4月19日 ロッテ−オリックス
(千葉マリンスタジアム)

(京都府・ふさ千明)

今シーズンマリンスタジアム初観戦

前日までで4連敗。しかも4連続完投負け。うち3試合は完封。取った得点は犠牲フライの1点だけ。このふがいなさに「これは行かねば」ということになり、朝飯も食べずに出発した。

ちなみに、この前日職場の転入者歓迎会だったのだが、その帰途、新しく来た上司となぜかマリーンズの話になり、オリオンズ時代の優勝の話やら東京球場の話やらで盛り上がってしまった。上司は阪神ファンだそうなのだが不思議とロッテの歴史に詳しく、ジプシーロッテと言われた頃のエピソードなども知っていてちょっとビックリした。それに対し東京球場の逸話で返した私も私だが。最後には「明日行ってこい」と快く送りだしてもらった。しかも当日、自宅を出て最寄り駅で次長に会う始末。なんだか職場づいている。

この日の予告先発はマリーンズが清水直行。ブルーウェーブが小林宏。先日GS神戸で見たのと全く同じだ。直行はここまで3勝0敗で防御率1.80。チームの勝ち星の半分を稼いでおり、「雨、雨、権藤、雨、権藤」ならぬ「負け、負け、直行、負け、直行」状態。そろそろ「留守番エース」と称するのも心苦しくなってきた。これならばジョニーがいても十分肩を並べられる。今日勝てれば本物だろう。心おきなくエースと呼ばせていただきたい。

小林は前回打球直撃の影響から急遽降板したので、今回仕切直し。どんなピッチングになるのか。前回そこそこいいテンポだっただけに、気になる。また、今日は新外国人ホセ・フェルナンデスが見られるのは嬉しいのだが、その代わりにシコースキーが2軍に落とされてしまった。あの腕グルグルが見られないのは寂しい。あと、もし昨日スタメン落ちのオーティズが入れば史上おそらく初の外国人3人打線対決になる。その辺も興味がある。

そんなことを考えているうちに新幹線は東京駅に着き、ここからは京葉線で海浜幕張へ。途中、マリーンズボールパークに寄って、今年度分のファンクラブ入会特典をもらう。

店を出るとちょうどマリーンズ号が出発するところで、最後の1人として載せてもらう。全ての用事をこなしつつ、スムーズに移動ができてラッキーである。球場に着くとファンクラブ特典の入場券を使って球場内へ入り、途中ジョニー黒木弁当改めシチューカツ弁当を購入し、ライトスタンドへ。ダラ球会のよしたにさん&そのご友人と合流。

よしたにさんには今朝方関東地方の天候状況を電話で尋ね、快く教えていただいたのでまずはそのお礼を述べ、そこからはひたすら野球の話。弁当から選手名を外したのは呪いを意識してなのか、と言うことから始まり、連敗への不満、フェルナンデスの評価などなど。土曜ゲームで2時開始のため、ゆったりと無駄話を楽しむ。

私が一番印象に残っているのは、どうせ人工芝を張り替えたのなら、寺社仏閣の建て替え時瓦を奉納するように、ファンがその芝を1枚いくらかで買い、裏に名前を入れてもらえたら楽しかったのに、と言う話だ。次回張り替えるときには登録した住所に郵送してくれるとなお良いのだが。どこかで実現しないものだろうか。

そんなことを一通り話したあたりで、オーダー発表。電光掲示板を見ると、今日の風速センターからホームに8mとの表示があり、今日は投手戦かな、と思ったりした。

<先攻ブルーウェーブ>
1番レフト ブラウン、2番サード 大島、3番DH 谷、4番ファースト シェルドン、5番センター 葛城、6番ライト 塩谷、7番ショート 平野、8番セカンド進藤、9番キャッチャー 日高、ピッチャー 小林。

昨日と比べて大きな入れ替えなく、唯一の変動は3タコだった副島さんを下げ、その代わりに8回その副島さんの代打でヒットを放った塩谷を入れてきたことだ。昨日打線がつながったことが理由だろうが、だいぶん大胆な守備位置であると思う。

<後攻マリーンズ>
1番ショート 小坂、2番センター サブロー、3番ファースト 福浦、4番DH メイ、5番レフト リック・ショート、6番サード フェルナンデス、7番セカンド堀、8番ライト 立川、9番キャッチャー 清水将海。ピッチャー 清水直行。

前日のオーダーとの変化は、サブローのスタメン復帰。2番に入るとなると送りバントの場面も想定されるのだが…心配だ。それとフェルナンデスが4番から6番に。まぁ、妥当だろう。アメリカ→韓国→日本と移籍して、細かな差異に適応するための時間が必要だ。2軍でわずかばかりの実戦経験を積んでそれができたと考える方がおかしい。慣れるまでの間は気楽に下位で打たせるべきだと思う。

