9月20〜21日 ロッテ−西武
(千葉マリンスタジアム)

(京都府・ふさ千明)

「胴上げ阻止の2連戦〜マリーンズの美学〜」

マジック1で迎えたこの試合、見事に休みだったので、意を決し観戦すべく実家へと帰省した。帰省後、実家にて夕飯を食べていたところおふくろも「優勝決定戦なら行ってみたい」と言いだした。珍しいこの一言が発端で生まれて初めておふくろと野球を見ることになった。さらには試合当日、たまたま別件で電話してきた伯母も一緒に行くこととなり、思わぬメンバーでの観戦となった。ちなみに西武ファンのはずの弟はレポートがあるとのことで今回はパス。

さすがと言うべきか、今回は三塁側のほうに人がより多く並んでいる。三塁側のほうが人が多いというのはここでは非常に珍しいケースだが、事情を考えれば当然のことでもある。コレは明らかに西武ファンが胴上げを見に来ているのである。現に、券売所に並んでいるときにも国分寺から来たというおばあさん、たまぷらーざから来たというおばさんらとおふくろ&伯母がすぐになじんで話していたのだが、共に西武ファンで、胴上げ見たさに早起きしてやってきたのだと言う。

しかし。しかしである。マリーンズはマジック1のチームに対しての戦績はここまで5勝1敗。その1敗が西武相手であるのが気にかかるところであるが、それでも信じるには足る。

ここまでいいようにやられてきたマリーンズが最後の意地を見せるチャンスなのだ。こういうときのマリーンズはやる。今思うと根拠にもなんにもなっていないことで自信満々となり、得々と今日の試合について語る私。何をしているのやらと思う反面、シチュエーションを思うだけでここまでハイになれるこの試合の価値に身震いする。

並んで1時間、ようやく販売開始となる。伯母おふくろもいるということでS指定席を並びで購入。席番が54,55,56(ジョニー、大村巌、後藤)だったのは素晴らしい偶然だ。そのあとカモメの窓口に走って来場ポイントをつけてもらう。先日福岡で付けてもらったので、これでポイントが5となりシルバーのピンバッチをもらうことができた。この辺は夏休みのラジオ体操スタンプに近い物を感じるのだが私だけだろうか。

また、並んでいるとき周囲の人にもさりげなく会話の中でS指定席を勧めておいたのだが、それが功を奏したのか、いつもは空席ばかりなのに今日に限って結構埋まっていたS指定席。ではあるが、結局この日は結局満員御礼の表示は出なかった。実際8〜9割の入りで、空席自体は探せばすぐに見つけられた。

試合開始まで時間があったので球場の近くでお茶を飲んで一息つく。普段ならない行動パターンなのだが、ここは2人の要望に素直に従った。試合開始1時間ほど前に戻ってきて、席に着く。バックネット裏の、ちょうどネットが邪魔にならない良い位置だった。今度からS指定を買うときはここを番号で選びたいくらいの好位置だった。

席に着いて落ち着いたところで、よしたにさんが来られているということなので外野へおじゃまする。挨拶をして、今日の試合について色々話したあと、事のついでとスタメン発表までとどまる。帰途、小坂弁当を購入して席に戻ると、おふくろも伯母もおらずバッグもない。何事かと思ったがどうやら球場見物に行ったらしい。戻ってきてから、ノートパソコンの入った私のバッグが盗まれてはと思い持っていったと聞いたが、せっかく携帯があるのだし電話してくれと思ってしまう。このへんはジェネレーションギャップというものだろうか。

どうだった? と聞くとまずなにより子供の多さに驚いていた。ファンクラブに入ってしまえば自由席は通年タダなので確かに多い。しかし野球場ってそういうモンだと思うのだが、世間一般のイメージはどうやら違うらしい。

話が後先になってしまったが、スタメンは以下の通り。
先攻のライオンズ。1番ショート松井稼頭央、2番ライト小関、3番レフト貝塚、4番ファーストカブレラ、5番DH和田、6番センター宮地、7番サード平尾、8番キャッチャー伊東、9番セカンド高木浩之、ピッチャー後藤。

後攻のマリーンズ。
1番ライト諸積、2番センターサブロー、3番ファースト福浦、4番DHボーリック、5番レフトメイ、6番セカンド堀、7番サード初芝、8番キャッチャー清水将海、9番ショート小坂、ピッチャーミンチー。

