9月1日 オリックス−ロッテ
(グリーンスタジアム神戸/
Yahoo!BBスタジアム

(京都府・ふさ千明)

9月。ペナントレースも終盤に差し掛かり、残り試合も少なくなって優勝の行方もはっきりとしはじめた。プロ野球ファンとしては寂しさを覚える季節がやって来た。まぁ、日本シリーズのアテがあるチームのファンはまた別なのだろうが、そのへんの心境はマリーンズファンになってからついぞ味わったことがない。

それでも。いや、だからこそ。近くで試合があるとなれば何を置いても観戦にかけつけたくなるのが人情というものだろう。この日も休みだったのをいいことに神戸での観戦を決め、早めに家を出て三ノ宮の駅前をぶらつく。

すると、ダイエーホークス優勝祈願と書かれた似顔絵ポスターを発見した。おもえば神戸はダイエーグループのお膝元。こういうものの一つ二つあっても不思議はない。

ポスターの下の方には「今日のマジック」という欄が設けられていたのだが、前日にマリーンズが消してしまったので空欄になっていた。相変わらずマジック点灯の頃になると無類の強さを発揮するマリーンズだが、まさかこんなところで迷惑をかけていようとは。

この、マジック点灯すると強くなるというチームのジンクスはそのうち俳句の季語に選ばれるんじゃないかと踏んでいるのだがどんなものだろうか。

 連勝の  ニュースを聞いて  秋を知る(秋鴎人) 

しみじみとしている場合ではなかった。すいませんね迷惑かけて、と心で呟いたあと、地下鉄でとっとと球場に向かう。この日はマンデーパリーグのため外野席に600円で入れた。浮いた分でカレーを食べながら試合開始を待つ。相変わらず人が少ないなぁ、と思ったが、この日は存外入っていた。今日の試合は“花火ナイト”と題されていて、9月に花火が見られるのが珍しいからか。分からないでもないが、まぁ、これで球場に来てくれる人が一人でも増えるんならありがたい。

さて。この日のスタメン。
先攻のマリーンズ。
1番ショート 小坂、2番センター 井上純、3番ファースト 福浦、4番DH 堀、5番サード J・フェルナンデス、6番レフト R・ショート、7番ライト サブロー、8番キャッチャー 里崎、9番セカンド 渡辺正人、P 薮田。

後攻のブルーウェーブ。
1番ファースト 塩谷、2番サード 大島、3番センター 谷、4番レフト R・ブラウン、5番セカンド J・オーティズ、6番DH 山崎、7番ライト 葛城、8番キャッチャー 日高、9番 ショート平野、P 具臺晟。

5番のファーストネームがどっちもホセだとかライトがサブロー対イクローだとか昔はどっちもセカンドに「こういち」がいたのにとか。そういうどうでも いい話で見ず知らずの人と盛り上がれるこの球場は素敵だと思う。そんな話をしているうちにプレイボール。

1回表。
トップバッター小坂、「打球をあげなきゃ給料あがるよ!」という野次が聞こえたのか、センター前ヒット。イノジュンこと井上純が送りバント成功し、一死二塁。うちには似つかわしくないような手堅い攻め。初回いきなりのチャンス。かつ打順はクリーンナップ。

しかし3番はヒットメーカーだが得点圏打率の若干低めな福浦。その打球はサードへのゴロでランナー進めず。二死二塁と変わる。次打者は、いつのまにかDHが定着した堀幸一。先制のチャンスでの打席ということで、後方の席から気合いのこもった堀さまコールが聞こえて来た。解説せねばなるまい。

主に神戸での試合では“謎の堀さま娘”と呼ばれる女性がおり、堀がバッターボックスに入ると、物凄くキーの高い声で「ホリさまー」と叫び、一種名物となっているのである。で、現在なんだか堀さまコールは神戸においては浸透しつつある。それが証拠に、堀さま娘の絶叫に触発されたかのように堀さまコール方々で連呼。その堀さまはフォアボールで二死一、二塁に。

そしてフェルナンデスは「ホーセホセホセホーセー」の大合唱の中、右中間に大飛球を放った。スタンドには及ばなかったが、これが走者一掃の先制タイムリーツーベースとなって2−0。そしてR・ショートも負けじとレフトへ鋭い打球。ブラウン追いつけずに悠々のツーベース。フェルナンデスホームインして3−0。

