4月5日 オリックス−ロッテ
(グリーンスタジアム神戸/
Yahoo!BBスタジアム

(京都府・ふさ千明)

3月末。年度末の処理に追われる職場の朝礼でのことだった。一通りの伝達が終わった後で会計係長が発言した。「共済組合よりの事項を連絡いたします。野球の優待券が来ておりますのでご入り用の方は私のほうまでお願いします。ちなみに試合はオリックス−ロッテ戦です」

この時、全職員が一斉に私のほうを見た。それは別にいいんだが。忙しさの余り試合前日になるまで券を取りにいけなかったのには困った。また、勤務予定がなかなか分からず、行けるのかどうかがハッキリしなかったのも諸方面への連絡ができずに困ってしまった。それでもなんとか行けるこことなり、当日朝。空は曇天。小雨混じり。雨中の出発。一応球場に電話してやるかどうか確認したのだが、こればかりはどうなるかわからない。中止なら中止でかまわないくらいの覚悟で出発した。

この試合の予告先発はM清水直行−BW小林宏。マリーンズファンならば一瞬「紅白戦か?」と我が目を疑う組み合わせだ。また双方のチームも1勝しかしていない。日本シリーズでのオマリーとの14球以来小林宏のファンでもあるので少々心苦しかったりするが、マリーンズ昨年の勝ち頭にして今年も唯一の勝利を稼いでいる直行の登板に勝利の自信を深めていた。

また、GS神戸がその球場名にスポンサーが付いてから行くのは今日が初めてだったので、雰囲気その他がどうなったかと言うことにも興味があった。ちなみに。スポンサーがどうなろうと、私は今後ともGS神戸と表記していくのでご了承願いたい。

出がけに職場の先輩出会い、車で駅まで送ってもらって予定より一本速い電車に乗れた。幸先のいいスタート。電車を乗り継いで京都から三ノ宮へ、そして最寄り駅の総合運動公園へ。試合開始まで40分ほどあったので、とりあえず内野を見ようと思い優待券で内野席へ向かう。一通り見て回った後で朝昼共に食べていなかったことを思い出し、スカイレストランへ行きカレーを注文する。ここのカレーは山側席のみのメニューで、試合を見ながらは食べられない。値段は1500円でスープ、サラダ、ジュース、デザートが取り放題というのはなかなかリーズナブルであると言えよう。カレー自体が1500円の味かといわれると難しいが。

そのあと外野へ移る。球場内移動ができないので一旦外に出て改めて外野のチケットを購入。悪天候だが四分の一程度には埋まったレフトスタンドへ。いつもの場所へと着いてみての第一印象は、なにより風が強いことだった。千葉マリンの海風よりも寒く感じられる。寒いだけではない。風が強すぎて色々な物が吹っ飛んでいく。晴れて暖かければ最高のシチュエーションであるこの天然芝ボールパークもこうなると厳しい環境になってしまう。

今後に備え、モンスタードッグを買いに行く。パンからはみ出るほどの巨大ソーセージが売り物だ。グリーンケチャップというのがあるのでそれをかけてもらったのだが、緑色というのは余りないので、見た目が物凄く怪しくなってしまった。食べればちゃんと美味しいので問題ないのだが。800円するだけあってソーセージ自体もボリュームたっぷりで味もいいのだが、これからの事を考えるとなお不足とすら思えてしまう。3時間吹きっさらしは想像するだにつらい。しかし、もう一つ何かを食べているヒマはなかった。オーダー発表が始まったので、慌ててモンスタードッグを胃の腑に納めた。

先攻マリーンズ
1番センターサブロー、2番レフト代田、3番ファースト福浦、4番DHメイ、5番セカンド堀、6番ライト立川、7番サードショート、8番キャッチャー清水将海、9番ショート小坂。ピッチャー清水直行。

オープン戦に比べたら工夫の見えるオーダーである。2番波留・井上純は共にうまく機能しなかったが、代田はどうだろうか。期待したい。あとは愚痴にしかならないが、初芝兄者が見られないのが何より寂しい。

