8月26日 

ヤクルト−ロッテ〜イースタンリーグ
ヤクルト−中日
(神宮球場)

(千葉県・ふさ千明)

観戦会レポート&観戦記(神宮に11時間)

8月26日と言えば暦の上ではとうに残暑なのだが、まだまだ残り火などとは言えない程の猛暑。汗にするために水分を摂取しているかのような錯覚にすらとらわれて しまう。それでも、神宮の森には幾分の優しさがあった。

集合時間15分前に神宮バッティングドームの前を通りがかった私は、逆算を始めた。「間に合うよな?」確かめるようにそう呟くと、おもむろに中へと進み、20球打つことにする。ここのバーチャルピッチャーに以前いなかった現役の上原・桑田 ・入来・藪・松坂らが登場している。松坂は混雑しているので、上原で20球。満足して集合場所へ向かうと、皆さんもう既に集まっておられる。「すみません」と平身低頭。

この日の参加者はむさしさん、おかピーさん、金子さん、高木さん、コーチンさん、私、たけがわさん、田村さんの8名(順不同)。 全員揃ったところで中へ入ってバックネット裏20列目くらいに陣取る。

既に電光掲示板に発表されているオーダーを見ると、マリーンズ6番ファーストの鮎川が個人的にはおいしい。 三塁側ベンチ直上の客席には、数人のマリーンズ応援団がいる。楽器を使わず口と手拍子だけで千葉マリンと変わらぬ応援を繰り広げる。応援メロディまで口で奏でる芸達者ぶり。

さらにはバッター立川登場の際、千葉マリンと同様の登場テーマ「SAMBA  DE JANEIRO」を口メロディで奏でたあとに「立川ー」と叫ぶなどやたらハイテンションであり、「最後まで保つのだろうか?」という疑問すら湧いた。いや、 まぁ、私が心配することもないのかも知れないけれども。

1回表、スワローズの先発はルーキーのリーゴ。19歳でブラジル選抜のエースを務め、メジャーから獲得の声もあがったということだが、さてお手並み拝見といこう。しかしそのリーゴ、先頭の渡辺にいきなりフォアボール。2番於保が送って、1死2塁。続く3番澤井も歩かせてしまった上、4番バリーにはデッドボール。1死満塁 。ヒットを打たれる前に早くもピンチを招いてしまう。

「アイケルバーガーみたいですなぁ」場所柄か、彗星のように現れ彗星のように消えていったノーコンピッチャーの名を思わず口にした。 先制する絶好の好機も、5番立川打ち上げてセカンドフライ。6番鮎川もファー ストゴロでチェンジ。ランナーは出したがヒットは打たれず、無失点のリーゴ。 「しかし、神宮では2軍戦でもオーロラビジョンで場面を再現するんですなぁ」 「珍しいですよね」

1回裏。マリーンズ武藤。本来は上で投げていなければならないピッチャーなのだが‥。その武藤の前にスワローズ三者凡退。この辺はさすがというべきか。比較対象のリーゴが前述のような状態なので余計よく見えてしまう。

2回表。フォアボールのランナーが出るも、ゲッツーのため結局3人で終わる。 2回裏。先頭衣川がレフト前に綺麗に弾いたものの、後続ことごとく倒れランナー一塁釘付けでチェンジ。 3回表。先頭の渡辺、2打席連続フォアボール。続く於保がこれまた2打席連続で送り、チャンス再び。3番澤井空振り三振、バリーはサードゴロでチェンジ。

リーゴ、3イニングで四死球5だが、無失点どころか無安打である。どういうピッチャーなのか、よく分からない。マリーンズの拙攻という見方もできるが、さて、 もうちょっと見てみないことには。

3回裏。8番野口が倒れたあと、9番リーゴに早くも「代打ロブロ」が告げられる。「まだノーヒットノーラン中なのになぁ」あっさり見切りをつけるヤクルト小川 二軍監督。テスト登板なのかも知れないが、このままのペースで“毎回の12四死球でノーヒットノーラン”という珍記録を達成しないものかと密かに期待していた身と しては残念である。

ロブロ歩いて、1死1塁。打順は一番に戻って代田。打球はライ ト前へ。スワローズ、チャンス到来。ここで2番城石、3番ユウイチと連続空振り三振。ここは武藤の貫禄勝ちか。