ライオンズ打線はとにかく1,4,5番が怖すぎる。全員30本以上打っており3名でマリーンズのチーム本塁打数を楽々と凌駕する。この3人を抑えなければ胴上げ阻止など絵空事になるだろう。一方のマリーンズだがM1の試合にはここまで5連勝という訳の分からないジンクスに頼るしかない。解雇確定のボーリックが4番に座っているのにはいささか違和感があるが…。見渡せばレフトライト共にみっちり入り、どちらも負けじと大声援。最高の舞台は整った。さぁ、試合開始だ。

1回表。
松井ライトフライ、小関ファーストフライ、貝塚センターへの打球は難しいところへ行ったが、サブローランニングキャッチで無事チェンジ。ミンチー、テンポのいい投球。初回を無事抑えたのは大きい。なによりランナーを置いてカブレラに回さなかったのは今後に響いてくるはずだ。そして、間近で見ているからだろうか、普段からとても大きいミンチーが今日はより大きく見えた。

1回裏。
諸積レフトファールフライ。サブローセカンドフライ。福浦空振り三振。こちらも三者凡退。好ゲームになりそうだ。

2回表。
この回の先頭は、ここまでホームラン52本を打っている稀代のスラッガー、アレックス・カブレラ。ミンチーはポンポンとストライク2つ取った後、狙い球を絞らせずボール球を織り交ぜるがカブレラもさすが、ストライクのコースは巧くカットして粘る。そしてフルカウントからの8球目、カブレラはバットを折りつつもボールを外野まで飛ばした。さすがにスタンドへは届かなかったものの、とんでもないパワーだ。三塁線を越えた飛球はレフトファールフライでアウトだが、これはメイ(にしては?)のナイスキャッチの賜物でもあった。今日はみんな、気合いが入っている。

和田ファール3つのあとの5球目をファーストファールフライ。宮地はじっくり見ての9球目を綺麗に弾いてライト前ヒット。続く平尾をセンターフライに打ち取りようやくチェンジ。点も取られて無いどころかヒットは一本しか打たれてないのに28球も投げている。こういうところにも西武の恐ろしさを感じた。

2回裏。
ボーリックが打席に入ると、「ボーリック、ボーリック」とジャンプするライトスタンドの面々。それを見てはしゃいでいるおふくろ。「バラエティに富んでていいわねぇ」とのこと。当のボーリックは粘ったものの見逃し三振。メイの初球攻撃はショート松井の頭上を越えてレフト前ヒット。「GO D・メイ GO D・メイ」は次の機会となった。堀はよく見てフォアボール。このころからおふくろはマリーンズに有利な展開になると喜び始めた。完全に雰囲気に染まったようだ。

そして、初芝が打席へ。この時95年の打点王とかミスターロッテとかそういう話を一切抜きにして「俺に似てる」という紹介をしたため、なんか妙に親近感を持ったようだ。また座っている席が、似ていることをきっちり確認できる好位置だったのも幸いしたようだ。肝心の初芝は5球をファールして粘るも空振り三振。清水将海ツースリーからセカンドフライ。チェンジ。常にはない良い粘りに、期待を抱いた。

3回表。
先頭の伊東、あっさりサードライナー。続く高木浩之の打球は三遊間を抜けたかと思ったが小坂が捕まえた。送球も及ばなかったが、こういうガッツが嬉しい。これで1死1塁。打順トップに帰って松井。3割30本30盗塁の松井。ボール、ボール、ストライク、ボールと来て、フォアボールかと思った瞬間、松井のバットから快音が聞こえた。レフトへと飛んだ打球はツーベース。打球を追ったメイの動きが良くなければ高木はホームインしていただろう。かくして状況は1死1,3塁に変わった。

そして3割バッター小関が登場。犠牲フライでも1点の場面だけに、不安が高まる。ボール、ストライクと来てファール2つ。そして次の球、バットは空を切る。空振り三振。ツーアウト。これでかなりホッとした。なおも打席に立つのは規定打席には不足ながらもこれまた3割を打つ貝塚だが、外野に打たせてもダメという場面に比べたら気は楽だ。ミンチー期待に違わずセカンドゴロに打ち取り、堀が捕って丁寧に1塁へ送球。チェンジ。いい。マリーンズ、いい。

