5月18日 ウエスタンリーグ 近鉄−サーパス
(藤井寺球場)

(大阪府・こぼりあきら)

5月18日(木)藤井寺で行われたウエスタンリーグ近鉄対サーパス神戸7回戦。前の晩から降り出した雨もすっかりあがってくれて、無事試合開始へ。

両チームのスタメン、まず先攻の神戸は 、<左>松本、<中>嘉勢、<一>五島、<指>マルセド、<三>佐竹、<右>葛城、<遊>福留、<二>南渕、<捕>久保

続いて近鉄は、<中>平下、<遊>前田、<三>山下、<一>エイバッド、<指>大久保、<捕>高嶋、<左>中浜、<二>好太、<右>森谷。

先発ピッチャーは神戸が太田で近鉄が酒井。

1回の表、マウンドには今季に復活をかける酒井。ストレートは130キロ台だったが、90キロ台の変化球(カーブ?)を有効に使ってタイミングを外し、1番から4番までの4人の左打者を、嘉勢の右前打1本に抑えた。尚、他の3人はいずれもレフトへのフライだった。

その裏近鉄は1番平下、2番前田の連続安打で太田の立ち上がりを攻め無死一、二塁。このチャンスに3、4番が相次いで倒れ二死となってしまうが、5番大久保が追い込まれながらもセンター前に運び、何とか先制点をあげた。

試合は1対0のまま3回を終了。両先発とも、2回、3回を無失点で切り抜けた。特に酒井の方は少なくとも素人目には、手もつけられないくらい完璧に写った。相変わらず左への打球も多かった。

一方の太田にしても、どうにか凌いでいるといった感じではあるが、失点は許さなかった。嬉しかったのは、ここまで無四球できてたこと。酒井もしかりである。ついでにいうと、両チームともノーエラー。あゝ、何て気分がいいのだろう。あらためて実感した。

さて、4回の神戸の攻撃にうつるが、ここで先頭の嘉勢がフォアボールで出塁。意外にも、最初に四球を与えたのは酒井のほうだった。と、これで調子が狂ったのか、続く五島がすかさずライトスタンドへ逆転の2ランホームラン。あっという間のできごとだった。その後も、得点にこそ結びつかなかったが、マルセド、佐竹に第一ストライクを狙いすましたかのように連続安打されるなど、3回までとはまるで別人のようだった。

ところが今度はその裏、2対1とリードをもらった太田が近鉄打線の反撃に遭った。まず先頭の5番大久保が右前打で出ると、6番高嶋はバットを折りながらもライト前へ。この間に大久保は三進。無死一、三塁。

ここで何と、サインが出てたのかどうか、ななな何と一走あの高嶋が二盗を試みた! しかも成功!! 思わずわが目を疑った(失敬…でも同郷栃木出身…)。これでチャンスが広がり無死二、三塁とすると、7番中浜の二ゴロの間にあっさり同点に追い着き、更に続く8番好太はライトへ犠牲フライ。ここでも三走高嶋の激走が光り、3対2。近鉄は再逆転に成功した。

試合は5回に入るが、この回も酒井はピリッとしなかった。まずは先頭の8番南渕が粘って7球目を左中間2塁打。で、続くラストバッターの久保が、カウント1―1からの3球目をバントするが、ファウルに。久保は追い込まれた為、4球目はヒッティングに出るが、これが完全に裏目でサードゴロ。飛び出していた二走南渕は敢え無くタッチアウト。

そしてトップに戻り松本がこの日自身3本目となるレフトフライを打ち上げ二死一塁。酒井は立ち直ったかにみえた。しかし続く嘉勢にライト線2塁打を打たれ二、三塁。今度は一転、逆転のピンチを招いてしまった。

結局のところは次の3番五島をピッチャーフライにうちとり、何とか勝利投手の権利を手にするのであるが、それにしても前の打席で逆転弾を食らっている五島だけに、余計意識したのだろうか、最後の投飛はあわやサード山下と交錯するところであった。投飛という記録はあまり見慣れないものである。他の野手に任せるのが一般的だと思うが、それだけ精神的に余裕がなかったのかも知れない。ベンチからも「声をかけ合っていこう!」とゲキがとんでいた。

しかし近鉄ばかりは責められない。神戸にしても、この回は酒井をひきずりおろす絶好のチャンスだったのに、KOどころか、点すら入れられなかった。2塁打を2本も放ちながら。はっきりいって「攻撃におけるエラー」が多かった。これが酒井を助けてしまった。

得点は変わらず3対2のまま5回裏。近鉄の攻撃は打順よくトップの平下から。この平下のとき、文字通りグラウンド外での出来事が気になった。カットした打球がネット裏に飛んでいったのだが、それがちょうど観客がさしていた日がさに直撃、ホネがへし折れてしまった。余談であるが、この時一緒にスコアをつけていた「立石家の食卓さん」から、9年前の高校野球で大阪桐蔭の選手が甲子園の外野に置いてあったゴミ箱に飛び込むホームランの話を聞いた。ん〜、一度見てみたいものである。この「ゴミ箱ホームラン」。