4回表。スワローズのマウンドには丹野が上がる。立川がヒットで出るも後が続 かずチェンジ。ランナーは出ても返せないというもどかしい展開が続く。

4回裏。再び先頭バッターとなった衣川、レフトの頭上を越すツーベースを放つ 。さすが4番。さすが昨年のウエスタン打点王。と、名鑑を見ながら呟く。最初名鑑を見ても載っていなかったので慌てたが、シーズン中にトレードでやってきたことを思いだし近鉄のページに彼の顔を見いだした。高卒8年目、勝負の年。 続く本郷がセンター前に弾いてスワローズ一点先制。後続ことごとく倒れてチェンジだが、貴重な一点が入った。

この回終わってグラウンドの整備が始まったので、この隙を突いて食べ物を探しにでる。やはり皆さんの期待を裏切るわけにはいかない‥‥とまぁ冗談半分、昼なお暗い通路を右往左往。さすが2軍戦だけあってほとんどの売店が開いていない。唯一開いていた売店ではかき氷の機械が故障中だし、飲み物の調達がせいぜいか‥‥。

そう思ったところ、視界にカップラーメンが。「すいません、これ、売り物ですか?」 「ええ」あんまりぽつんと置いてあるので、思わず間抜けな質問をしてしまう。お湯を入れてもらって、客席へ持って帰る。

「今はこれしかないそうです」席で箸を手にすると、むさしさんがカメラを構えた。もはやお約束となってしまった私と食べ物のツーショット。炎天下に何やってるんだと思いつつも、食べ出すとつるつる入ってしまう自分がちょっと悲しい。結局おいしく食べ終わって、ゲームへ再度集中。

試合は5回表。ピッチャーの丹野凡退のあと打順トップに返って代田がセンター 前へ。しかし武藤後続を抑えて無失点。武藤、5イニング1失点はまずまずのピッチングか。

5回裏、マリーンズは丹野の前に三者凡退。投手戦の様相。どうせならそれを1 軍でやって欲しいものだが。 この時「機械直ったみたい」と、高木さんがかき氷を調達して下さったので、再度撮影。

あっついラーメンのあとだけに美味しさもひとしお。「なんかシロップの機械が調子悪くて出っ放しで、味が濃いから気をつけて」最初は気がつかなかったが、 終わりのほうになればなるほどシロップが濃ゆい。おかげで残り三分の一は“戦い” だったりしたが、それでも炎天下でむさぼるかき氷のおいしいことおいしいこと‥。 買ってきて下さった高木さんには大感謝。

6回表。3番4番があっさり倒れて「だめか」と匙を投げそうになったが、5番 立川がレフト前へ。続く鮎川・天野が歩いて満塁。ここで、代打が告げられる。『松本に代わりまして、バッター、秦』さすが神宮。スタンド中から大歓声が渦を起こし 、轟々と響いた。この時だけは観客数を越えた盛り上がりだった。これが秦真司なのだ、チャンスの似合う男だと思った。

バット一閃、打球はライトへ。逆転2点タイムリーとなり、2-1。往年の姿が瞼に浮かぶ、そんな打球だった。いや、こういう言い方は失礼かも知れない。秦真司は 、まだ終わっていないのだから。

次はピッチャー武藤だから代打だろうと思ったら、武藤がそのまま打席へ。「これでチェンジか」と誰しもが思った。予想を裏切るとはこのこと。武藤のバットは空を切らず、打球はショートへ。これが内野安打となり、一点追加。3-1。渡辺三振で ようやくチェンジ。

6回裏。先頭は4番の衣川。「打ちそうな感じですねえ」言った途端に、打球はぐんぐんレフトめがけて飛んでいく。ソロアーチ。4番の一撃で取られたら取り返す理想的展開。3-2。しかし後が続けず、1点止まり。武藤、奮闘。

6回裏が終了すると、マリーンズ応援団がアカペラで『ウィラブマリーンズ』を歌い出した。終わったと思ったら『俺たちの誇り千葉ロッテマリーンズ』へと続く。 そして気がつけば、それに合わせて手拍子している観客が、結構多い。「みんなロッ テファンか?」単にその場のノリに乗っているだけという人もいるようだが、ちょっ と不思議な空間になった。

7回表。スワローズはピッチャーを加藤にスイッチ。 先頭の於保がフォアボールで出塁すると、澤井が送る。1死2塁でバリー。4番同士の比較では、この試合ここまでヒット無しのバリーに対し3打数3安打1ホーマ ーの衣川に軍配が上がる。負けるなバリー。

