9月26日 ヤクルト−巨人
(神宮球場)

(千葉県・ふさ千明

去りゆくシーズンを惜しんでこの日も球場へと足を向けた。候補に挙がったのは2つ。消化試合となった神宮の巨人戦か、予告先発・岩本の東京ドームの日ハム戦か。ちょっと悩んだが神宮に決定。

というのも、今年はまだ巨人の一軍戦を観戦したことがなかったのだ。何度か機会はあったのだが“巨人戦=チケットが手に入りにくい・入らない”というイメージがあり、わざわざ前売りを並んで買う気にもなれず、今になってしまった。昔はそれでも今は亡きそごう有楽町店のチケット売場で券を求めて並んだものだったが。

付け加えるならば、最近マリーンズに傾きがちの自分の中にまだ巨人ファンの部分が残っているのかどうかを確かめたいという思いもあった。

あと挙げるとすれば球場の好みである。東京ドームより神宮の方が好きなのである。いいのか巨人ファン。

消化試合だから大丈夫だろうと思いつつも、一応信濃町駅に着いたところで神宮球場へ電話して席の空き具合を確かめる。充分余裕があるということで安心して球場へ。途中、ダフ屋が立ち並ぶ歩道橋を抜け、順調に歩を進めたもののバッティングドームで引っかかる。

混んでいたのですぐに入れた福間のボックスで20球だけ打つ。今回は初めて滑り止め用の手袋を借りてみたものの、結果はさんざん。あまり景気づけにはならなかったが、それでも足どり軽く球場へ到着。

内野か外野か迷ったが、レフトスタンド自由席を選択。混んでいる応援団一帯を通過してレフトポールから内野寄りのC指定席との境界あたりに陣取った。ぽつんと一人。照明が近くになく、妙に薄暗い。一人だけ別空間にいるようでちょっと悦に入った。

とりあえずカレーということで買い出しに行くと、通路に特設売場があり、ジャイアンツ優勝記念グッズが山と積まれていた。神宮とはいえレフト側だけあって、そこそこの人が足を止めている。見ると黄金のメガホンやらジャビット桝やらあったが素通り。1989年のこと、その年発売された優勝記念グッズの扇子があっという間に壊れてから買うのを止めている。名物外野カレー大盛のみを手に席へ戻った。

席に戻ると、ちょうどオーダー発表。

ジャイアンツ スワローズ
仁志 飯田
斉藤宜 土橋
高橋由 稲葉
松井 ペタジーニ
江藤 古田
後藤 高橋智
二岡 岩村
村田善 宮本
メイ 前田

以上のようなオーダー。清原がいないのはやはりアレか。

発表のあと、高津投手の150セーブ記念表彰があった。横浜でも駒田の2000本安打表彰を見たりと、最近表彰づいている。

メイを見るのはこれが初めてだ。阪神時代も生で見た記憶がない。片や前田は8月26日にここ神宮での観戦会にて1イニング見ている。ホントに巨人ファンか私。

まぁとりあえず優勝の原動力たるメイに期待。

優勝と言えば。優勝を決定してから初の試合と言うことでオーダー発表後に優勝万歳コールをやっていた。それ系のメッセージが入った横断幕があったりもした。私の席はそこから遠く離れているので参加もせず眺めていた。カレーを食べつつ。

カレーを食べ終わったころにプレイボール。

両先発ともに順調で、序盤3回は一進一退でゼロゼロ行進。 特筆する場面はと言えば、1回裏フォアボールで出た飯田がスルスルっと離塁し、メイが牽制球を投ずるもそのままセカンドを陥れてしまったシーン。思わず笑ってしまった。

守備では高橋由伸が2回裏に古田のライナー性の打球を地面スレスレでランニングキャッチし、さらに3回裏も宮本の「これは抜かれた」という打球をランニング&ジャンピングキャッチ。どちらの場面もスタンドから惜しみない拍手が送られた。それにちょっとした仕草で答える由伸、なかなかかっこいい。

あと、これは応援に関してだがロッテ大塚明の応援メロ譜そのままに「GOGO二岡」とするのは語呂悪すぎる。どうせなら開き直って「GOGO江藤智!」にしたらどうか。おんなじアキラだし。

4回表。由伸倒れてワンナウトランナー無しで松井。ボール球1球見逃して2球目。バット一閃打球はライトスタンド。一直線のライナーは先制の41号ソロアーチ。レフトスタンド沸騰。私も立ち上がって拍手。1−0。これが効いたか、それまでヒット1本に抑えてきた前田が江藤・後藤・二岡とつるべ打ちを食らう。でもヒット3本で満塁ってのはどうしたもんか。野球盤じゃないんだから。