その後、「白いボールのファンタジー」が流れて、試合開始。ちなみにこの日は「大多喜デー」で、カモメの窓口前で「忠勝鍋」という名のタケノコとワカメのみそ汁が振る舞われていたのだが、始球式も大多喜町長だった。ちなみにこの人左投げで、大島が律儀に右打席に入っていたのが印象的だった。

プレイボール。

1回表。
ブラウンいきなり初球を打って、ゆるいゴロがセンター前に抜ける。新人工芝は初めて見るが、だいぶバウンドが違う。守備陣の戸惑いがこちらにまで感じられた。大島が送って一死二塁。谷フォアボールで一死一,三塁。立ち上がり、苦しい直行。シェルドンはフルカウントから空振り三振でツーアウトも、葛城にはピッチャー返しを食らい、これが転々として三遊間を抜けてしまう。逆を突かれたフェルナンデス、追いつけない。ゆるいゴロなので、通常以上に悔しさの残る失点。BW1−0M。またも先に点を取られ、天候以上の暗雲が心に立ちこめた。なおも二死一、二塁だが、塩谷を打ち取ってチェンジ。ほっと一息。

1回裏。
小坂、毎度おなじみ打ち上げてサードファールフライ。サブロー見逃し三振、福浦は沈滞ムードを破るライト前ヒットだが、メイ初球を引っかけてセカンドゴロ。連敗の空気、今だ抜けず。

2回表。
この回先頭平野の痛烈なピッチャーライナーを直行ひるまず見事捕球し、アウト。それに気をよくしたか綺麗に三者凡退。

2回裏。
ショート空振り三振で、期待の星ホセ・フェルナンデス登場。昨日は無安打だったが、今日はどうか。「ホ〜セホセホセホ〜セ〜、ホセ・フェルナンデス」と早速応援ができているのがちょっと笑った。他のものからの流用だが。スイングは良かったが、当たらず&前に飛ばずで空振り三振。続く堀も空振り三振で見事三者連続空振り三振。暗雲、さらに増す。

3回表。
ブラウンセカンドゴロ。大島に粘られセンター前ヒットを食うが、谷フルカウントからセカンドゴロゲッツー。直行、粘り勝ち。

3回裏。
立川ストレートを空振り三振。これで四者連続。清水将海、2球目を当ててファーストゴロ。小坂、先ほどの打席と同じく打ち上げてサードファールフライ。打者一巡してここまで工夫ゼロ。一点が重く重く感じられた。

4回表。
シェルドン、葛城と打ち取ってツーアウト。しかし塩谷に技アリのライト前ヒットを放たれ、さらに平野にはサブローの頭を越されるツーベースを打たれて一点献上。BW2−0M。このツーベース、サブローの返球を中継の堀がちゃんと捕っていたら点が入ったかどうかは微妙だったのだが…。その点、悔やまれる。打てないんだったらせめて守備で足を引っ張るのは止めて欲しいものである。なおも二死二塁だが、進藤をスライダーで空振り三振に仕留め、最少失点で切り抜けた。この辺に、エースの風を感じた。

4回裏。
先頭のサブロー、フォアボールで歩く。この時、小林のピッチングが今までとはなにか違うように感じられた。急にテンポが悪くなった。福浦に対しても投げにくそうにしていた。ストライク、ボール、ボール、ストライク。並行カウントになった五球目、打球は真っ白なライトスタンドへ。7メートルの逆風も何のその。伸びて、伸びて、フェンスを越える。主砲福浦の同点アーチ! BW2−2M。

これが暗雲を一気に吹き飛ばす。沈滞ムードが一気に消えた。明らかな上がり目。今のうちにいっとけ! な雰囲気に。さぁ行こうぜ、と4番のメイ、初球のカーブを腰砕けの空振り。気が抜けてしまう。それでも三振はせずショートライナーだったので、まだ雰囲気的にはマシだった。ショート、外の落ちる球をうまく合わせてセンターへ飛ばす。葛城追いきれず、グラブを弾かれツーベースに。

そして、フェルナンデスだ。初球の変化球を、一振り。打球は急角度で上がる。静まりかえる場内。一瞬見失うほど高く上がった打球は、逆風に戻されて、なおそれに負けぬ勢いでレフトスタンド中段へポーンと放り込まれた。逆転ツーランでBW2−4M。今までいたマリーンズの選手とは違う打球に、満場驚愕。とんでもないヤツがやってきた! ライトスタンドのみならず、1塁側は歓喜、歓喜、ただ歓喜。ベンチも総出でお出迎え。ライトスタンド、絶叫のようなホセコール。この一発が見られただけでも、京都から来た甲斐があった! 悔いなし!