願いが届いたか、打球はセンター前へ。一点追加で4-2。続く立川三振も、この時バリーが2盗を決める。2死2塁。鮎川に代打ダイが送られレフト前ヒット。バリーつっこめず2死1,3塁。天野ショートゴロでチェンジ。結局1点止まりでイマイチ攻めきれていない感じである。

7回裏。代打したダイに代わって池野が入りキャッチャー、キャッチャーの天野 がファーストに回る。 スワローズは8番からということもあってか、三者凡退。 8回表。同じく8番からのマリーンズも三者凡退。 8回裏。先頭の城石がレフト前へ。続くユウイチも同じくレフト前へ。どことなく暗雲を感じる。 ここでマリーンズのピッチャー河野に代わる。ある種贅沢な一軍リレー。

バッターはここまで3安打の衣川。もし三塁打が出ればイースタンリーグ何人目かのサイクルヒット達成となる。せっかくなのでぜひ達成して欲しいと期待を寄せた 。 しかしフォアボールでもないのに衣川は一塁に歩き出した。「何事?」注視していると審判から説明があった。「インターフェアーです」インターフェアー、すなわち打撃妨害。これも生で見るのは初めてなので嬉しいと言えば嬉しいのだが、ちょっ と興ざめ。あっと言う間に無死満塁。

ここでマウンドに野手全員が集まり、ベンチからは園川コーチがやってきた。園川・河野のツーショットというのはかなり貴重と密かに喜ぶ私とおかピーさん。協議の末続投となる。

続く本郷はセカンドゴロ。セカンドフォースアウトの間にサードランナー城石生還して1点追加。4-3。なお1死1,3塁の好機。逆転を期して本郷に代走大山が起用される。 ここで河野お役御免。代わりにはその昔西武キラーで名を馳せた榎が登場。名前だけなら豪華リレーなのだが‥‥。茫漠とした不安が涌いた。

嫌な予感というのは当たるもので、榎はツギオにデッドボールを与え再度満塁に してしまう。橿渕センター前2点タイムリーで4-5。ついに逆転。しかしこの時1塁 ランナーツギオがホームでタッチアウトとなり2死1塁。 野口に対してもフォアボールで2死1,2塁。9番ピッチャー丹波のところで代打宇佐美。宇佐美センターフライでようやくこの回が終わるも、火消しの効果なく逆転を許してしまうマリーンズ。

9回表、スワローズのピッチャーは前田に代わる。以前オリックスで登録名“ヒロ”だった投手だ。一点差を追いかけてのマリーンズ。打順は2番からと悪くない。 その2番於保ショートゴロ。3番澤井セカンドフライ。4番バリーセカンドフライでゲームセット。

中盤まで有利に試合を進めながら詰めを誤ったマリーンズ敗退。逆にいえば、途中までリードされながらも辛抱のリレーでつないだスワローズが少ないチャンスをものにして逆転勝利を収めたわけである。イースタンではあっても、なかなか見応えはあった。

第1試合が終わって、球場近くにある喫茶店グリーンクレスにて昼食。ここでも話に花を咲かせる。

先ほどのマリーンズ応援団の話題にもなったのだが「あの人たち 、きっと神戸にも行くんじゃないかな。間に合うし」時刻表を出して神戸のロッテ− オリックス戦への乗り継ぎを確認して「可能だ」などと勝手なことを言ったりする。

食べ終わったあと、入口にコイン式のパソコンが置いてあったので、HPに接続して掲示板に現状を書き込み。

ここで平塚のシーレックス戦に向かわれる高木さんが旅立たれる。「お疲れさまでした〜」この辺が非常にダラ球会らしくていいと思った。野球場から野球場へ。そ ういえばたけがわさんも今日はトリプルヘッダーという噂だったのだが、さすがに噂止まり。神宮−東京ドーム−神宮‥。「可能といえば可能ですね」とか無責任な事を言う私。実際やったらどういう事になるのか‥。立ち止まってふと考えてみたりする 。ぜひ試された方はご一報下さい。

ここでいったん解散として、5時に再集合となった。それまでどうするか。「じゃあちょっと私、バッティングドーム行きますんで」やはりせっかく松坂の映像が加わったのなら打ってみたいと思うのが人情。買い出しに行くひとなどがいる中で、むさしさんと2人いざバッティングドームへ。

