8月24日 ダイエー−ロッテ
(福岡ドーム)

(京都府・ふさ千明)

福岡ドーム初観戦

夜勤明け。この日は常にも増して疲弊した身体を引きずっての帰宅となった。一寝入りする前に、とりあえずパソコンを立ち上げてメールチェック。ネットにつないだついでにマリーンズの公式サイトを見てみると、今日はビジター応援デーらしい。せっかくなので行ってみようかと思ったが、今日の試合は関西ではなく福岡。「福岡ドームかぁ‥」遠いというのもあるが、それ以上にチケットの問題がある。かなりの入手難であるということは研修中に福岡出身の同期から事あるごとに聞かされてきた。それでもモノは試しと券を扱っているローソンチケットに電話してみることにした。

「本日の試合ですか?」
「はい」
「外野指定は完売ですがSやAならまだ十分残っております」

意外や意外。そういうことなら問題ない。これも何かの巡り合わせだろうと、あっけなく福岡遠征が決定する。近所のローソンで運良く内野B指定席を入手。そのまま最寄り駅に行き京都まで出る。のぞみ11号に乗り、一路博多まで。車中でぐっすり寝たおかげで疲れもだいぶ取れた。

16時前には博多着。そこから直通バスで福岡ドームに入ることにした。小銭の出し入れが面倒なのでカードを買う。今度はいつ使うことになるのか…。乗ったバスの行き先表示に“都市高速”と書いてあるので何だろうと思ったら、途中からバスは高速に入った。普通の路線バスなのに珍しいなあ、などと思っていると「マリンメッセ福岡」という行き先表示のバスとすれ違い、一瞬千葉マリンに来てしまったのかと焦る。

球場着。バスから降り立ってみると、なぜだろうか初めて来たような気がしない。濃密な野球の空気に懐かしさすら感じる。不思議な空間。とりあえずまだ試合開始まで時間があるので、近くにある巨大ゲームセンターのバッティングコーナーで一汗かく。バーチャルピッチなのはいいが投げているのが上原だの桑田だの。ご当地ホークスはどうした?! と思ったら一人篠原の名前だけがある。せっかくなのでこのケージで打つ。いつもの変則スゥイングで振り回すこと20球。あんまり当たらなかったが、まぁいい。20球400円は高い気もしたがそれなりに堪能できたので良しとする。

そのあと、球場へと戻る道すがら、駐車場で沢山の大型バスを見かけた。それが九州各地はおろか山口県からも来ていたので往年の西鉄ライオンズの逸話を思い出した。今より遙かに道路事情の悪かった昭和中期、ライオンズ見たさにバスを仕立てて何時間も何時間もかけてはるばる平和台を訪れたという話を。以前祖父の墓参りをしたときお世話になった祖父の友人の「直で稲尾を見たがオイの自慢タイ」という話を。もう今度は失わないで下さい。しみじみそう思ったとき、一瞬風景がモノクロになりかけたが、平和台は見えなかった。

そのあと、ぐるっと球場を一周。海が見えたこともあり、さらに千葉マリン気分が増す。途中、インド人とおぼしきコックが店の前に立っている謎のカレー屋があったが、諸般の事情で次回チャレンジとした。

とりあえず中へ入る。中ではマリーンズファンクラブ会員用ブースがありそこで来場ポイントの加算とピンバッヂ&缶バッヂの配布をやっていた。ピンバッヂはズーくん、缶バッヂは福浦だった。もらって席へと移動する。初めてだろうがなんだろうが野球場なので本能的にどこへ行けばいいのか分かってしまう。指定座席へ座って、持参のノートパソコンを開きここまでの経過を記録したりする。

そのさなか「白いボールのファンタジー」が聞けた。この曲が好きでたまらない私にとっては、非常に嬉しいことだ。もしかするとコレがないからセリーグの試合見に行く気が起きないのかも知れない。このあと、今夜の宿が全然決まっていないことを思い出し、ホークスファンのいわちゃんさんに電話する。

「すいません、福岡での定宿を教えていただけませんか?」とうかがうと、快く教えていただき、事のついでと二軍の本拠地雁ノ巣球場への行き方も教わっておいた。翌日行ければ行きたい場所としてはナンバーワンなのだが、かなり行きづらいとのことで少々悩む。そして、『そう言えばねぇ』と、いわちゃんさんがおっしゃるにはダラ球会のよしたにさんがこちらに来て居られること。慌てて出てきた上に日程をすっかり勘違いをしていたこともあり連絡を取っていなかった。