後攻ブルーウェーブ
1番センター谷、2番ショート塩崎、3番DHブラウン、4番ファーストシェルドン、5番ライト葛城、6番レフト塩崎、7番サードオーティズ、8番セカンド平野、9番キャッチャー日高、ピッチャー小林。

外国人三人の打線というと往年の西鉄ライオンズが最後に優勝した年のロイ、バーマ、ウィルソンを連想してしまう。というか外国人2人制が長かったこともあってあまり例がないことなのでちょっと違和感がある。色々スポンサー絡みの行事があったあとに子供二人が出てきて英語で話し、プレイボールを宣言。ようやく試合開始である。

1回表。
先頭打者サブローの初球打ちは大きなセンターフライ。代田粘るがピッチャーゴロ。ツーアウトで福浦。昨年「お前の季節〜真夏だ燃えろ〜」とやっていた応援を通年でやることになり、応援団の1人が歌詞を書いた大きな段ボール紙を持って、それを全体に見えるように掲げていた。「俺らは叫ぶ〜打て福浦打て福浦〜声援受けて〜打て福浦打て福浦〜勝利をつかめ〜(以下繰り返し)」

ここまで精彩を欠いていた福浦、小林の直球をうまく捉えてライト前ヒット。葛城が処理をもたつく間にセカンドへ到達。二死二塁。さっそくやってきたチャンスで、バッターは4番のメイ。期待がかかるも、7球目をセカンドゴロで終了。チェンジ。

1回裏。
先頭の谷、センター前にクリーンヒット。塩崎が送って一死二塁。ブラウンファーストゴロで谷は三塁へ。シェルドンの打球は直行のグラブに納まったが、そうでなければ一点は確実に取られていたであろう強烈なものだった。チェンジでほっと一息。

2回表。
堀センター前ヒット、立川のサードオーティスの前へ。強襲ヒットというにはいささか迫力不足ながら一応「H」の表示があったので強襲ヒットということで納得。無死一,二塁とチャンス到来でリック・ショート。サードとセカンドを守れるショートということで来日当時だいぶ話題になったが、肝心のオープン戦成績は今ひとつだった。ここまでもホームランこそ一本あるが、3Aの首位打者という肩書きを思わせる働きとは言えない。ストライク、ボールと来て3球目、バットが快音を立てた。レフト塩谷の頭を越すツーベースヒットでマリーンズ先制! 快挙と言ったら怒られそうだが、そう言いたくなるほどここまで打線が不発だったのでこれまでの溜飲が一気に下がった。M1−BW0。

なおも無死二,三塁。バッターは、日米野球で打撃開眼したと一部で噂の清水将海。ポンポンとストライク2つ取られた後よく見てフルカウント。ファールひとつ打ってその次の球。打球は惜しくもセカンド平野のグラブへ。ホームへ突っ込めずファーストアウトのみ。一死二,三塁に変わる。なおも続くチャンスに、バッターはぬいぐるみにしたい野球選手ナンバーワンの小坂誠。2球目を強く打って打球はセカンド平野を襲う。そのまま抜けてライト前へ。立川帰ってM2−BW0。

一死一,三塁。サブロー見逃し三振で二死一,三塁。バッターは代田。イースタンの盗塁王として名を馳せているものの、一軍での実績はあまり無い。それでも今のイケイケな雰囲気のまま期待を寄せる。ファール、ボール、ボールときて四球目、打ったが、打球はピッチャーゴロ。レフトスタンド溜息をつくが、それを小林が弾いてしまいその間に代田は快足を飛ばす。微妙なタイミングでボールはファーストへ。代田、ヘッドスライディング! 無情にも審判の右手は挙がりチェンジとなったが、今のガッツ溢れるプレーにレフトスタンド総出で絶賛。「代田ーよかったぞー」「次頑張れよー!」そして守備につくためにこちらに来た代田に、再度声援を送ると、こちらを向いて深く礼をする。それに対して、また拍手。結果はダメでもこういうプレーを見せられると、責められないどころか嬉しくなってしまう。