ここでマウンドに内野陣が集まり、小谷ピッチングコーチもベンチから出てくる。前田交代。ピッチャー宮出が告げられた。見切り早すぎ。あとは8番9番なのだから抑えるのはそんなに難しくないのでは、というのは素人の浅はかさなのか。 宮出後続断ってこの回1点止まり。

4回表終了時に他球場の途中経過が映し出されたが、消化試合のためか観客の関心はひたすらに薄い。その後、静岡県須山小学校の児童が来ているというアナウンスがあった。それはいいのだが『遠くからお越しの皆様に拍手をお願いいたします』ってのはちょっと変じゃないか。でも満場の拍手が湧くのがちょっといいと思った。いいのか本当に。

また、時間的な問題かこの時くらいから私の周辺にも人が入り始めた。 さてと思ったらまたアナウンス。今度は何だと思ったら『ジャイアンツ選手の交代をお知らせいたします』今度は試合関係だった。サードの江藤が下がり福井が入った。イースタンの試合で何度も見た何度も野次った福井だ。

4回裏は三者三振。メイ、力投。

5回表、宮出も負けじと三者凡退に取る。

5回裏。先頭の古田倒れてワンナウト。高橋智登場の所で、左手後方にいた赤ん坊が泣き出した。登場テーマの重低音に怯えたのかそれとも…打席が終わると泣きやんだのがなお笑いを誘った。

当の高橋智はそんなことは当然知らぬままライトに前ヒット。岩村キャッチャーファールフライでツーアウト。宮本の打球は仁志の頭上へ。ジャンプもわずかに及ばずライト前ヒット。さすが(?)ププ会。

ツーアウトながらランナー1,2塁で、宮出に代打池山。ちょっと早いが切り札登場。レフトスタンドにいる気の早い人間は既に傘を開かんとしていた。こわばる空気に、私は思わず固唾をのんだ。

メイ、慎重の上にも慎重になり、ボール先行。ファール一つ以外はすべてボールでカウント1−3。そして5球目、大飛球がまっすぐに飛んだ。くるか? と思ったのも一瞬。上がりすぎなのがわかり、安堵。松井が掴んでスリーアウト。ミスターバックスクリーンと言われたころなら入ってたのかな、あの打球…。

6回表。代打した池山に代わってピッチャーは石井。といっても勿論16番一久ではなく61番弘寿のほうだ。 その弘寿の前に松井空振り三振。ワンナウトで福井に打順が回ってきた。周囲の反応は当然「誰?福井」である。その背番号が53であることどころか、週べの名鑑号に毎年毎年堂々と好みの女性のタイプの欄に「天才卓球少女福原愛ちゃんのファン」と書いていることなどまったく知られていないようであった。私などは「峰不二子」と書いた広島の金本、「藤崎詩織(ときメモ)」と書いた同じく広島の森笠と共に密かに三勇士と呼んでいるのだが。

そういう存在ながら、応援は「ホームランホームラン福井」だった。無茶言うな、と思ったが7月18日に鎌ヶ谷で見た彼のホームランを思い出し、イースタン戦とは言えあそこは神宮より広いのであながち無茶ではないのか、などと思い直した。しかし結局センターフライに倒れツーアウト。

次打者後藤に代打で川相が登場。その不遇ッぷりに思わず「かわい〜」叫んだら「じぃ〜〜」という声がどこからともなく聞こえた。レフトスタンド全体からそれぞれ、なにがしかの川相にかける声援が聞こえる。川相で盛り上がれることにちょっと悦びを感じたりする。期待の打席、ストレートのフォアボール。川相、丁寧にバットを置いて1塁へ。渋さをアピールするも二岡ファーストライナーでチェンジ。川相はそのままサードに入り、福井がファーストにまわった。

6回裏。先頭の飯田粘って粘ってセンター前にクリーンヒット。あのしぶとさ、さすがトップバッター。土橋がキッチリ送ってワンナウト2塁。稲葉に代打が告げられる。「度会かな? 佐藤さんかな?」『バッター、青柳』…ライトスタンドが反応に乏しい。ここまで.171の0本では無理もないところか…。空振り三振でツーアウト。ペタジーニはデッドボールでツーアウト1,2塁。古田、カウント0−3から打って出てセンターフライ。チェンジ。代打した青柳に代わってライトに副島が入った。

この回終わると、みんなが風船ふくらませているのに気がついた。いつ飛ばすんだろうと思ってみていると7回表が始まってしまった。首を傾げていると先頭バッター村田善則の名がコールされてから一斉に飛び始めた。「わー、綺麗」とか言ってる場合ではない。グラウンドにいくつか落ちたものの気にせず試合続行なのにはちょっと驚いたが。いいんだろうか。