打つのはもっぱら私で、加藤、松坂、藪の映像を相手に60球の打ち込み。日頃のぐーたらが祟ったかあまり会心の当たりは 出なかったがそれでもかなり楽しめた。松坂のケージが混んでいたためちょいと時間 を食い、おかげでまたも集合時間ギリギリ近くになってしまう。

第2試合。コーチンさんは東京における中日ファン憩いの店『ごはち亭』主催の “ごはち亭フェスタ”に参加のためレフトスタンドへ。私らは一塁側外野自由席最上段の最も内野よりの辺りに陣取る。俯瞰で試合を見られるのでホームランの軌跡もよく分かる好位置。中日−ヤクルト。

試合開始前に球場内をうろつき、食べ物を探す。 神宮は内野と外野でカレーが違うと言うことなので、内野のカレーしか食べたことがなかった私は外野カレー大盛680円を購入。戻る途中紙コップジュースの自販機で昔懐かしい名前を見かけて一人密かに喜ぶ。 「懐かしいなぁ〜」

カレーは去年甲子園で食べたカレーと同クラスの味。球場カレーとしてはかなり ハイクラス。大盛にしたおかげで量的にも満足できた。

先発はドラゴンズ前田とスワローズ山部と、ベテラン同士。スタメンを見ると6番ライトに偵察メンバーで山本樹が入っている。左腕の前田ということでコールされた名前は『ライト池山』だった。往年のスター選手がこういう使われ方をするのは、 見ていて正直忍びないものだ。しかも本来の守備位置ではないライトでだからその思いは余計に募る。

1回表は2番井端がフォアボールで出ただけであっさり終わる。山部まずまず。 1回裏。1番飯田倒れたあと2番土橋の打球をショート井端が弾いてしまう。3 番稲葉がセンターフライでツーアウトになるも、ペタジーニの打球を今度はファース ト山崎が弾いてしまう。ノーヒットでランナー1,2塁。ガルベスならとっくに切れ るところだが、ここは我慢の前田は古田を打ち取りチェンジ。こちらもなかなかの立ち上がり。

2回表。先頭の立浪が歩く。山崎がファーストのファールフライ、筒井がサードゴロ。ゲッツーにはならずバッターランナーの筒井がファーストに生きた。8番中村が歩いて、打順は9番ピッチャーの前田に。誰しもが攻撃の終了を予測するこの場面で、前田の打球はセカンド後方にふらふらとあがった。走り追いすがる土橋をあざ笑うかのようにその目の前でぽとりと落ち、セカンドランナーホームイン。ドラゴンズ 1点先制。早速『燃えよドラゴンズ』が吹奏される。 なおもチャンスが続いたが、1番李倒れてチェンジ。

2回裏。先頭バッター池山のライト前ヒットは、意地の一打か。しかし後続ことごとく倒れてチェンジ。 3回表。井端が倒れたあと種田・ゴメスと続けてセンター前へ。バッター立浪。 現役でミスタードラゴンズを選ぶとすれば彼だろう。大飛球が目の前を通過する。ラ イトスタンドへスリーラン。大きく弧を描いた、滞空時間の長いアーチ。何というか 、優雅ですらあった。4-0。後続倒れてチェンジも、中押しとしては申し分ない3点 が入った。

3回裏。トップの飯田からという好打順。飯田ショートゴロ。続く土橋粘る。粘りと選球眼が活きてフォアボール。クリーンアップの稲葉・ペタジーニ倒れてチェン ジ。

4回表が終わると、他球場の途中経過がオーロラビジョンに映し出され、巨人が 大量点を奪われ大苦戦中の情報に拍手喝采の三塁側。首位を走る巨人に食い下がる中日には、何よりの朗報だろう。

4回裏。簡単にツーアウトとなったあと岩村がライトポール際へ追撃のソロアー チ。ライトスタンドに傘が花開き、東京音頭の大合唱。傘のライトグリーンが照明を 浴びてなかなかに綺麗。

宮本サードゴロもゴメス悪送球でセーフ。2死1塁で、9番ピッチャー山部のところに代打佐藤真一。あきらめが早いのか仕掛けが早いのか。どっちにしても山部をもうちょっと見たかった。他球団にとって大きな壁だった山部‥‥。 期待の佐藤セカンドフライでチェンジ。

