9月3日 日本ハム−ロッテ
(東京ドーム)

(千葉県・ふさ千明)

乾杯シート観戦記

正直な話、この日はロッテ浦和か東京ドームか迷った。前日の二軍戦に“漢”石井浩郎が怪我から回復し出場していたからだ。しかし今シーズンのファイターズとの対戦成績を思えば少しでも応援しておきたかった。前日ジョニーことエース黒木で勝っていたから余勢を駆って今日も、という思いと連勝なんてそんな甘い話はないよなぁ、という思いが複雑に交錯した。

前回アップルシート観戦の際に出遅れたことを教訓にして早めに家を出ることに。おかげで開門前到着だったのでほとんど並ばずチケットを取れ、一安心。ふと気付くと試合まで随分時間がある。そこで野球体育博物館へ足を向けてみた。

入ってみると、中では特別展としてオールスター展をやっていて、思いっきり見入ってしまい予定をオーバーする。それでもしっかりグッズショップTO;DOに寄って様々物色。『ChiBA ROCK MARines』というCDを購入。バリバリロックサウンドのマリーンズ公認CDである。さらにセンチュリーベストナインカードに心惹かれたので1パックだけ買ってみる。成果はそこそこ。

思い切り道草をくった。野球体育博物館やTO;DOのある場所から三塁側24番ゲートは意外と遠い。反対側なんだから当たり前なのだが。それでも急ぎ足で向かった成果か、セレモニー前には着席していることができた。場所はレフトポール際ギリギリの内野席。でも角度的にポールが邪魔にならないので、問題はない。防護ネットがいささか邪魔だが。

これで飲み物おつまみ付きで指定席1800円はかなり安い。あえて難点をあげるなら周囲に酔っぱらいが多いことぐらいだろうか。まぁそれとても、さして問題になるほどではない。

この日はヤンキースデーということで試合前には様々なセレモニーがあるとのこと。入場するときにもラッキーカードをもらった。このラッキーカード、抽選に外れても指定B、C及び自由席が割引になる優待券になるとのことで、非常に無駄がない。要は外れた場合、このカード都内の地下鉄各駅に置いてあるものと同様の効力を持つわけだ。

席に着いたところで、取り急ぎ食料の調達に向かう。この日もカツカレー、カルビ丼、天丼は売っていなかった。とりあえず、ドリンク券とおつまみ券をキリンメッツグレープフルーツとピリ辛チョリソーに引き替えて席へ。

既にセレモニーは始まっていた。まず初めになぜ今日がヤンキースデーなのかという解説があった。ヤンキースとファイターズが友好関係にあるということを、この時初めて知る。ニューヨークヤンキースのジョー・トーレ監督からのメッセージが日英両文で読み上げられたあと、米空軍パシフィックバンドによる演奏になった。

曲目は『Those Magnificent Men and Thier Flying Machine』『Take Me out to the Ball game』『I’m Yankee Doadle Dandy』の3曲。さらにヤンキースデーにちなんでグリーンスタジアム神戸を思わせるアメリカンスタイルのDJアナウンス。それはいいのだが英語風の発音のためマリーンズ「平井」が「ヒワイ」に聞こえてしまって困った。

先発はマリーンズ清水直行、ファイターズ伊藤。マリーンズの清水は、実は私と大学が同期である。しかし大学時代は一回も投げるところを見てなかった。だから彼の投げる試合はいつも「すまぬ清水!」と思いながら見ている。一方の伊藤は記憶にないので毎度おなじみの名鑑を繰る。背番号23で右投げ右打ち、コメントは『力ある気迫のこもった投球は魅力十分』とのことで、いささか不安がよぎった。

名鑑から顔を上げたところでプレイボール。1回表。1番諸積セカンドゴロでまずワンアウト。2番サブローがセンター井出の頭を越えるツーベースを放ち、3番平井もライト前へ。しかし当たりが良すぎたためかサブローはホームに帰れず1死1,3塁。今までにない良いスタートである。しかもここで登場するのは4番フランク・ボーリック。一発放って先制スリーラン!という期待空しく空振り三振。5番初芝ライトフライでチェンジ。幸先悪し。

1回裏。井出がフォアボールで歩く。そして2番小笠原がライト前へ運ぶ。またいつものパターンか、と早くも悪夢がよぎる。3番片岡はセカンドフライ。ワンアウトを取っても息もつけない。何しろ4番シャーマン・オバンドーの登場だ。大体ここでスリーランというのがいつもの負けパターン。だから打球が上に上がった瞬間、覚悟した。しかしそのボールをサブローががっちり捕った。5番島田ショートゴロで清水直行初回無事無失点。奇跡というのはあるものだと思わずにはおれなかった。

何しろここ5年間でファイターズ相手にはロードでは1回しか勝ち越していない。この東京ドームという場所は、ロッテとそのファンにとって縁起の悪いことこの上ない鬼門なのだから。

2回表。6番福浦がフォアボールで出塁すると7番堀がレフト前へ転がして1,2塁。8番吉鶴ピッチャーゴロもランナーそれぞれ進塁で1死2,3塁。9番小坂ライト前に弾いて先制タイムリー。1-0。