3回裏。
小坂、ボールワンのカウントからフルスイング。火を噴くような打球に騒然の場内。ホームラン性の打球はライトフェンス直撃の悠々スリーベース。打球の鋭さと足の速さに目を奪われるおふくろ。さもあろう。打順はトップにかえって諸積。外野フライか深めの内野ゴロが待たれる場面だが、気負いの見えるスイングで空振り三振。これで1死3塁。そしてサブロー、4球目を打ってセカンドへのゴロ。やや高めにバウンドしたのと小坂の俊足が相まって、高木はホームをあきらめファーストへ送球。小坂ホームイン。一塁側、拍手喝采。形はどうあれ大きな先取点が入った。L0−M1。福浦はファーストゴロでチェンジ。

4回表。
カブレラ初球を打ってショートゴロ。和田、ノースリーから打って出てファーストフライ。宮地フォアボール。ミンチー、この試合初めてのフォアボール。ちょっと球数の多さが気になり出す。平尾もフルカウントになったが、サードゴロ。初芝無難に捕ってセカンド送球。チェンジ。

4回裏。
おふくろと伯母は「ちょっと球場ぐるっと回ってくる」と席を離れた。何を見つけてくるのか、ちょっと楽しみだった。ボーリック3球三振。メイも2球目を打ってセカンドゴロ。淡々とした感じだ。そして堀。いい粘りを見せてフルカウントで6球目、ファールがバックネットを越え、壁面にぶち当たる。ボールはそのまま落下し、私の隣の席へと。おふくろがいないのが幸いした。いたら直撃は免れなかっただろう。さらに幸いなことに、私は球場で初めてボールを拾うことができた。係員がやってきて安否を尋ねてくれたのだが、嬉しさに舞い上がってなってしまいテキトーな受け答えをしてしまった。ここは反省。堀は結局2打席連続となるフォアボール。

そして。2000年、やはりM1で迎えた対ダイエー2連戦、その時見事胴上げを阻止した功労者の1人である初芝がバッターボックスに。先ほどの打席も、結果こそ三振だったがよくボールに食らいついていた。場内、高まる期待。後藤、2球放ってカウント1−1にしたあとにファーストへ牽制。これがカブレラのグラブに収まらずファールグラウンドを転々とする。堀は一気に三塁へ。勢いを増すライトスタンド。

そして1球ボールのあとの4球目、ゆるい球を巧く捉えて初芝の打球は三遊間を抜けた。レフト前へのタイムリーヒットとなって1点追加。L0−M2。清水は空振り三振でチェンジだが、M1の試合には強いというジンクス以上には根拠のない自信が回を追うごとに不思議と厚みを増していく…。

5回表。
帰ってきた2人に、得々とした表情で先ほど拾ったボールを見せる。伊東サードゴロ。高木ショートフライ。ツーアウトで迎えるは、先ほどツーベースを打たれた松井。ミンチー慎重になったか、ストレートのフォアボールで歩かせるも小関を3球三振に切って取る。ミンチー、安定してきた。

5回裏。
小坂レフトフライ。諸積センターフライ。せっかくの俊足も打ち上げてばかりでは意味を為さない。サブローも打ち上げたが、こちらは飛距離があった。レフトフェンス直撃のツーベース。2死2塁。チャンス到来で福浦、高まる期待。しかし惜しいかなレフトフライでチェンジ。

6回表。
貝塚カウントツーツーからファール、ファールで粘ったあとセンター返し。小坂懸命に追うも三歩及ばずセンター前ヒット。この試合初めてランナーを置いた場面でカブレラに回った。カブレラ、またも初球を打って今度はショート後方のギリギリ難しいところへフライが上がる。どうだ? と思ったらサブローが追いついた。ランナー貝塚慌てて戻る。しかしこれがワンバウンドの捕球であり、サブローがセカンドへ送球し、世にも珍しいセンターゴロ達成。

1死1塁。和田はカウントワンスリーから打って出てサードゴロ。初芝溌剌とさばいてセカンド送球。5−4−3の併殺となり、チェンジ。今日のマリーンズ、そしてその中でも特に初芝は見応えがある。ずっとマジック1のまま試合させたいという思いに駆られた。

