4月14日 近鉄−日本ハム
(大阪ドーム)

(ふさ千明)

鎌ヶ谷組見参の日

大阪ドームは久しぶりである。関西に移住してからは初めてだ。ここは球場としては食べ物の値が比較的安く味も悪くない。今日は何を食べようか、なんて事を考えつつ中へ。

どっちを応援してもよかったが、なんとはなしに1塁側内野自由席へ。 席へ着き、ファイターズのスタメンを見て思わず「鎌ヶ谷か?」と口走った。 なにしろ5番DH高橋信二、6番レフト島田、7番ライト中村豊、8番キャッチャー實松、9番センター森本。 

私はこのままの打順を鎌ヶ谷ファイターズスタジアムで見た記憶がある。片岡・井出・オバンドー・ウィルソンらを欠き、そのくらいせっぱ詰まっているらしいファイターズ。

もうひとつ、鎌ヶ谷を彷彿とさせたことは。DHの高橋は捕手登録であり、3番小笠原も捕手経験者。それでつい、鎌ヶ谷でキャッチャーがスタメンに4人も並んでいたことを思いだした。

この時点で座席の選択を後悔し始めたが、もう遅い。試合が始まってしまう。 先発Buエルビラ・F岩本。どちらもそこそこ期待できる。ここでも「まいど!」が聞けるのか? とか。 そうこうしているうちに、試合開始。

エルビラの立ち上がり。1死後、2番でサードに入っている奈良原を4球で歩かせてしまう。 モーションが大きいためかやたら出してしまった奈良原を気にし、牽制をする。3番の小笠原に投げたがらない。そのためかカウントは2−0からフルカウントまで行ってしまい、7球目。ライトへ鋭い打球が飛んだ。磯部、数歩動いてこれをキャッチ。

4番ショートというフレーズが何か懐かしい田中幸雄。その初球、奈良原が走った。小笠原を打ち取ったことで気を抜いたか、エルビラ・的山共に警戒が薄かった。 そういうところで躊躇無く走るからこそ奈良原とも言えるが。 これで2死ながら先制機。またもカウントは2−3までいく。そして、打球はセカンド水口のグラブへ。チェンジ。

一方のガンちゃん、初っぱなから大村に粘られる。というよりストライクが入ってないのか。ファールは一球もないわけだし。そんな6球目、いい音がした。打球は、センターへ飛んだ。センターへセンターへ。そして、スタンドへ入った。先頭打者ホームラン。

水口フォアボール。中村紀洋、ライトへライナー性の打球。シングルヒットながらも水口サードを陥れ、無死1,3塁。 4番ローズライト前で水口生還。早くも2−0。

磯部歩いて満塁。 ガルシアピッチャーゴロ。ホームフォースアウトでようやくワンナウト。長い。 7番DH川口、憲史コールの中左中間ざっくりの走者一掃タイムリーツーベース。5−0。阿部センターフライ、的山ショートゴロでようやく長い長い1回裏が終わった。

2回裏、大村・水口と打ち取ったものの中村にレフト前、ローズにセンター前に運ばれたとき、ガンちゃんの出番は終わった。ピッチャー新谷が告げられた。 新谷、磯部を空振り三振に切って取り、チェンジ。 このあと新谷は順調なピッチングで3・4と回を重ね、5回も満塁のピンチを招くも無得点に抑えた。さすが、と言っても良いだろう。

鎌ヶ谷組はと言えば。2回3回と打席が回るが、皆及ばない。ばたばた倒れていく。出塁すらままならない。 反撃は4回表、先頭の奈良原が倒れるも、小笠原はフォアボールで歩く。次打者は4番、ミスターファイターズの田中幸雄。

カウント1−3から幸雄のライト線ツーベースで小笠原が俊足を飛ばす。とても元捕手で3割30本クラスの選手とは思えない。そういう固定概念を崩してくれる選手だ。

でもそう言えば某カモメチームの主砲も20世紀最終戦、秦のタイムリーの時はあのくらい走っていたっけ。そんなこと考えているうちに小笠原ホームイン。5−1。 やっぱり、得点はこの2人だった。がんばれ鎌ヶ谷組!

しかしこういうオーダーだと知っていたら三塁側に行くべきだったか。何度もそういう思いに駆られた。 どうしても鎌ヶ谷組が気になってしょうがない。なにしろ何度も通ってヤジを飛ばした相手。ある程度情が移ってしまっている。

特に実松やヒチョリを見ていると、どうにもダメだ。移動するかとどまるか迷っているウチに結局一塁側で微妙なヤジを飛ばすことに決定。

すなわち、鎌ヶ谷組が凡退するたびに激励とも皮肉ともつかぬような文言で野次るのだ。 そのうち近くのおっちゃんから「アンちゃん、ファイターズに詳しいなぁ」と声を掛けられてしまった。「もともと関東モンですから」「ちょうどええ、ちょいと教えてくれるか?」「なんです?」「あの島田てお驍謔ネ、6番レフトの」「ええ」「アレ、島田誠か?」

もしアレが島田誠ならホークスで外野守備走塁コーチやってる背番号80は何者だろう。 そんなことを思いつつ昨年80試合に出場し、5番も務めた背番号39の一輝について解説した。 「ほぉ。なるほどなあ」

そんなことをやっているウチに試合がさくさく進んでいた。点数は相変わらずの5−1。ファイターズも7回終わってヒット3本ではどうしようもない。バファローズとて新谷のあとを受けた芝草に完璧に抑えられているから試合が早いのだが。

「ん?」 完璧に抑えている芝草が中村を抑えたところでマウンドを降り、ローズのところで厚沢登場。厚沢、ローズ・磯部と左2人を期待通り打ち取ってチェンジ。

この継投に刺激されたか、完投ペースで投げていたエルビラは7回までで、8回からは岡本がマウンドへ。 2死から奈良原が右中間を破るツーベースを放ち、武者・小笠原の打席。初球をファーストゴロ。またも得点ならず。

8回裏、ファイターズのピッチャーは。「アンちゃん、誰やと思う?」「そうですね。ダイエーから来た斉藤貢あたりじゃないですか?」 予想は外れた。

2日前に先発したはずの立石がマウンドへ上がっていた。ふがいない投球への懲罰登板か? どうなることかと見ていたが、阿部の代打吉岡をデッドボールで出してしまうもののゼロに抑えた。

バファローズ、9回はリリーフエース大塚を投入。 ここに来てようやく大島監督動き、代打攻勢。4番幸雄のあとは田中賢介・上田・古城・野口と全て代打がバッターボックスへ。賢介・上田と連続ヒットでチャンス到来も、後続倒れてゲームセット。 勝利投手エルビラ、敗戦投手岩本。

しかし“ビッグバン対いてまえ”というにはいささか寂しかった。それでも鎌ヶ谷組に会えたことは望外の収穫だった。素直に嬉しかった。俺もまた来るから、その時も出てこいよ! なんて事を思いながら球場を後にした。

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