応援にメリハリをつけようと言うのは悪くないと思うが、変化を追うあまり試合そのものに悪影響を与えては本末転倒だろう。離れていたところで見ていた私は、離れていたゆえであろうか、そう思った。

それにめげなかったのか勇気づけられたのか、村田善はライト前にヒットを放つ。メイは送りバント失敗で三振。仁志がセンター前に弾きかえし、これを飯田が悪送球。ランナー2,3塁に変わる。仁志に代走宮崎。そして斉藤宜に代打元木。くせ者登場にレフトスタンド拍手喝采。期待高まり意気あがる。

するとこのとき、マウンドに主審・2塁塁審と集まり、監督もでてきた。なにやら密談していたので、問題行動でもあったのかと思ったが、しばらくして『スワローズピッチャーの交代をお知らせいたします‥‥』オイ!何があったか知らないが時間食いすぎ。一塁側ブルペンからマウンドへやってきたのは本間。

カウント1−1からの3球目、元木の打球はレフトへ。タッチアップに充分な飛距離だ。犠牲フライで一点追加。さすがくせ者、と思っていると2塁の宮崎が飛び出していた。カットされた送球に捕まってアウト。3塁ランナー村田善のホームイン前だったので無得点でチェンジ。

鎌ヶ谷でも同じようなミスを目撃している私としては(7月18日の観戦記参照)肺腑を剔るような野次の一つも飛ばして気つけにしてやろうかと思ったのだが、なんというかこう、気が引けてしまった。後で元木に呼び出されたりする かと思うと今くらいはせめて。

宮崎はレフトにまわる。一応登録は内野手だけども、その辺の頓着の無さは相変わらず。で、元木がセカンドへ。

7回裏、先頭の高橋智倒れたあと、岩村がうまくバットに乗せ、ライト前に運んだ。宮本空振り三振でツーアウト。9番ピッチャー本間に代打度会。変化球を引っかけてショートゴロでチェンジ。 メイ、ランナーを背負ってからの集中力が見事。思わず拍手。

8回表。マウンドには山本樹があがった。松井をエラーで出塁させるものの、キッチリ後続を断ち0封。

8回裏。打順良く一番から始まったものの、飯田は粘って土橋は初球を打って出て共に倒れツーアウト。副島が意地を見せ、フルカウントからメイの横を抜くセンター前ヒット。バッター、ペタジーニ。本日ここまで2三振1死球でノーヒット。ただしここでホームランなら殊勲の逆転打となり試合もほぼ決まる。

1球目ボール。2球目もボール。3球目にようやくストライク。そのあとボール、ストライクと入ってカウント2−3。勝負の6球目、ペタジーニのスイングは空を切った。空振り三振でチェンジ。

9回表、山本の前に三者凡退。下位打線はこんなものか。「あと一点取ってメイを楽にしてやらなきゃ!」とかいう意気込みは、あったかも知れないが見えてこなかった。

9回裏、最後の反撃と応援に力の入るライトスタンド。一方、絶対的リリーフがいない上メイの投球数からしてそろそろなので不安を拭いきれないレフトスタンド一部。 それを裏付けるかのように先頭の古田が歩き、ノーアウトランナー一塁。高橋智登場。明らかな一発狙いは空振り三振。そして岩村はセカンドゴロ、4−6−3と渡ってダブルプレー。ゲームセット。 1−0でジャイアンツ勝利。

メイ完封で12勝7敗。メイの淡々と投げ続ける姿は往年の加藤初を思わせた。アレがガルベスならとっくにキレていたんではないかと思う。久々に完封試合を見せてもらったためかも知れないが、私の中でメイの評価が大いに上がった。

敗戦投手は前田で2勝2敗。3回1/3を投げ被安打5、自責・失点共に1ではちょっと気の毒。まだ試合を任せてもらえるだけ信頼されていないと言ってしまえばそれまでだが、不運と言うこともできるだろう。

いくつかミスもあったが、それぞれのピッチャーが持ち味を活かした投手戦でもあった点、楽しかった。何しろランナーが一人出ても逆転の可能性があったので緊張感を持ってみることができた。

これらも全て、巨人が勝ったから言えることかも知れない。やっぱり巨人が勝つと、嬉しい。 今年初の完封試合を目にし、万歳三唱に加わって、じぶんが巨人ファンであることを再確認できたことを嬉しく思いながら球場を後にした。

戻る

inserted by FC2 system