2回裏。
葛城、外角に逃げる球をうまくあわせてレフト前ヒット。塩谷、足元に来た5球目をコケながらもカットしてファールにした。それをオーロラビジョンで見て、思わず感嘆。そして7球目、打球はライトへ。突っ込めば捕れたかな? という微妙な位置で跳ねて立川のグラブへ…と思ったら立川がこれを見失い、ランナー葛城は三塁へ到達。無死一,三塁。せっかくの先制点で明るかった先行きに、暗雲が生まれる。オーティスひっかけてショートゴロ。6−4−3でゲッツーの間に葛城ホームイン。これでM2−BW1。

平野、5球目をうまくあわせてレフト前ヒット。日高ボールスリーからファール3つ、結局フォアボールで二死一,二塁。打順はトップに帰って谷。3球目をこともなげにセンター前へ。平野がホームインしてせっかくのリードが消えてしまった。M2−BW2。二死一,二塁で塩崎もセンター前ヒット。日高は帰れず二死満塁に。ブラウンセンターフライ。長い長い2回が終わった。長すぎて凍えそうだった。まだひっくり返されたわけではないから、そのことに希望をつなぐ。

3回表。
オリックスのピッチャーが小林から土井に代わった。故障でもあったんだろうか、と思うほか無いあまりに早い交代だった。この時長々と投球練習していたので待っている間非常に寒かった。そしてこの土井の前にクリーンナップが三者凡退で余計に寒かった。福浦の大飛球を谷がナイスキャッチしたり、堀のライトフライを葛城がコケながらもグラブに納めたりと見所はあったが。この「ダメはダメなりに楽しませる」というスタイルは褒めていいんだろうか。

3回裏。
先頭のシェルドンを歩かせてしまう。フォアボールから崩れるのは直行の悪いときのパターンだ。しかし牽制でアウトにして一安心。なのだが、今日はその安心が長続きしない。葛城、塩谷に連打を浴びてあっと言う間に大ピンチ。オーティスが初球を引っかけてサードゴロ。リック・ショートがそのまま三塁を踏み、ファーストへ送球してゲッツー完成。チェンジ。

レフトスタンドからはブルペンがよく見えるのだが、直行がこうまで不安定なので早い回から色々なピッチャーが姿を見せていた。直行がどうにもぴりっとしないままならあの中から何人が登板することになるのかと思い悩む。

4回表。
立川、ショート共に2球で料理されこの回も寒いのかと思ったら清水将海がレフト前ヒット。小坂も粘りに粘って同じくレフト前に。塩谷大忙し。そしてレフトスタンドの我々、大喜び。二死一,二塁。チャンスにサブロー。ここまでの不審を吹き飛ばすかのような打球はライト前へ。ツーアウトから点が取れた! と歓喜の我々。M3−BW2。そしてなおも二死一,三塁とチャンスは続き、先ほど大声援を受けた代田。この打席でもひときわ大きな声・声・声。これに気負ったかあっさり空振り三振。キャラに合わない大振りだった。気持ちは嬉しいが。

4回裏。
8番9番をフライで料理し、1番谷の打球も立川・サブロー両名が追って無事チェンジか、と思ったら二人の間をちょうど抜けてしまいこれが何と三塁打に。捕れたと思っただけにダメージが大きい。直行、気落ちしなければいいが、という心配も杞憂で塩崎ショートゴロ。無事チェンジ。

5回表。
福浦の打球はファーストの横を抜ける。ライト前ヒットかと思ったがセカンドの平野が予期していいところを守っていた。捕球してファーストへ。これをベースカバーのピッチャー土井が捕れない。捕れないようなところに投げた平野が悪いのか、それとも捕れるような球を土井が逸らしたのか。見たところ平野の送球ミスだったようであるが、それにしても今日はこういうプレーが多い。寒いからだろうか。

ともあれ、これで無死一塁。バッターは4番、メイ。ボール、ファールと来て3球目、高く上がった打球は歓喜するレフトスタンドへ。ツーランホームランでM5−BW2。さぁこの勢いに乗って、と思ったが後の三人は見事に凡退。つくづく勢いに乗れないが大きな2点が入った。これまでの貧打がウソのよう。まさに「やればできるじゃんマリーンズ」である。

