3月14日 ロッテ−ヤクルト〜オープン戦
(千葉マリンスタジアム)

(ふさ千明)

京都へ引っ越すことが決定していた私は、残り少ない千葉での日々を惜しむべく千葉マリンスタジアムへと自転車を走らせた。絶好の野球日和、自転車をこぐ足にも気合いが入る。 途中、「マリーンズボールパーク」に立ち寄りグッズのチェック。 球場に到着し、自転車をいつもの場所に止め、チケットを購入。

内野席めがけて駆けていくと(落ち着きのない25歳の図)、その途中球場の食堂『マリンのそよ風』に張り紙があることに気が付いた。「本日より一般の方もご利用いただけます」と。これは行かねばと思い、しかし今までが今までだったので恐る恐るドアを開く。

メニューは白板にプレートを張り付ける形で存在していた。 カレーを注文。 もともとここを利用していたとおぼしきパス持ちの方々は「慣れるまでの辛抱か」とおっしゃっていた。 カレーの味は‥‥。まぁ、こんなものか。

一路内野自由席へ。オープン戦と言うことで本来内野A指定の区分が自由席になっているのは去年と同じ。違ったのはそこかしこに大書された「スタンド禁煙」の文字。私は嫌煙家だから大助かりだが吸う方はプレッシャーであることだろう。 そんなことを思いながら席に着く。

先発はスワローズ前田、マリーンズ加藤。前田はよくよく縁のある投手と見える。オリックス時代はちらりと見たことがある程度だが、スワローズに移籍後は8/26観戦会第一試合のイースタンを皮切りに、それ以後のスワローズ戦観戦で登板を目にしなかったのはたったの一度。これが中継ぎ投手エース、たとえばマリーンズにおける藤田、タイガースにおける伊藤などという立場なら分からないでもないのだが先発でというのはちょっと珍しい。

一方の加藤は大学の後輩にあたり、その上、大卒ドラ2で背番号28のサウスポーといえば園川の後継者であり、これはもう自然と目がいってしまう投手である。 そんな2人の投げ合いなのでオープン戦とは言え興味津々である。

周囲の客層はといえば。おばさん2人組やら若者の集団やら家族連れやら様々。 アナウンスによるとオープン戦ながら勝利投手賞・ホームラン賞・第一打点賞の三つが存在するとのことだ。

オーダー発表後「ウィ・ラブ・マリーンズ」の曲に乗って鹿児島鴨池キャンプの模様がマリンビジョンに映し出された。粋なことをするではないか。ホーム初戦、「今年はこんなキャンプでした」という報告は嬉しいものだ。

始球式はなんとパリーグの小池会長。無事務めたあと、使用したボールを山本監督に渡し、サインを求めている姿を目にし、ほほえましく思う。 その地位にふさわしい行動であるかどうかはさておき、サインボールを嬉しそうに眺める姿はどう見ても野球好きのオヤジそのままであり、それはこうしてみている自分のスタンスと同じ目線にある。それが嬉しかった。

そのあとスタメンを見れば、さすがにもうこの時期、両チームともレギュラークラスが顔を並べている。 ただ、スワローズは不動のファースト・驚異の年上妻を持つ男ペタジーニが怪我で戦列を離れており、この試合は度会が守備についているくらいか。 マリーンズはこのまま開幕戦を戦っても良いようなメンバー。

上空を飛ぶジェット機の音を聞きながらのプレイボール。 マリーンズ先発加藤、初回簡単に2死をとるも、古田にライト線を破られツーベースを許す。これで動揺したか続くラミレスにボール二つ。「ああ、ルーキーだもんな」と思った瞬間、見事なストレートが外角一杯に決まる。次の変化球をファールされカウント2−2。一球外してくるだろうな、という予想は「ストライクバッターアウト!」ラミレスの空振りでうち消された。しかもそのあと、さも当然そうにマウンドを降りる加藤。 「お前ホントにルーキーか?」  この辺も園川。