しかし前田もそんなに良いとは思えない。2人の違いはどこなのだろう‥。おかピーさん曰く「ヤクルトはこういう140出ない軟投派に弱いんだ」とのことで、なるほど打球が前に飛んでいかない。たまに飛んでも野手の真っ正面だったり力のないフライだったり。

5回表。ピッチャー山部に代わって高橋一正。いまだに「高橋一」という電光掲示を見ると高橋一三しか浮かばない私は毎度のごとく週べ名鑑号を繰る。『変則アン ダースローで昨年高卒ルーキーながら一軍デビュー』とのことで、絶滅したと思っていたアンダースローが見られる望外の幸運に喜色が浮かぶ。

井端・種田と倒れてあっさりツーアウト。慣れぬアンダースローに手こずっているのか、と思ったその時、ゴメスの打球が天空高く弧を描いた。照明の光を浴びて夜空に浮かび上がった白球はドラファンの待つレフトスタンドへ。瀑布のような拍手と歓声が湧く。ソロアーチで5-1。続く立浪フォアボールで2死1塁。 高橋一、動揺したのかと思ったが、山崎をサードゴロに打ち取りチェンジ。

5回裏。再びトップの飯田から。その飯田ライトフライのあと、続く土橋がレフ ト線へツーベース。稲葉セカンドゴロの間に土橋は3塁へ。 2死3塁で、バッター4番ペタジーニ。タイムリーを待ち望み、ライトスタンドの空気が温度を増す。

ペタジーニの打球は1,2塁間への痛烈なゴロ。ライト前へ、と思った瞬間セカ ンド立浪が好捕。押さえただけかと思いきや、無理な体勢のままファーストへ。間一髪アウト。立浪攻守に大活躍。

6回表。先頭バッター筒井に代打井上が送られる。井上サードゴロでワンアウト 。続く中村レフト前ヒット。 前田そのまま打席に入りセカンドゴロ。李もショートゴロでチェンジ。

6回裏。先頭の古田倒れて、バッター池山。大砲がついに火を噴き、レフトスタンドへ弾丸が飛び込む。5-2。ライトスタンドに再度傘が開き、東京音頭の大合唱。私も思わずたけがわさんに傘を借りて歌って踊る。ファンチーム以外のカードの場合はホームに肩入れしてしまう。

続く岩村ライト前に放って、いよいよ反抗の狼煙が上がった。ドラゴンズも先発前田をあきらめ、中山を送る。宮本の打席で岩村好スタート。セカンドを陥れる。宮本空振り三振のあと、打順が9番ピッチャー高橋一正に回ると、『代打副島』がコールされる。

期待に応えてライト井上の頭上を越えるツーベース。1点追加。5-3。打順かえってトップの飯田。センター前タイムリーでさらに1点追加。ついに1点差。5-4。

バッター土橋の場面で、殊勲の飯田が盗塁失敗。チェンジ。「スタートが悪かったですね」岩村のスタートが良かっただけに余計そう見えた。

7回表。ドラゴンズのラッキーセブンに先駆けて『燃えよドラゴンズ』の吹奏と風船とばしが行われる。今まで色々な球場でこれを見てきたが、神宮でのそれはとても幻想的だった。照明灯の光線を浴びて夜空に浮かび上がる風船は、不思議なきらめきを放っていた。照明灯の下に壁が無く夜空が素通しであるがゆえのものらしい。思わぬ絶景の出現に、しばし見とれることにした。

この回からスワローズのピッチャーは藤井に。またも名鑑を繰る。『大卒ルーキーで即戦力』という記述よりも『趣味熱帯魚の飼育鑑賞』という記述に眼が行く私。

先頭の井端ピッチャーライナー。そして次打者種田の打球は、高々と夜空へ。そしてレフトスタンドへ。ソロホームランですかさず突き放し6-4。声援を送るバッターのホームランが飛び込んでくる快感は何にも変えがたいが、そういう意味ではこの日のドラゴンズファンは非常に恵まれていたと言えるのではないだろうか。

連発を望まれたゴメス、惜しいレフトフライでツーアウト。立浪ライト線へ打球はツーベースとなって2死2塁。続くバッター山崎という場面で、若松監督敬遠の指示。ここまでの山崎3打数0安打1三振と良いところがない。塁を埋めるという考えは分かるものの、2死なのだから勝負で良いんじゃないかなぁ、と思っていたら続く井上が左中間を深く深く破って2点タイムリー。8-4。

