刺さった。サブローの、これがプロ入り初ホームラン。

ホームランが初なのは感動的だったのだが、その後3安打目を放った後の「プロ入り初の猛打賞です」と言うアナウンスに、それはまずいだろ、と思わず突っ込む。ホームランはタイプの問題だから仕方ないが、去年は108試合も出場しているのだから、「猛打賞が初」というのはちょっといただけない。

3回表。坊西、本間と空振り三振。村松センターフライで三者凡退。2回で4つと、まだ出だしながら三振が多め。その裏。大塚がピッチャーの脇に転がる内野安打で出塁すると、ボーリック倒れたあと福浦がファースト松中の横を抜けるタイムリーツーベースで1点追加。

4回表も鳥越・ニエベスが三振で、奪三振6。吉永の代打大道が放ったヒットも活かされなかった。その裏、ロッテもランナーをだすが点にならない。

5回表は、先頭の小久保がレフト線を破るツーベース。秋山のライトフライで小久保が3塁へ。下位打線でもあるし、この時既に5点差であることからも「王采配らしくここはスクイズか?」と思ったが強攻策。坊西・本間と連続三振でチャンスを活かせずスリーアウト。

6回表、ついにホークスの反撃が始まる。先頭の村松レフト前ヒット。鳥越倒れ、大道がフォアボールで出て1死1,2塁と再度チャンス。しかも今度は上位打線。黒木、捕まるか。回も6回で、そろそろ疲れが見えてきたか。捕まるのか‥。そう思ったが、ここで松中・ニエベスと連続三振!見事後続を断って0点に抑えた。

7回表。「このままだと完封ペースですかね?」言ったその時、小久保のバットから快音一撃。ダイエーファンの待つレフトスタンドにぐさりと突き刺さるソロホームランは、意地の一発。続く秋山もライト前ヒットで、坊西のところで代打柴原。本間には代打井口。この2人を連続三振に斬って取り、黒木再び後続を断った。

その裏。黒木の力投に、眠っていたロッテ打線が目覚めた。先頭のサブローがフォアボールで出ると、酒井がバントシフトの横を抜くクリーンヒット。1,2塁。

「ロッテ・ファイティング、ロッテ・ファイティング、ロッテ・ファイティング。ウォオオオオオ〜〜〜。ロッテ‥(繰り返し)」波濤の如く声が寄せては返す。この応援、バッターが凡退してもひたすら続いていく。昨年のタオル回しのように。

大塚続いてレフト前にタイムリー。1点追加。ボーリック・福浦と倒れ、2死となったところで、次は大村巌。しかしネクストバッターズサークルでバットを振っていたのは55番ではなかった。3を背負った侍が、己を高めていた。

アナウンスで代打石井が告げられる。「うぉぉぉぉおー」スタジアムに、熱気が走った。ロッテファンの多くが待っていた場面がやってきたのだ。

石井浩郎の場面だけは、応援が本来の石井浩郎用のものに切り替わる。特別の存在であることをうかがわせる。もしくは、石井の打席は全てがチャンスであるということなのかも知れない。

石井の気迫が、見えた。バット一閃!斬るように振り下ろされたバットがライト線にボールを弾き返した。ランナーを掃除して2塁で息を弾ませる石井に代わって、代走で堀が入った。ここでもうひと沸きした。見事な代打成功に酔う一塁側。

しかし残念なこともあった。結局名物「イワイワオ〜」応援が不発に終わってしまったことだ。ここまでの3打席全て早打ちで、初球・2球目・初球。発動する間もなかった。続く本西が倒れて、ようやくチェンジ。長いラッキーセブンが終わった。

これに気をよくした黒木が8回表を3者凡退に取る。そして、ほぼ勝負も決まったと思われる8回裏。フォアボールで出た小坂が、盗塁を狙って盛んに塁上で動く。投げる斉藤和も必死に牽制。そのたびブーイング。

何回かの牽制をかいくぐり次の塁を狙う小坂。あまりに意識しすぎたためか、一瞬反応が遅れる。「アウト!」あえなく牽制死。スタンドのそこかしこから嘆声が漏れる。試合の大勢には影響ないとは言え、どこか悲しいアウトであった。

9回表、先頭のニエベスをフォアボールで出したものの、続く3人を打ち取りゲームセット。かくして、ロッテの99年9月1日以来の対ダイエー連敗は10でようやく止まった。ヒーローインタビューは、黒木とサブロー。

黒木が「本拠地で勝ちたかった!今までの負けを取り返します!」と宣言すれば、サブローは「入団当初から、ジョニーが投げてボクが打って勝とうって、約束したんでそれがかなって良かったです」といい、また「奇跡が起きるような気がします。いや、奇跡を起こします!」と宣言した。

意気高らかなふたりに、拍手を惜しまず注ぐスタンド。いい光景だなぁ、とファンであることを越えて思った。

このあと、ふたりはライトスタンドの前まで歩き、歓喜渦巻くファンに勝利の報告をした。そして、感極まったのか、声援渦巻く中、ふたりはがっしと抱き合った。いい光景だと、再度思った。

以上のように、マリーンズ最良の日とも言うべき文句のない試合内容であった。ホークスファンのたけがわさんには大変申し訳ないと思いつつ…。

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