さて、5回裏の近鉄の攻撃に話を戻す。まず平下が中前打で出ると、2番前田はセカンド正面のゴロ。「ゲッツーだ!」と思った瞬間、打球が、走ってきた一走平下と重なり、セカンド南渕がこれを後逸。センター前へ抜けていく間に平下は一気に三塁へ。前田はこのラッキーなヒットで猛打賞となった。

チャンスは広がり迎えるバッターは3番の山下。オープン戦での劇的弾に象徴されるように、無類の勝負運を生まれもつ山下。ここまでノーヒットの山下が、同いどしの平下、前田の連続安打で奮起しない訳がない。これまた同いどしの太田の投じた初球をジャストミート! 打球の勢いはとどまるところを知らず、藤井寺球場のバックスクリーン左へ飛び込んだ。

山下は昨秋のドラフトでこそ中位指名(4位)だったが、骨折で評価を落とさなければ1、2位での逆指名権も獲得できた程の実力の持ち主。3年前には2回生ながらレギュラーサードで近畿大のアマチュア5冠に貢献した。 頂点を知る山下にとってこの3ランは意地の一打だった。

6対2。太田はこの回、結局一死も奪えずにマウンドを2番手の杉本潔に譲った。変わったばかりのキヨは最初の打者エイバッドを内野安打で出すが、続く大久保を今度こそ4―6―3の併殺打にうちとった。目を引いたのは、さっきの後逸のお返しとばかりのセカンド南渕の鮮やかなグラブトス。これがさっき出ていれば…と悔やまれる。これで走者がいなくなった訳だが、近鉄の攻撃はまだ終わらなかった。

続く6番高嶋が右中間2塁打で出塁すると、7番中浜が四球で二死一、二塁。そして8番好太がカウント0―2となった次の3球目。二走高嶋、一走中浜が同時にスタートを切る! バッテリーは、驚くのがやっとという表情。またしても盗塁成功。好太は4球目を遊ゴロで追加点はならなかったが、あわや打者一巡。この回3点で終わったのが不思議でならない。ともあれ、高嶋のスチールを2度も見られるなんて、それだけで見たかいがあるなぁと思った。 

追加点も影響してか、6回表には酒井が立ち直りの兆しを見せた。この回の神戸は4番マルセドからという打順だったが、途中から6番ライトにはいっている雅興に中前打を許した以外は、マルセド、佐竹、福留と、主軸をいずれもセカンドゴロで片付けた。

その裏、マウンドには前の回奇跡的に無失点で切り抜けたキヨがこの回も上がった。がしかし、さっきと殆ど変化は見られず、3本の長、短打を集中されるなど2失点。火のついた猛牛打線を止めることはできなかった。8対2。

7回表、神戸は酒井を攻め、一死一、三塁から嘉勢の犠飛で1点返して8対3とし、なおも二死一塁となったところで酒井はお役ごめん。マウンドには2番手のキングオブワンポイント柴田が上がった。対する打者は3番五島。結果はたった1球で勝負が決まった。平凡なセンターフライでスリーアウトチェンジ。これぞ柴田の真骨頂。これが柴田という男である。

その裏近鉄は、神戸3番手岸川も攻めた。先頭代打の藤井が四球で出ると、続く中浜の打球がマウンドに当りバウンドが変わってしまい併殺取れず。それどころか、焦った南渕が一塁悪送球し、無死1、3塁とすると、すかさず好太のスクイズで追加点を奪って9対3。無安打で1点取ってしまった。

さらに8回裏にも、防御率トップの戎から1点を奪い、とうとう2桁10点目。安打の数も16に上っていた。ちなみにこの回にも前田が盗塁成功。捕手は7回から東だったが、バッテリーが代わろうがなにしようがお構いなしといった感じの近鉄打撃陣、というよりは「走塁陣」。じつにたのもしく見えた。それに引き換え、無抵抗に走られまくりの神戸バッテリーには疑問符がついた。

最後は高塚、ツイドリーのリレーで神戸の反撃をかわし、10対3で逃げ切った。近鉄先発酒井は、ファームとはいえ、この5月18日、復活の白星をあげた。

他に目についたのは平下、前田、山下の同い年3人衆。3人あわせてなんと8安打6得点の大暴れ。中村紀が抜けても、山下あたりが穴を埋めてくれるのではないだろうか。一方神戸では、一時は逆転となる2ランを含め2安打した五島。野手転向してようやく開花の予感をさせた。

…ところで、ぼくのイチオシ、神戸の萩原は7回に代打で登場したが、遊ゴロ。あと半歩及ばなかった。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9
サーパス
近鉄 X 10

戻る

inserted by FC2 system