7回裏。守備固めに入るドラゴンズ、山崎のところにセンター大西が入り、センターの李がレフト、レフトの種田がサード、サードのゴメスがファーストに回る。こういうところはどことなくマリーンズを思わせる。

土橋・稲葉とばたばた倒れ、あっさりツーアウト。ペタジーニ2年連続となる3 0号をセンターバックスクリーンへ。試合とホームランダービーどちらにも追撃弾となる一撃で、8-5。古田ライトフライでチェンジ。

8回表。スワローズのピッチャーはたけがわさん待望の松田。この回先頭の正津に代打高橋。ここで放ったレフト前ヒットがプロ入り初安打。トップにかえって李。 ショートゴロだが、俊足を活かしてゲッツー崩し。さらにセカンドをしきりにうかがう李。牽制が苦手なようで、しきりにファーストを気にし、投げにくそうにしている 松田。そこへ古田が矢のような牽制。セーフになったがこれで李は肝を冷やしたかリードも小さくなり足どりも心なしか重たく見えた。これで救われたか松田、後続を断って見事この回をゼロに抑える。たけがわさんの声援もひときわだ。

8回裏。先頭の池山空振り三振。岩村レフト前ヒット。宮本レフト前へふらふら と打ち上げる。岩村セカンド手前でじりじりと見守り、ボールが地面に落ちた瞬間猛走塁。一気に三塁を陥れ、打った宮本もセカンド到達。ぼやぼやしてたら1,2塁だ ったが、この好判断で1死2,3塁。松田に代打デカさんこと高橋智。

「これで逆転したら勝利投手松田ですね」「おお。そうだそうだ。デカさん頑張れ〜」間接的な理由で熱心な応援になるたけがわさん。

初球、2球目とストライク。1球ボールのあとファール、またファール。カット 、カットで粘る高橋智。根負けしたか正津カウントを悪くし、ツースリー。ここからまたファールで粘り、結局フォアボール。1死満塁。バッターは飯田。「ここでホー ムランなら逆転」という言葉が非現実的に聞こえるバッターだが、タイムリーなら充分あり得る。俊足なのだからセーフティスクイズなんてのも面白いのではないか‥。

高まる期待の中、飯田強振して空振り三振。なおも続くチャンスに土橋粘って8球目 、放った打球はファーストゴメスの守備範囲。3者残塁。チェンジ。空気に失望が広 まる中、「これが限界かな‥‥」誰かが、そう呟いた。

9回表。スワローズのピッチャーは高木に代わる。昨年チーム2位の勝ち星を挙げたピッチャーなのに‥‥。この使われ方の落差は悲しい。その高木、ヒットは打たれたものの無事0点に抑えた。この回途中、新幹線の時間の問題から田村さんが残念 ながら途中退席。思えば皆さん、遠くから来て下さる。

9回裏。ドラゴンズ、ギャラード登場。守備固め大西のところに、さらに守備固めなのかセンターには関川が入った。9番センター関川。ギャラードは7番。この措置は延長戦も視野に入れてのことか。こういう用意周到さこそ、星野監督の恐ろしさ だろう。

スワローズこの回先頭のペタジーニが意地のセンター前ヒット。まだ挫けないスワローズファン、盛り上がる。ここまで点差こそ開いたが一方的にやられているわけ ではない。しかも続くのはスワローズを強豪に引きあげた古田・池山。

期待の2人はそれぞれファーストファールフライと、サードゴロ。試合終了。勝利投手は前田。セーブはギャラード。敗戦投手は山部。前田は30歳の誕生日を見事自らの白星で飾った

8-5と点差はあったが、いい試合だった。その何よりの証は、負けた側のスワロ ーズファンがメガホンを投げ入れなかったことだ。近年良くない傾向があり、負けたチームのファンが投げ入れる光景を見かける。この日も係員がライトスタンド前に立ってそれに備えたのだが、スワローズファンはこの敗戦を粛として受け容れた。引き あげる選手たちにかける声も、優しかった。 おかげですがすがしい気持ちで、球場をあとにできた。

神宮に11時間以上いたのだが、心は既に次の観戦に向いていた。好試合を見られたあと独特の余韻を残しな がら。 参加して下さった皆様、お疲れさまでした。

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