するといわちゃんさんが中継して下さり、外野自由席のよしたにさんと合流できた。この日はJCB夏休みゲームとかで試合前にグラウンドでイベントが。そこにマーくん登場して何やら踊っている。ああ、久しぶりだよう、と感慨にひたりながら眺める。周りを見ると千葉マリンや神戸GSや大阪ドームで見たことがあるような…という人たちが。でも多分私もそう思われているのだろう。

試合開始も間近になり、オーダー発表になると黒色軍団が動き出す。私も、立ち上がった。

マリーンズのスタメン。1番ショート小坂、2番センターサブロー、3番ファースト福浦、4番DHメイ、5番サード初芝、6番ライト立川、7番レフト諸積、8番キャッチャー清水将、9番セカンド渡辺正人、ピッチャー渡辺俊介。

ホークスのスタメン。1番センター柴原、2番ライト村松、3番レフトバルデス、4番サード小久保、5番ファースト松中、6番キャッチャー城島、7番DH大道、8番セカンド井口、9番ショート鳥越、ピッチャー斉藤和巳。

どう贔屓目に見てもマリーンズのほうが見劣りする。どうやって勝つんだ…と頭を抱えざるを得ないような歴然とした差を感じた。クリーンナップだけでこっちのチーム本塁打と並ぶようなダイハード打線相手にどう戦うのかマリーンズ。それと、秋山がいないのが残念だった。日本シリーズで見て以来、ずっと見ていない。この時はまだ引退表明前だったが、そういうことを越えて私は秋山のプレーが見たかった。「コイツにかかると福岡ドームの外野も狭い」と称されたその守備、その打撃。それをまた見たかったのだが。

グチグチ考えている間に始球式も終わり、斉藤和巳がマウンドに上がっていた。申し訳ないが生で見るのはこれが初めてだ。縁がなかったというより、私があまりホークス戦に来なかったためだろう。さて、どんなタイプだったか…。

1回表。小坂は2球目を打って出てライトフライ。サブローあっさり見逃し三振。福浦フォアボールで出たが、メイセカンドゴロでチェンジ。あまりパッとしない出だしである。ランナーこそ出たものの、斉藤のピッチングに押されているように感じた。コントロールは決して良くないのだが、ストレートの思いっきりがいい。苦戦の予感。

さて。一方のマリーンズ先発渡辺俊介がマウンドに上がる。俊介の登板を見るのはこれで何度目だろう。そんなには見ていない。2回目か3回目
か? 「地面につかないのが不思議」とまで称されるあの地を這うアンダースローは何度見てもいい。また、スピードガン騙しのストレートは表示120km体感140kmとも言われる。見ているだけで楽しいピッチャーの一人だ。

1回裏。柴原セカンドゴロ、村松フォアボール、バルデスセンター前ヒットで1死1,3塁。小久保フルカウントからの7球目をレフト前へ運んで早々とホークス先制。M0−H1。こちらも早々と頭を抱える。この1点が大量失点の端緒であると考える方が自然ではないか。松中の打球はファーストへ。福浦捕ってセカンドへ。3−4−3でダブルプレー。ピンチを脱した。

2回表。この回先頭の初芝、井口の頭を越える打球を放ちライト前ヒット。ピンチのあとにチャンスあり! 次代の主砲立川に期待をかける。カウントワンツーからの4球目、打球はショートへ。6−4−3のダブルプレー。「それじゃあ初芝と同じだろうが」とぼやく間に諸積三振に倒れ結局3人で攻撃終了。

2回裏。城島初球攻撃はショートゴロ。大道打ち上げてライトフライ。井口の打球は高く上がってサードのファールゾーンへ。マリンスタジアムなら悲鳴モノのシチュエーションだがここではこともなく無事アウト。三者凡退にほっと一息。

3回表。清水将海セカンドゴロ。渡辺正人がフォアボールで出て1死1塁。打順はトップに返って小坂。「転がせー」の念も通じずレフトフライ。続くサブローもサードゴロでこの回の攻撃もあっさり終了。