トップにかえって諸積の打席、3球目で1塁ランナー小坂スタート。見事成功して1死2,3塁。諸積歩いて1死満塁。サブローライトへ犠牲フライ。2-0。ランナーそれぞれ進塁して2死2,3塁。バッター平井。流し打ちはレフトへ。タイムリーを確信した瞬間、オバンドーがランニングキャッチ。チェンジ。

2回裏。先頭の6番ウィルソン、ファーストゴロ。続く7番田中幸雄の打球はレフト前。8番野口が歩いて1死1,2塁。9番奈良原センター前で1死満塁。井出・小笠原と連続押し出しであっと言う間に同点。2-2。片岡ライト前タイムリーでさらに2点追加。2-4。オバンドーデッドボールで再度満塁。島田・ウィルソン連続空振り三振でようやくチェンジ。ビッグバン打線とは言うものの、結局ヒットヒットにフォアボール積み重なっての逆転劇。世の人これを自滅と言う‥‥。

3回表。先頭バッターボーリック。ロッテファンで立ち見の場所までいっぱいになったレフトスタンドへ第24号ソロアーチ。3-4。初芝・福浦と倒れるも堀が右中間にツーベースを放ち同点の好機到来。しかし吉鶴サードゴロで結局この回一点止まり。

3回裏。先頭バッター田中幸雄の打球、打った次の瞬間には、もう私は見失ってしまっていた。気付けばレフトスタンド直上、竹中工務店の看板にぶち当たる13号ソロホームラン。3-5。落ちてきたボールをマリーンズファンの一人が投げ返し、周囲から拍手が湧く。これで目が覚めたか気を取り直したか、清水直は続く野口・奈良原・井出と三者連続空振り三振に切ってとる。ペースに乗ったのだとしたら、いささか遅い。

4回表。ファイターズのピッチャー伊藤から高橋憲幸に交代。今年何度目だろうか、二番手として高橋憲を見るのは‥。私的にはミスター二番手と言いたいほど、こういう登板を見てきた。しかし毎度のことながら伊藤は3回で被安打6の3失点。良いと言うほどではないが、まだ勝っていることだし、この交代早くはないだろうか‥。

先頭の小坂ライト前ヒットで出塁。諸積倒れたあと、サブロー三遊間を破って1死1,2塁。バッター平井という場面で代打佐藤幸彦登場。両監督とも仕掛けが早い。レフトスタンドは「ユキヒコ」コールの大合唱。負けずにライトスタンド、「頑張れ頑張れ憲幸」コール。

緊迫した空気の中、一球一球に注目が集まる。佐藤、粘って待ってフォアボール。1死満塁でボーリック。ロッテファンの脳裏にはもう“逆転満塁ホームラン”しかない。スゥイングから放たれた打球は、ボテボテとセカンド奈良原の前に転がった。ため息と脱力のなか、それでもボーリックは走った。奈良原から田中幸雄にボールが送られてセカンドがアウト、田中はファーストランナー佐藤幸彦必死のスライディングでわずかに体勢を崩すも、それでも上体をひねってファーストへ送球。‥‥‥セーフ。サードランナー小坂生還、4-5。なおも2死1,3塁。バッターは初芝。ヒットで同点、長打で逆転。でも空振り三振。チェンジ。

4回裏。代打した佐藤幸彦、そのままレフトの守備につく。“代わったところに球は飛ぶ”の格言通り先頭の小笠原レフトフライ。片岡右中間を破ってツーベース。オバンドーもレフトフライ。2死2塁となったところでバッター島田に代打上田。セカンドゴロでチェンジ。

5回表。代打の上田、そのままライトへ入る。先頭の福浦セカンドフライ。続く堀がライトフライで、やはりこちらも格言どうりになった。で、あっと言う間にツーアウト。吉鶴の打球もライトへ飛んだが、こちらはゴロ。ライト前ヒットで2死1塁。続く小坂の打球はショートへ。田中幸雄、駆けて駆けて追いつき、ファーストへ送球。

小坂の俊足一歩まさってセーフ。2死1,2塁。チャンス到来も諸積セカンドゴロでチェンジ。あと一本が出ない。この時点で既に二ケタ安打なのに、まだ4点。ちなみにファイターズはここまで6安打で5点。

5回裏。ファイターズ三者凡退。清水直、尻上がりに調子をあげている。ここでちょっと用足しに席を立ったのだが、途中立ち見席の人の多さに圧倒される。なにしろずらーっと人、人、人。チケットの買い直しができるお直り席販売所も、「完売」の文字が。本当に早めに出てきて良かった。何があったんだ? これは日ハム−ロッテ戦だぞ、と思いつつもやっぱり日曜日はウイングデッキを開放して欲しい。

6回表。ファイターズのピッチャーは立石に代わる。ファイターズ投手陣には何人もいる“ロッテの天敵”の1人である。特に去る5月21日、“サンデー晋吾”こと小野晋吾とこの地で9回を完封しあったあの投げ合いが印象深い。先頭のサブローが歩いて佐藤が送った。今日何度目かのチャンス。しかもバッターはボーリック。一発を狙っての大振りで、空振り三振。初芝セカンドゴロでチェンジ。一点ェ、ホームベースが、果てしなく遠い‥。