一方の前田の立ち上がりはといえば。 1回、トップバッター小坂の初球打ちは度会のグラブへ。しかし慌てたか捕りこぼし、セーフ。続くバッターはサブロー。明らかな“送り”の場面、スワローズ、極端なバントシフト。1球目ボール。度会・岩村が猛ダッシュしてくる。それを見てサブロー、ヒッティングに切り替え、見事ライト前ヒット。小坂は俊足を飛ばしてサードに。福浦のファーストゴロの間に小坂生還。マリーンズ一点先制。1−0。なおも1死2塁。

しかもここでバッターは“拝啓”石井浩雄。盛り上がる空気に押されたか、2球目にワイルドピッチ。サブローはサードへ。外野に飛べば一点確実のこの場面で石井ショートフライ・ボーリックファーストファールフライでチェンジ。 いつものことさ、とか言うとファン失格でしょうか。

続く2回は初芝がセンター前に弾き、佐藤幸彦ショートゴロでセカンドフォースアウト、1死1塁。清水将海がレフト前ヒットで1,2塁。諸積の当たりはふらふらと上がり、思いっきり風の影響を受ける。名手宮本慎也も惑う打球は結局ポテンヒットで満塁となる。小坂センターへのフライはタッチアップ楽々で2−0。

2死1,2塁となりバッターはサブロー。度会が牽制球落としてランナーは一気に二つ進塁。3−0。2死3塁。そこへ追い打ちのライト前ヒット。4−0。福浦倒れてチェンジも、ルーキーには大きな援護となろう。 もし見殺しにしたら「お前らルーキー一人助けてやれんのか?! かわいそうと思わんのか!」と野次るところだったが(後日結局そうなった・泣)これなら文句はない。

そして、加藤は好調だった。 4回、岩村にアーチを食らったが結局その一点のみ。4回被安打3で1失点は合格点をあげたい。 このあとマリーンズは一人1イニング投入でつないでいく。

4回裏、マリーンズはヒットで出たランナーがエラーで帰って、前田の自責にならない失点がまた増えた。 前田も5回までで、あとはスワローズも同様の投手起用をする。

6回裏が終了すると「スワローズファンのみなさま、ラッキーセブンでございます」のアナウンス。 相手のラッキーセブンもこうアナウンスするというのはパリーグどこの球場でもあることだが、確か去年はオープン戦ではやってなかったと思ったが‥‥。良い傾向だと思う。ぜひ来年もやって欲しい。

それに気をよくしたかスワローズファン、ひときわ大きく「東京音頭」の大合唱。そして、それに呼応して手拍子をするライトスタンド。公式戦では見られない光景だろう。 代打副島のツーベースで大いに盛り上がるも無得点。

7回裏、今度はマリーンズのラッキーセブンだ。 先頭の打順は4番、石井に代わりこの回の表からライトの守備に入っている立川。その名がコールされると、内外野問わず一塁側は立川コール。この人気を、ぜひ実績につなげて期待に応えて欲しい。 結果は、粘って粘って空振り三振。この空振りが次の一発を生むことを期待したい。 そして結局三者凡退。どっちもどっちだが、盛り上がる場面を作れただけスワローズのほうがまだましか‥‥。

8回表、藤田の名がコールされると、呼ばれた当人はリリーフカーに乗らず歩いてやってきた。 グラウンドをのし歩く姿はとても4年目とは思えない風格。 風格といえば、9回に登板した小林雅英も負けていない。すっかりストッパーの座が似合う男になった。ジョニーも「あいつが打たれたらしょうがない」とまで言っているとか。

総計7安打に押さえ込んだマリーンズ投手陣にかすかな期待を覚え、マリーンズ絵馬堂に一筆、奉納してきた。別れの挨拶も兼ねて。 この絵馬のメッセージは思いのほか沢山の人の目に触れてしまったようで、いささか面映ゆい。そして、もっと丁寧な字で書けばよかったと、今だに後悔しきりである。

戻る

inserted by FC2 system