なおも二死二塁でサブローがバッターボックスへ。ノリノリのレフトスタンドからの「サブロー」コールが球場内に響き渡る。しかしここはショートゴロ。チェンジだが3点先制は心強い限り。

1回裏。
初回の3点。これは先発の薮田には何よりのプレゼントだろう。ブルーウェーブのトップバッターは塩谷。その打球はセンター方向へぐんぐん伸びた。「純!」と祈りにも似た声が飛ぶ中、センターの井上純が懸命に走って壁際。おさえてアウト。大島あっさりサードファールフライ、谷は粘ったが見逃し三振。最初は少しひやっとしたが、三者凡退。薮田好発進。

2回表。
清水将海、渡辺正人とあっさり倒れてツーアウト。小坂もポップフライで終わりかな、とか思っていたら「やればできるじゃん!」の流し打ち。ちょこんと弾いたような打球がうまくレフト前へ飛んだ。二死一塁。「小坂走れー」の叫びが響いた二球目、井上純も流し打ち。サード大島の頭上を越えるレフト前ヒット。打球が速くて小坂はセカンドストップ。二死一、二塁。

ランナーをおいてまたも福浦。いやな予感にさいなまれていたら、今度はレフト前にタイムリーヒット。小坂生還で4ー0。気がつけばレフトに3人連続ヒット。左が3人続いたからなのだろうが、マリーンズ的にはこういうのもなかなか珍しい。なおも二死一、二塁。バッターは堀。今度はかなりの人数が、先ほどの打席に負けぬ声量で「堀さまー」と叫んだが効果なく空振り三振でチェンジ。

2回裏。
ブラウン、オーティズ、山崎と大砲が並んだが三者凡退。オーティズ以外は外野にも飛ばなかった。薮田、良いのか?

3回表。
フェルナンデス、R・ショート、サブローのカタカナ三人衆いずれも凡退で、今度はこちらも三者凡退。特筆すべきは最後のサブローへの3球目、具の140キロストレート。サブローは大胆な攻めに見逃し三振。具、持ち直してきたようだ。

と、ここから試合はしばらく膠着状態に入る。これを投手戦と呼ぶべきか拙攻と呼ぶべきかは人にもよるであろうが、ここから6回まで具がノーヒット、薮田も被安打1。むしろ力投と評してあげたいピッチングであった。

また、試合そのものとは無関係なのだが、上記の通り今日は花火ナイトで、5回裏終了後に数分間花火が打ち上げられた。打ち上げられた場所がレフトスタンド後方だったため、マリーンズ黒色軍団はもっともその迫力を堪能できた。

というわけで7回表。
イニング前の儀式をきっちり済ませ、そろそろ追加点頼むぜ、と気勢をあげたがやはりラッキーセブンあてにならず。ツーアウトから出塁した小坂がまさかの盗塁失敗でチェンジになる予想外の展開にぼう然自失となる。

7回裏。
ここまでわずか被安打1。見事な完封ペースの薮田が急遽崩れた。この回先頭の大島にレフト前に運ばれ、続く谷にはライトフェンス直撃ツーベ
ースを浴びる。大島は三塁ストップで無死二、三塁。バッターは3番ブラウン。ボール、ファールのあとの3球目、やや詰まった打球がサードのフェルナンデスの後方へ。フェルナンデスとR・ショートが懸命に追うが、それをあざ笑うかのように、両者のちょうどまん中にぽとりと落ちた。大島、谷と連続ホームイン。R・ショートがバックホームしている間にブラウンも二塁到達。この2点タイムリーツーベースはブルーウェーブ反撃の狼煙となるのか。4−2。

無死二塁と変わって、さらにオーティズがライト前ヒットを放ち、これで無死一、三塁。事ここに至っては薮田降板やむなし。ライトスタンドから「サヨナラサヨナラ薮田、阪急電車でハヨカエレ」と聞こえて来た。そういえばこのハヨカエレコールは今でこそ大阪近鉄応援団の専売特許のようになっているが、もともと阪急応援団が始めたものだそうだが、この球場で聞いたのは初めてだ。今までもやっていたのかもしれないが、全く記憶になかった。で、ここであえて新大阪に直通してない阪急電車なのは前身への配慮なのか。

閑話休題。ピッチャーは戸部に代わる。無死一、三塁で、バッターは山崎。元二冠王の登場に「一気に逆転や!」とばかりに盛り上がるライトスタンド。しかし山崎、期待に応えられずサードゴロ。サードのフェルナンデス、掴んでセカンドへ送球。アウトにするもオーティズのスライディングに阻まれて一塁転送はできず。この間にブラウンホームインして4ー3。なおも一死一塁。