3回裏。鳥越の打球を初芝が好捕するも送球が間に合わず内野安打。惜しい。この場合の「間に合わない」は投げた球が遅くて間に合わない、だった。柴原バント失敗で1死1塁に変わり、村松のピッチャーゴロはセカンドへ送球。フォースアウトで2死1塁。バルデス初球攻撃も実らずショートフライ。俊介、粘りのピッチングで切り抜けた。

4回表。福浦、初球攻撃。打球は上がるもフェンスには届かずレフトフライ。続くメイはフルカウントまで持っていったがファーストゴロ。初芝センターフライでクリーンナップも為す術なく三者凡退。期待くらいはさせて欲しいのだが‥‥‥。

4回裏。先頭の小久保はレフトフライ。続く松中、2球目がデッドボール。怪我などはなかったようでこちらも安心。城島のファーストゴロはセカンド転送。前の回の再現で2死1塁。そして続く大道の2球目、城島が走ってきた。清水将海久々に強肩を発動。悠々アウトでスリーアウト。なんか儲けた。こういうのを大事にしてほしいとつくづく思う。

5回表。立川の打球はセンター柴原の頭上を軽々と越えた。普通なら飛距離十分の同点ソロ弾なのだがここはグリーンモンスターのいる福岡ドーム。フェンス直撃ツーベースとなった。惜しい。諸積送って1死3塁。清水将海ボールツーからの果敢攻撃はジャンプする松中の頭上をかすめライトへ転がった。立川生還し同点タイムリー! M1−H1。歓喜のレフトスタンド(の一角)。なおも1死1塁。しかし渡辺正人のショートゴロは6−4−3のダブルプレー。デジャブと疑う、同じ事の繰り返しでチェンジ。嗚呼。

5回裏。大道打ち直しの打席はタイミングが合ってない感じのサードゴロ。やはりアンダースローは打ちにくいのかな、とか思っていたら井口が綺麗に弾き返してセンター前ヒット。「バッター鳥越でランナー井口だからゲッツー取りにくいしなぁ。ここはランナー釘付けが最優先かな」などと言っていたら、鳥越がおあつらえ向きにセカンドゴロ。正人のダッシュと小坂の転送、どちらが遅れてもダメだったこの絶妙の連携でゲッツーが取れた。この精妙なプレーに精一杯の拍手を送った。

このチェンジの間グラウンド整備となり、隙をついてカレーを買いに行く。通路で売っていた各種選手弁当にかなり惹かれたが、ナイルカレーと言うのがあったので振り切ってそれにした。ナイルと言うことはエジプト風カレーなのか。食べてみたが、うーん、求めている路線の違いを感じた。私はあんまりオススメはしない。

また、この頃気がついたのだが、下段の指定席にいる子供数名が試合を見ずに我々を見ている。やはりというか何というか応援がめずらしいのだろうか。「コレをきっかけにマリーンズファンになってくれるといいなぁ」と思った。

6回表。小坂ライトフライのはずが村松こぼしてラッキー出塁。サブローはバントの構え。何度も悪夢を見てきた身としてはスチールかエンドランを提唱したかったが無事に決まった。1死2塁。期待の福浦は空振り三振。どうした首位打者! そして4番のメイ。ここまでノーヒットだがチーム最多の17本塁打を稼いでいる。期待して精一杯の声援。ボール一つあとの2球目、鋭いスイングから放たれた打球はライト前ヒット。小坂快走ホームイン! なんと逆転でM2−H1。思わぬ展開に感極まりかけるがまだ早い。でも「やればできるじゃん」と浮かれてしまうのは、これはもう仕方ない。

2死1塁と変わり、初芝への初球を城島が後ろに逸らす。ランナーのメイはセカンドへ。ホークス、弱り目に祟り目。こう言うときにはめっさ頼もしいのが兄者・初芝である。タイムリーを期待する。なので粘ってのフォアボールはかえってもったいない気がした。「ここでとどめさして欲しかった」と口にする間もあらばこそ、先ほどのフェンス直撃ツーベースも記憶に鮮烈な立川が降臨。2死1,2塁。スリーランなら一気にリードは4点! などという妄想はファーストフライであっけなくしぼむ。いつもながら切ない瞬間である。チェンジ。