6回裏。
ボーリック、初球攻撃はあわやホームランのフェンス直撃ツーベース。しかしつくづくこの球場はフェンス直撃が多い。ホームラン性の弾道でも手前で急に勢いを失う。上空で謎の気流が渦巻いているんではないだろうか。さぁ、チャンスで打席にはいるのは、ここまでチーム1の成績を残すメイ。こちらも初球攻撃で、高めのストレートを強引に持っていった。その打球は大きく上がってライトへ。小関追う。懸命に追う。何とか追いつきグラブ差し出すもボールを収めきることができず、こぼれたボールは転々と。その間にボーリックは悠々ホームインし、打ったメイは一気にサードを陥れた。何とメイのスリーベース! L0−M3。

そして無死3塁。今日2四球の堀はこの打席もじっくり見て、「またフォアボールかな?」と思ったら6球目を好打。レフトへの大きな打球は、貝塚に捕られるも飛距離十分。犠牲フライとなってさらに1点追加。L0−M4。もうイケイケ状態。

そして登場するは本日絶好調の初芝。ランナーがいないのが実に惜しい。1球目はワンバウンドして後ろへ逸れるボール。2球目は外角変化球でストライク。3球目は落ちる球を見逃してボール。じっと何かを待つような姿に期待高まる4球目、場内に快音が響いた。私はこの時、インパクトの瞬間からセンターバックスクリーンを直撃するまで全てをこの目に捉えることができた。その感動は、もう言葉にならなかった。「すげー」とか「うぉー」とか、そういう意味を為さない感嘆ばかりを口にしたことだけ覚えている。

隣の2人も拍手拍手、ただ拍手。野球を知らなくても、野球は楽しめる。そんなことを教えてくれた初芝は、やっぱり最高だ。本人曰く「練習でも出ない」15号ソロアーチでさらに1点追加。L0−M5。続く清水と小坂は共にセンターフライでチェンジ。小坂のは惜しかったが、宮地のランニングキャッチに阻まれた。

7回表。
プレーの前にライオンズの応援歌が流れる。それに合わせてみっちり入ったレフトスタンドから大音量で歌声が聞こえた。対戦成績その他、あらゆる要素を考えて明らかに異常であるこの展開、ライオンズファンはどう思っているのだろうか…。西友でパートをしているウチのおふくろによると、優勝の可能性が生じた日からセール用の商品を仕入れており長持ちしない物などはセールを待たずに安売りしてしまうとか。そういう損失は結構バカにならないのだろう。そのような事情を抱え心穏やかならずに観戦している人もいるのだろうなぁと、この幕間にしみじみと思った。

試合再開。期待を背負った攻撃だったが宮地ピッチャーゴロ、平尾ライトフライ、伊東ショートゴロで三者凡退。得てしてラッキーセブンなんかはこういうモンである。名前の割には点が入らない。

しかして7回裏のマリーンズもこの回から登板の内薗に諸積フォアボール、サブローショートゴロゲッツー、福浦空振り三振と、うまくしてやられてしまい、盛り上がらずに終わっている。

8回表。
高木ツースリーから空振り三振。打順トップに戻ってこの試合、ライオンズで1人気を吐く松井。そして、彼はこの打席も奮っていた。3球目を綺麗に弾き、猛然と飛んでいった打球は左中間を見事に破って本日2つ目のツーベース。1死2塁。チャンス到来に、代打大島が告げられる。出てきたのが「マクレーンじゃないのか?」という疑問こそあるものの、3割バッター小関の交代自体は、ここまで3タコ2三振ではやむなしか。

大島、打ち上げた打球はショート後方へ。ややライナー性だったが、小坂がっちりキャッチ。セカンドランナー松井戻れず、こちらもアウト。一気にチェンジ。良いときにはこういうプレーが難なく生まれる。これが140試合全てでは発揮できないところに勝てない脆さがあるのだろう。

8回裏。
先頭のボーリックはあっさり打ち上げてライトフライ。迎えたメイはここでヒットが出れば猛打賞。ファール、ボールで迎えた3球目、大きく上がった打球は失速することなくマリーンズファンで真っ白なライトスタンドへ一直線。21号ソロはとどめの一撃か。L0−M6。ライトスタンドはもうお祭り騒ぎである。おふくろ&伯母も大はしゃぎ。堀、これまでとはうってかわっての初球攻撃はサード真正面のゴロ。初芝もいいスイングだったが転がるコースが悪くショートゴロ。チェンジ。