6回裏。先頭奈良原のゴロを初芝がトンネル。奈良原一気にセカンドへ。井出が送って、小笠原登場の場面で清水直降板。まだいけると思うんだけどなぁ‥。マリーンズのピッチャー川井登場。川井で抑えられるのかなぁ、藤田のが良くないかなぁ、そもそも川井も先発だったり中継ぎだったり大変だよなぁ、などと心中密かに思っていると小笠原セカンドゴロ。サード奈良原動けず2死3塁。内野の前進守備が実った。バッター片岡。ここを抑えれば望みがつなげる‥。その望みを砕く片岡の19号ツーランがライナーでライトスタンドに飛び込んだ。ファイターズファン待望の追加点。オバンドーもライト前ヒット。上田空振り三振でようやくチェンジ。

7回表。攻撃前に『ウィ・ラブ・マリーンズ』が流れ、みんなで歌う。歌っていると、何となく自分トコの方が有利に思えるのが不思議。でも三者凡退。錯覚は錯覚か‥‥。

7回裏。攻撃前に『Take me out to the ballgame』が流れ、レフトライトの別無くみんなで歌う。それはよかったのだが『ファイターズ讃歌』が流れなかったので、応援団慌てて吹奏。その間にマリーンズのピッチャーは吉田に代わる。吉田の球、低めをフルスイングですくい上げるウィルソン。32号ソロが再びライトスタンドへ。4-8。マリーンズには遠いホームベースが、ファイターズにはあっと言う間だ。勝てない理由がありありと見えた。

続く田中、野口と倒れる。ツーアウトで奈良原。その奈良原の打球は三塁線へ。サード初芝が飛びついてこれを弾いてしまう。ボールはファールゾーンを転々とする。レフト佐藤が押さえたときには、既に奈良原はセカンドベース上にいた。記録はツーベースヒットだが、余計なことをしなければシングルヒットだったんじゃないかなぁ‥‥。井出、ツースリーまで粘ったもののサードライナーでチェンジ。マリーンズ何とか事なきを得る。

攻撃終了して、ラッキーカードの当選番号発表。期待せずに自分のカードを見たら、ヤンキースグッズが当たっていた。球場で物が当たったのは、生まれて初めてだ。展開が展開なので、あんまり喜んでいられなかったが。

8回表。田中幸雄ベンチに下がり、金子が入りセカンド。セカンドの奈良原がショートに回った。この金子・奈良原の二遊間は見応えのある良いコンビネーションを発揮していて好きなのだが、今日はそういうことも言っていられなかった。勝っていれば余裕も生まれるのだが‥。

先頭の小坂空振り三振。諸積もショートライナーであっと言う間にツーアウト。サブローライトオーバーのツーベース。平井のセンター前でサブロー生還。5-8。チャンスにみたび登場ボーリック。前にも増しての声援の中、あがった大飛球はレフトのオバンドー守備範囲。「落とせー」という声がしたが、キッチリ掴んでレフトフライ。チェンジ。嘆声が満ちるレフトスタンド。

8回裏。マリーンズはピッチャー藤田を投入。中継ぎエースの投入は「まだあきらめない」意志の証だと思えた。先頭の小笠原がライト前に弾いて出塁。バッター片岡、ここでスリーベースを打てばサイクルヒットだ。まだ見たことがないもので、つい期待してしまう。でもそうなるとさらに点を取られてしまうわけで。さてどうしたものか。

そうこうしているうちに片岡ショートゴロ。小笠原セカンドへ進塁して1死2塁。オバンドーもショートゴロ。ショート小坂、セカンドランナー小笠原を目で押さえつつ、深い位置からファーストへノーバウンドスロー。2死2塁。上田の場面で代打藤島誠剛。初球、小笠原が走った。虚をつかれたバッテリーは刺すことができない。2死3塁。バッターに集中することに決めたか藤田、ランナーをほとんど見なくなった。速球決まって空振り三振。チェンジ。

9回表。「ミラクルマリーンズ」コールがわき上がる。3点という点差は簡単なものではないが、あきらめるほどではない。まだやれるはず。少なくとも、悪あがきを見せて欲しい。ファイターズの選手交代が告げられ、代打の藤島レフトへ入り、オバンドーのところにライトとして中村が入る。そしてピッチャーはミラバル。

先頭の初芝、三遊間へ痛烈な打球。片岡ランニングキャッチしてファーストへ送球。1アウト。福浦の打球も三遊間。奈良原さばいて2アウト。堀、ミラバルの速球に手が出ず見逃し三振。ゲームセット。

結局5-8でファイターズ勝利。マリーンズがファイターズに勝てない理由の見本みたいな試合であった。勝利投手立石。セーブミラバル。敗戦投手清水直行。

「なるようにしかならなかったなぁ」という私の呟きは、ドームの屋根に吸い込まれた。それでもきっちりヤンキースグッズは引き替えて帰ったが。ちなみにこの時もらったヤンキース仕様のミニクーラーボックスは、観戦のお供として重宝している。

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