堀、立川と倒れてチェンジとなったが、大きな4点が入った。特にフェルナンデスの一発は攻守交代となってもなおさめやらぬ興奮をマリーンズファンに与え、守備につくときにホセコールは地を揺るがさんばかりだった。ちなみにこのあたりで私の喉が枯れた。職業柄大きな声を出すことには慣れているのだが、それでもなお枯れてしまうほどの興奮を味わえたことに私は幸せを感じてしまった。このままだと仕事にならないので困ることは困ったが。それと引き換える価値がある、大きな大きなホームランだった。

5回表。
日高、高く打ち上げてライトフライ。ブラウン、この打席も早打ちでセンター前ヒット。直行、やはり不安定。大島粘ってフルカウントから二遊間への打球、これがセカンドベースのあたりに転がってしまい、6−4−3。珍しくヘルメットをたたきつけて悔しがる大島。

5回裏。
このあたりから、雨がぽつぽつ。幸いにして、居た場所が屋根の下だったので影響なく観戦できた。先頭の清水将海、初球打ちでキャッチャーファールフライ。小坂、またも振り回すが、これがなんとセンター葛城の頭上を越え、左中間のフェンスを直撃する。快足を飛ばして一気に三塁へ。昨年の三塁打王小坂、これが今季初の三塁打! もしも逆風でなかったらスタンドに入っていたであろうと言う打球に、喜ぶ一方で呆然。こんなバッティングがしたかったのか小坂。それで打ち上げてばかりいたのか、とちょっと納得。

これに動揺したか小林、サブローに初球をぶつけてしまう。背中へのもので、怪我等の心配はなさそうだったが、ライトスタンド大ブーイング。石毛監督ここで小林をあきらめ、ピッチャー加藤をコールする。この時私とよしたにさんは「加藤?」「伸一?」というボケをかましてしまったが、やはり強く残ったイメージというのはどうしようもないもので、この後他球場の途中経過をケータイで調べていたときも「西武−日本ハム戦、大島のタイムリーで」と言う部分で背番号11のほうを連想してしまった。

閑話休題。代わった加藤、福浦を空振り三振に切って取る。この4球目でサブローが盗塁しており、これで二死二、三塁に変わる。バッターはメイ。初球のファールを見て、「ん?良いときのスイングだな」と思ったら2球目を見事とらえてセンター前ヒット。俊足のランナー二人とも帰ってこれでBW2−6M。ショート空振り三振でチェンジだが、昨日までの4試合の6倍の点数がこの2イニングで入った。

6回表。
先頭の谷がセンターへクリーンヒット。シェルドンも2球目をうまく打ってセカンドベースの横。これが抜ける直前、堀のグラブに入り、4−6−3。誰もが「いかれた!」と思っただけに、1塁側から惜しみない幸一コール。良いときは、守備までこうなる。葛城の打球は大きく上がってレフトへ。急造レフトであるリック・ショート、マリンの強風に揺れるボールを追っかけて右往左往。行って戻って大慌ての末、無事捕球。チェンジ。ショートの根性あるプレーに、拍手。

6回裏。
ピッチャーは戸叶に代わる。フェルナンデス、堀、立川といずれも快音聞かれず三者凡退。堀と立川はいずれも三振。

7回表。
ブルーウェーブのラッキーセブンと言うことで「♪みはるかす神戸〜」と曲が流れるのだが死んだサカナのような目をした人が多数で一向に盛り上がらないレフトスタンド。ちょっと痛々しい。しかしこっちとしても余裕はない。直行、戸叶に負けじと塩谷、平野を連続で空振り三振に切って取る。特に平野への145キロのストレートは圧巻だった。進藤には代打“ゴッシー”五島が告げられる。レフトスタンドは少ない人数だが、それでも懸命のゴッシーコール。引退した藤井に代わる代打の切り札であり、雰囲気を変える可能性を持った数少ない打者。緊迫した雰囲気の中、五島の放った打球は三遊間。抜けるかと思ったが間一髪小坂が掴んでファーストへスロー。アウトでチェンジ。

7回裏。

代打の五島に代わり塩崎が入りショート。ショートの平野がセカンドに回った。清水将海ライトフライ。小坂ストレートのフォアボール。一死一塁でサブローの打席、初球、小坂がスチール敢行。日高投げられず一死二塁に変わる。サブロー粘るも空振り三振。二死二塁、福浦の場面でブルーウェーブ敬遠策。3番敬遠で4番勝負とは…まぁ、両者の打率比べたら納得の選択なのだが。さらにピッチャーを左の塩谷に代えてくる。先ほどのタイムリーの再現なるか、の期待がかかったが、メイ意地を見せられずレフトフライ。チェンジ。