9回表。
完封ペースのミンチーに交代のアナウンス。ここまで球数多く投げてきたため止むなしであろう。さらにいうと最多勝の目があるため、なるべく登板間隔を短くしたいという事情もあるであろう。さて、ここは点差が開きすぎてセーブのつかない場面。連続セーブポイント記録更新中である“マリンの最終兵器”小林雅英は出せないのだからコイツしかいない。

『ピッチャーミンチーに代わりましてシコースキー』。そう! マウンド往復時のダッシュと腕をグルグル回すのがトレードマークのナイスガイ。ブライアン・シコースキーである。今日もグルグルまわしで場内を沸かす。隣の2人も大喜び。見た目にわかりやすいって大事な要素だ。

最終回の攻撃は貝塚から。初球148キロでストライク。2球目はなんと151キロだが、貝塚巧く当ててファール。シコースキーもまた他の選手と同様、このシチュエーションがプラスに働いているようだ。いつもに増して球が走っている。3球目も149キロ。これは外れてボール。そして4球目、なおもストレート! 貝塚のバット空を切り空振り三振。

さて。分かりきった話で恐縮だが、ボールというのは速い球ほどバットに当たったとき遠くへ飛ぶ。このシコースキーの快速球をあのカブレラが当てたらどこまで飛んでいくのか、というのは興味のあるところだった。そしてその結果がいよいよ眼前で繰り広げられようとしている。イヤ、別にシコースキーが打たれると確信していたわけではないのだが、ここまでくれば勝敗にも関係ないし、せっかく来てくれた西武ファンにもなにか来た甲斐というのが感じられなければと思ったもので。

シコースキーは、この稀代のスラッガーにも変わらずストレートを放りつづけ150キロ台を連発する。その3球目、カブレラはついにボールを捉えた。弾丸ライナーという古びた表現が真実味を帯びた。確かに当たった瞬間は見たのだが、打球が速すぎて途中で見失ってしまった。打球は美術館の看板を直撃したという140メートル弾。集まったライオンズファンの溜飲をわずかに下げる53号ソロホームラン。ここまでの経過を全て吹き飛ばしたかのように、この時の球場のどよめきには賞賛と驚嘆のみがあった。今のはカブレラを褒めねば仕方ない。というか、堂々褒めた。おふくろも伯母も感嘆の声。繰り返しになってしまうが、我々は本当にいい試合に来た。

シコースキー、これで動揺したのか和田にストレートのフォアボールを与えてしまう。1死1塁。代走赤田。そして迎えた宮地の打球は普通のサードゴロだった。しかし初芝の魅力はここでも炸裂した。バウンドにあわせきれず後ろへ逸らしてしまう。満場、沸く。「ああ、やっぱり初芝だよ。見に来てよかったよホントに」とおふくろと伯母に興奮して語りかけた。皮肉でも何でもなく、私はこういう初芝が大好きなのである。こうなるのがイヤなら初芝に代えてとっとと守備固めとして渡辺正人あたりを出しておくべきである。初芝がきっちり記憶に残る選手なのは、こういうエラーがあるからなのだろう。

上記のような理由からかそれとも点差のこともあってか、どこからもブーイングが聞こえてこなかった。これで1死1,3塁。今のプレーの余韻がなかなか醒めぬ中、平尾がバッターボックスに。初球をあっさり打ってショートゴロ。小坂も持ち味の堅実さを発揮して6−4−3でダブルプレー。試合終了。「よくショートへ打たせた!」と誰かが褒めていた。同感。伝説はやはり生きていた。マリーンズはM1試合の連勝をこれで6とした。

ヒーローインタビューは8回をゼロに抑えたミンチーではなく初芝だった。確かに今日はヒーローという感じなのだがさっきのエラーがあるので、むしろお立ち台と言うよりも罰として立たされているような感じがしてしまう。どことなく本人の笑顔も硬い気がしたし。それにしてもヒーローインタビューの表情まで分かるこの位置、素晴らしい。しかし初芝、〆の一言が「最後に変なプレー見せてスミマセンでした」なのがもう最高。

初観戦にしてマリーンズの持ち味を全て堪能できたおふくろは幸せだと思う。本人曰く「強運の持ち主」らしい。今日の私のラッキーもそのおこぼれかも知れない。やはり、また連れてこよう。

L1−M6
勝・ミンチー 13勝13敗
敗・後藤    7勝 2敗

翌日へ

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