5回裏。
ブラウンがフォアボールで無死1塁。続くバッターは4番シェルドン。なんだかさっきと似た展開だなぁ、と思う間もあらばこそ。初球をガツンと叩いてこれがセンターバックスクリーンへ。M5−BW4。2点取れば2点返される。葛城凡退の後塩谷のショートゴロを、もとい、サードゴロをリック・ショートがファーストへ悪送球。塩谷は一気にセカンドへ行き一死二塁。オーティスの打球は良い当たりだったが堀のグラブへ。セカンドライナーで二死二塁。平野ライトフライでチェンジ。

6回表。
絵に描いたような三者凡退。それにしても土井はだいぶんロングリリーフである。これで4イニングを投げきった

6回裏。
ふらふら状態ながら何とかここまで来た直行がここで降板。ホールド王藤田がマウンドに。日高をセカンドゴロに打ち取るとあっさりお役ご免。監督が何を考えているのかが分からないが、仕方ない。代わって背番号41、小林宏之がマウンドに。塩谷をフォアボールで歩かせるが、後は問題なし。無事チェンジ。

7回表。
レフトスタンドはウィラブマリーンズを合唱。終わると大急ぎでTake me out to theballgameも歌う。かように儀式の多いラッキーセブンだが、甲斐なく三者凡退。ひときわ大きな声援を背負った代田はまたも空振り三振。メイは無気力走塁で批判を浴びる。

7回裏。
こちらも三者凡退。小林好調。

8回表。堀、立川と倒れて「このまま1点差で行くのかな?」とか思ったらリック・ショートの打球がこちらめがけてやってきた。「来い!」「届け!」の願いが叶って2号ソロ。M6−BW4。いいなぁ、ショート。清水将海も負けじとレフト線へツーベース。こっちに飛んでくる打球が多くて嬉しい限りだ。小坂ファーストゴロでチェンジ。でもこの1点は大きいぞ。

8回裏。
小林宏之に代わってブルペンから出てきたのはブライアン“いつもより多く回しております”シコースキー。マウンドまでのダッシュと腕のグルグルまわしが大人気の剛腕セットアッパー。マウンドで前後に3回ずつ回す姿にレフトスタンド歓声をあげる。初めて来た人には何が何だか分からないだろうなぁ、とか思いながら私も大喜び。今日は150キロ近い速球は鳴りを潜め、変化球主体だったがそれが功を奏しオリックスのバッターは三振、また三振。平野の代打“ゴッシー”こと五島のみセンターにクリーンヒットを放ったが、反撃はそれのみ。アウトは全部三振でチェンジ。

9回表。
ピッチャーは土井から牧野に代わった。6イニングのロングリリーフは相手チームの事ながらご苦労さんと思わずにはおれない。サブロー今日2本目のヒットをセンター前に。代田、初球をきっちり送りバント。一死二塁。このチャンスに福浦、粘りに粘って9球目、レフト線を破るツーベース。M7−BW4。7点。7点とはいつ以来見る数字だろうか。後続倒れてチェンジになったが、これ以上点を取ると小林雅英が出てこなくなるかも知れないので、かえってホッとしてしまった。

9回裏。
マウンドに向かうのは、もちろん守護神小林雅英。塩崎の打球はレフトへ。微妙な位置へ飛んだが代田がスライディングキャッチ。「いいぞ代田!」「ナイスファイト!」目の前のファインプレーにレフトスタンドは興奮ひときわである。そしてブラウンファーストゴロ、シェルドン空振り三振でゲームセット。

マリーンズも清水直行も、今シーズン2勝目。連敗を止めてやっと勝った喜び、やっと打てた喜び、そしてなにより野球の季節がやってきた喜びでレフトスタンドは大いに歓声を上げた。ヒーローインタビューは先制タイムリーとソロアーチで2打点のリック・ショート。「全員で勝利に貢献できてよかった」「チームに貢献できて嬉しかった」との発言がまたよかった。そのあと、たっぷりと勝利の味を噛みしめてから、帰途についた。


勝利投手 清水直行 2勝0敗
セーブ  小林雅英 0勝0敗2セーブ
敗戦投手 土井雅弘 0勝1敗

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