6回裏。勝ち投手の権利が入ったからなのか、俊介降板し、川井が出てきた。これはちょっと待って欲しかった。ここまで見ても、ヒットはあっても連打はない。まだまだ行けるはず。前日に中継ぎをつぎ込んでいたことも考えてここは続投では…。早速の山本功児監督のマジカル采配か(マジカル采配:マジック=仰木采配に似てマジックに非ずと言うことで命名)。川井の登板に不満があるとすれば早すぎるということだけだ。

柴原センターフライ。村松に代打が告げられるが、これは先ほどのエラーのお仕置きか。出口が出てきて「うわっ、懐かしい」と思わず呟いた。貞治コレクション(通称貞コレ)と称されるもと巨人組の一人。巨人時代は何度か二軍戦では目にしたのだが、一軍で見るのは、それもバッターとして見るのはもしかして初めてかも知れない。この辺、早実ならぬ情実采配とか言われるところだが、これがセンター前ヒットとなって成功。続くバルデスはセンターフライに打ち取るも、次が先制タイムリーの小久保ではまったく息がつけない。案の定小久保にはストライク一個取るのがやっとでフォアボール。2死1,2塁と冷や汗ものの展開も松中レフトフライでヤレヤレ。

7回表。「We Love Marines」を久々に歌う。その昔はおこがましい応援歌として「いざゆけ若鷹軍団」と双璧だったのだが、あちらが優勝して以来取り残されてしまった。そんなことを思いつつ歌う。マジカル采配が炸裂しているので、できればこの辺でもう1点欲しい。頼むぞ! 期待を背負った先頭バッター諸積、ファーストゴロ。そして清水将海の打球は良いところに転がったが鳥越の好捕に遮られショートゴロ。これは鳥越を褒めねば仕方がない。渡辺正人ファーストゴロでチェンジ。代打出すならこの回じゃなかったかと思うのだが、この辺もマジカル采配の一環なのであきらめるしかない。切ないなぁ。

7回裏。福岡ドーム初見参なので、球場とホークスに敬意を表して「いざゆけ若鷹軍団」も歌う。佐賀で健在の祖父の友人の分も込めて。マジカル采配はとどまるところを知らず、川井に代えて小林宏之。早い。早すぎる。こらえられんのか。まだ川井で良いじゃないか。ピッチャーは有限だぞ。そんな空気で満ちるレフトスタンド。先頭城島の打球は初芝の横を通過してレフト前に。取れない打球ではなかったような気もしたが‥‥‥仕方ないかなぁ、アレは。

続く大道に王監督はバントを命ずる。1点が欲しいということだろう。さすが王采配。しかしバントならバントで大道を引っ込めバントのできる代打を送るべきだろうに、そのまま大道にやらせるからピッチャーフライになってランナーそのまま。1死1塁。とは言え次打者井口の4球目で清水将海がボールを後ろに逸らし、結局同じ事になったが。しかも井口のセカンドゴロでランナーはサードまで進んでしまう。苦しいときのマジカル采配、藤田を投入してくる。8回と勘違いしているのだと思うしかない。こんなにつぎ込んで8回はどうする気なのか。「シコですかね?」「それしかないでしょうけど、ダメだったときのこととか考えてないんでしょうね」シコとは右腕グルグルまわしでおなじみになったブライアン・シコースキー。マリーンズのとっといて良かったピッチャーその1。藤田は鳥越を歩かせ我々の頭上に暗雲を呼んだが、柴原を空振り三振に切って取ってそれを払う。心臓に悪い展開が続く。

8回表。守りがギリギリなので点を取って楽になるしかない。声援も「何とかしろよー」と、もはや命令形である。このままでは心臓か胃に穴が空きそうだった。斉藤和巳に代わって“課長”渡辺正和の登板。彼は日本シリーズの時に園川と比されていようだが、園川フリークの私に言わせればこんなに安定したピッチャーのどこが園川なのかと小一時間問いつめたい気分だった。チームのために黙々と耐えて投げたベテランとして園川の名前を出してくれるのは嬉しいのだが、“投げてみるまで分からない”というのは園川が園川たる大事な要素なので。園川を高く評価してくれているという点非常に嬉しかったし、左腕でベテランで背番号28というのはかなりポイントをついてはいるのだが。やはりツボを外してはイケナイのだ。