8回表。
日高、ブラウンと連続で空振り三振。しかし大島に粘られ、歩かせてしまう。二死一塁。そしてバッターは谷。谷の初球攻撃は、マリーンズファンが嘆声を上げるほどの大飛球。レフトへ高く高く上がった。しかしこの高さが災いして風に押し戻され、フェンス手前で失速。レフトフライでチェンジ。

8回裏。
ピッチャーは塩谷から牧野に代わる。牧野、速球をビュンビュン投げ込んで、フォアボール一つ以外は凡退に切って取る。

9回表。
今シーズンまだ完投のない直行には、試練のイニング。マウンドに向かう彼に、せめての支えたれと精一杯の「ナオユキ」コール。しかしその前に最終回なので、守備固め。フェルナンデスに代えてサード渡辺正人。これはいい。しかしレフトのリック・ショートは交代無し。諸積に代えなくていいのか? と思いもしたが、点差もあることであるし、危なっかしいものの何とかこなしてきただけに信じてみるのだろう。裏目に出たらその時に代えればいいとか思っているのだとしたら、ちょっとどうかとは思うが。

先頭のシェルドン、空振り三振。しかし葛城・塩谷に連打を浴びる。一死一、二塁。特に塩谷のヒットはうまく合わせた技アリの一本だった。迎えるバッターは4回にタイムリーツーベースを打たれている平野。しかし交代はない。コーチがマウンドに来たが、アドバイスだけで去っていった。ボール、ストライク、ストライク。そして4球目、渾身のストレートは空振り三振! 喝采のライトスタンド、なおめげないレフトスタンド。

二死一、二塁と変わって塩崎。代打のコールはない。初球、143キロ伸すとレートでストライク。2球目、変化球外れてボール。3球目、塩崎うまく合わせてセンターサブローの前に転がす。セカンドランナー葛城、ホームをうかがうがサブローの返球に慌てて戻る。二死満塁。ホームランが出れば同点の場面で、あと1人打ち取れば試合終了の場面で、ついに直行無念の降板。、

一部で「ロッテにはもったいない選手ナンバーワン」と称される、我らが至宝・リリーフエース小林雅英がマウンドに。「コバヤシ」コールのあと、去りゆく直行に惜しみない拍手。苦しい立ち上がり、そして中盤、ヒット10本を浴びながら2点に抑えた粘投は十分称賛に値する。バッターは日高がそのまま入る。打率は低いがホームラン2本。しかも左バッター。悪くない条件だ。

小林の初球、147キロのストレート、ストライク。2球目、148キロのストレート、同じくストライク。3球目、138キロのスライダー外れてボール。4球目、140キロのスライダー、バットが空を切る。空振り三振、ゲームセット。マリーンズ、連敗脱出! 今日はヒット6本で6得点の効率よさや、フェルナンデスの驚異の一発もさることながら、なによりもさすがの連敗ストッパー清水直行が良かった。調子が悪いなりにちゃんとゲームメイクして8回3分の2を2失点。謹んで「エース」と呼ばせていただきたいと思う。

ヒーローインタビューは4勝目の清水直行と、驚異の大アーチを見せてくれたホセ・フェルナンデス。完投できなかった直行はちょっと苦い表情だったが、それでも最後は笑顔を見せてくれた。「素晴らしいファンのみんなと一緒に一年間、全員でペナントレースを戦っていきましょう」と言い、ホセは「みなさんのために打ちました」と言ってくれて、我々大喝采。その後、毎度おなじみ、ライトスタンド前で万歳三唱して、祭りは終わった。本当に、いい試合だった。来てよかった。こういう試合を見せられてしまうから、マリーンズファンはやめられない。この味を知ってしまえば、離れられない。

前日の酒席である人に「ロッテ、どこがええねん?」と聞かれ「弱いチームですが、たまにとんでもなくいい試合を見せてくれるんで、それがたまりません」と答えたのを思い出しながら、その滅多にない試合を、神戸に続いて見られた我が身の果報に感謝した。直行コール、ホセコールのあと「俺達の誇り千葉マリーンズ」を歌い、三本締めでライトスタンドを撤収し、徒歩で海浜幕張駅へ。

駅ビルの中にあるオランダ家ケーキ店にて、よしたにさん&ご友人と一緒にミニ祝勝会。美味しいケーキを味わいながら野球談義。話は尽きないところだったが、適度に切り上げて撤収。帰途、新幹線の中でパソコンのバッテリー残量と戦いながらこれを書き上げた。心地よい余韻のあるうちに反芻する楽しさはまた格別だった。

BW2 − 6M

勝利投手 清水直行 4勝0敗
セーブ  小林雅英 0勝0敗5セーブ
敗戦投手 小林宏  1勝2敗

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