葛城を迎えたところでまたもピッチャー交代。今度は川井だ。するとブルーウェーブも代打三輪をコールした。ブルーウェーブ期待の三輪だったが、ここは川井がおさえてセカンドゴロ。しかし4−6−3併殺とはならず、またもアウトはセカンドのみ。これで二死一塁。

ファーストランナー三輪の代走に竜太郎が入った。日高がレフト前ヒットで二死一、二塁。次打者平野に代打前田がコールされると、マリーンズもピッチャーをシコースキーに。するとレオン監督代打の代打として後藤を送り込んだ。レフトファールグラウンドへの大飛球。R・ショート追走、追走、追走。フェンスの向こうに手を伸ばしてボールをキャッチ。マリーンズにとっては苦しい苦しい7回裏がようやく終わった。追い上げられたとは言え、まだリードが1点あることは救いだった。

8回表。
ブルーウェーブのピッチャー、具から本柳に代わった。いよいよ追撃モードなのか。本柳の伸びの良いストレートに押されるようにイノジュン、福浦と凡退。チャンスでも何でもないが、4番の一振りを期待してこの日最後の堀さまコールをみんなで行った。

すると。カウント1ー1からの3球目、堀さまの打球は美しい弧を描いてセンターバックスクリーンに飛びこんだ。これにはライトスタンド、一同狂喜乱舞。「やっぱり堀さまだよ!」「足向けて寝らんねーよ」と、私の3列くらい後ろのあんちゃんが、なんだか古めかしいことを言っていたのだが、ともあれ気持ちはよく分かる。追撃を振り切るソロアーチで5−3。

フェルナンデス、お前も続けと念を込める。それが届いたのかどうか、この打席では粘って粘ってフォアボールをもぎ取った。代走代田のコールに一層沸くレフトスタンド。「走れ!」「代田ダーッシュ!」とバッターのR・ショートよりも大きな声援を受けてやる気な代田だったが、しつこい牽制に引っ掛かってアウト。チェンジ。

盛り上げといてあっさり落とすのはウチのお家芸だが、そろそろなんとかならないものか。

8回裏。
トップバッター塩谷、ライト前ヒット。大島はセンターフライで一死一塁。バッター谷。先ほどのお返しとばかりに、塩谷牽制でタッチアウト!谷直後にキャッチャーファールフライ。チェンジ。最前の仇をとってくれたシコースキーに一層の声援を飛ばした。

9回表。
R・ショートの打球は谷の頭上。ジャンプも及ばずフェンス直撃。悠々のツーベース。サブロー送って一死三塁。バッターは8番清水将海と言うこともあり、明らかなスクイズの場面。バッテリーも警戒して初球はウエストしてくる。見のがしてボール。空振りしたりファールにしたりして心臓に悪い流れでツーストライクになってしまう。やれやれ、これで強攻策かなと思ったら5球目、スリーバント敢行。ホームベースに程近いあたりを勢いなく転がるボールを、キャッチャー日高が鷲掴むように捕って、迫るR・ショートにタッチ。………アウト!

これで二死一塁と変わった。まぁ、バントと分かっている場面でもきっちり決められる将海かどうかはわかっていたので落胆は余り無し。さらに言うと、こういうところでスパッと出せるバント要員もマリーンズにはいないしなぁ…。愚痴ってる間に正人空振り三振。チェンジ。

9回裏。
「コバヤシ!」コールを受けて小林雅英がマウンドへ。それを縫うように代田に代わって原井が入りセカンドへ、正人はサードに回ったとアナウンスがあったが、さて何人聞いていたか。ブラウンにレフト前へ運ばれる。オーティズ初球を打ち上げてライトフライ。山崎の打球は左中間に。ブラウンホームインして5−4。堀さまのホームランのおかげでまだリード。葛城ライトフライ。日高ピッチャー返しをコバマサがっちり捕ってゲームセット。

手放しでは喜べないが、まぁそれでも勝ったことは大きい。堀さまのソロがボディブローのように効いたことが、大きい。強くなったとは言えなくても、マシになったとは言えるであろうこの勝ち方だった。


勝・薮田 4勝4敗
S・小林雅 1
敗25S
敗・具臺晟 6勝8敗

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