閑話休題。先頭の小坂、初球攻撃はライト線破ったツーベース! 歓呼の叫びは屋根もつんざこうかという勢いだ。ピンチのあとにチャンスあり! さっきの成功を受けてか、サブローに送らせようとする。それよりさっきの大道を見てないのかと言いたいのだが、案の定1球目を上げてしまう。ファールになって一安心だが、怖い。2球目が何とか成功。かなり危なかったが、成功は成功。1死3塁でクリーンナップ! 1点くらいは期待しても罰は当たらないだろうが、結果は福浦ピッチャーゴロとメイ空振り三振。チェンジ。

8回表。藤田続投。バルデスまで投げさせてそこからシコースキーだろう、というのがレフトスタンドもっぱらの噂だった。出口に初球攻撃され、右中間を破られる。無死2塁。バルデスレフト前ヒットだが、出口は3塁ストップ。バルデスに代走大越。そして迎えるバッターは小久保。事ここに至ってピッチャー交代。「ブライアンも気の毒に…こんな場面になってから投げさせられてもなあ」という空気が『ピッチャー山崎健』で破れた。「ダメだ」即座に私はそう言った。いっそコバマサ投入でも良いくらいの場面で投げさせるピッチャーではないとか何とか言う以前になぜシコースキーではないのか? この時私は敗戦を覚悟してしまった。

そして山崎健の放った初球、パスボールで出口生還。脱力する展開で同点になった。そして2球目。ど真ん中に投じられた球は大きく上がってこちらにやってきた。小久保のツーランでホークス逆転。4番が4番らしい働きの本日3打点。M2−H4。松中フォアボール。死んだサカナのようだった私の目は、城島の初球送りバントで見開くことになった。こだわりのヒト王貞治らしいと言おうか。ウチなら立派に4番がつとまるバッターでも、送らせるときは送らせる。素直に城島に打たせた方がこっちとしては怖かったのだが。これで1死2塁となり、そうまでして期待した大道の打球は、きっちりレフトのいいところへ飛ぶ。ここでもう1点入ったところで大差ないと思っていたが、次の瞬間私はその考えを恥じた。諸積が快足を飛ばしてのナイスキャッチ! すかさずセカンドに送球してダブルプレー! 諸積に脱帽最敬礼。まだあきらめていない。そう。あきらめない。あきらめないんだ!

9回表。ホークスのピッチャーはペトラザかと思ったが、岡本だった。この時は「ああ、岡本なんだ」程度であったが、あとで思えばこの辺の情報の古さが、しばらく野球から遠ざかっていたことを実感させた。初芝三球三振。立川キャッチャーフライ。ツーアウトで現れたのは、先ほどの“あきらめない”諸積。その諸積は、2球目を快打して執念のレフト前ヒット。清水将海に代打佐藤幸彦。「ゆっきひこー」コールを送るレフトスタンド。幸彦、ファール2つ、ボール一つのあとの4球目を打ってサードゴロで万事休すか…いや、打球がいい具合に死んでいる。幸彦懸命の走塁は実ってサード内野安打。2死1,2塁。そして渡辺正人には代打大塚明。スタンドインなら逆転の場面。そして、大塚はそれが可能なバッターと信じている。その期待が大振りを呼んでしまったか、空振り三振で試合終了。M2−H4。

このあと、泊まるかどうか迷ったが、翌日たまった洗濯物を片づけなければならないという実に生活感溢れる理由で帰宅することにした。帰宅すると言っても新幹線はとっくに終電が出ている。ではどうするのかと言えば寝台特急あかつき号に乗るのだ。翌朝には京都に着いているので半日以上使える。地下鉄の駅を目指したが、暗くてよく分からなかったのでタクシーに乗った。この贅沢が実は当たりだった。この乗ったタクシーの運転手さんがコアなライオンズファン→ホークスファンでそれこそ「平和台で稲尾・中西・豊田を見ている」ヒトだったのだ。数々の逸話を聞きながら、博多駅に着くまで20分。その時間は私にとってはまさに至福だった。マジカル采配以外は文句無く満喫できた今回の遠征、次回はもっとじっくり来ようと決めて、あかつきに乗り込んだ。

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