3月8日 近鉄−ロッテ〜オープン戦
(大阪ドーム)

(京都府・ふさ千明)

3月5日に17日連続勤務という大きな山を越した私は、とりあえず代償として得た3連休の使い道を考えていた。色々考えたが、3月7日に行われる豊橋市民球場でのオープン戦へと足を運ぶことで決定した。昨年岡崎市民球場初観戦を達成した私は、これでまたひとつ未観戦球場での観戦ができると心弾ませていた。

そして3月7日。目が醒めると、雨と風とがにぎやかな音を立てている。私の住む京都から豊橋は遠い。せめてもの期待を胸に電話してみると、「10時に決定するんですよ」とのことなので出発の準備をして10時になるのを待った。そして10時。受話器の向こうから聞こえてきた声は申し訳なさそうに「強風のため中止になりました」と告げた。思わず「千葉マリンかい!」と心中ツッコミを入れてしまったが、こればかりは仕方ない。よほど前世で何かあったとしか思えないような天候運のなさだが、とりあえず翌日の大阪ドーム観戦を代わりとすることにした。本来は3月6日豊橋、3月7藤井寺という2連戦を予定していたのだが藤井寺でも雨でやられるくらいならと、場所を屋根つきに変更した。

そして3月8日。天気雨という実に微妙な天候の中出発。余裕を持って到着し、試合開始1時間前に既に100人以上入っている。頼もしいことであるが、しかし、なんというか、バッティング練習では澤井、初芝らが高々と打球を打ち上げていた。スタンドインも何球かあった。マリーンズのメールマガジンで先発が高木であることは知っていたのだが、オープン戦だけにあとのオーダーが想像できない。ここまで移籍組重視で組んできたが、そろそろ若手を試してくれないものだろうか。喜多、今江、西岡らが名を連ねる日はいつ来るのか…。そしてその夢はスタメン発表で綺麗に砕かれる。

<マリーンズ>
1番ライトサブロー、2番センター波留、3番ファースト福浦、4番DHメイ、5番セカンドショート、6番レフト井上純、7番サード初芝、8番キャッチャー清水将海、9番ショート小坂、ピッチャー高木晃次。

<バファローズ>
1番センター山下、2番セカンド高須、3番レフトローズ、4番サード中村、5番ファースト吉岡、6番ライト磯部、7番DH鷹野、8番ショート永池、9番キャッチャー鈴木、ピッチャー高村。

オープン戦始まってからどころか、紅白戦からずっと井上を使い続けている。たまには喜多や諸積や伊与田や寺本を使って欲しい。

1回表。サブロー粘ってフォアボール。幸先がいい。波留、初球きっちり送って一死二塁。セリーグ時代「バントをしない2番」と言われていたが、マリーンズではうまい方に入るのではないか。福浦。2球目を鈴木が後ろに逸らして、サブローは三塁へ。ファールのあとの4球目、引っ張った鋭い打球はライト磯部が捕らえてしまう。しかしサブローすかさず走ってタッチアップ。ノーヒットで1点先取。M1−Bu0。メイ初球を打ってサードフライ。チェンジ。

1回裏。下山レフトフライ。高須サードへの打球は鋭い当たり。誰もがレフト前ヒットかと覚悟したが、初芝がライン際の球を捕らえて素早く送球! アウト。初芝、さっそく魅せてくれる。ローズボール、ファールと来て3球目、内角高めの球を空振り。高木晃次やるなぁ、と感心してると4球目、打球はライトサブローの前へ。本当に「やるなぁ」なのはローズだ。中村ショートゴロでチェンジ。

2回表。ショートはライトファールフライ。井上純、粘って粘ってフォアボール。初芝、ふらふらと打ち上げたが飛んだ場所が良く磯部の前にポトリと落ちた。これで一死一、二塁となる。清水将海、打球は綺麗に飛んだが飛距離が足らずセンターフライ。小坂空振り三振でチェンジ。制球に苦しむ高村を今一歩攻め切れていない感じ。

2回裏。吉岡倒れて磯部の場面、初球があっと言う間にスタンドまで飛んでいった。ぽかーんと見送るしかなかった。あっと言う間に同点。M1−Bu1。鷹野センター前ヒット。永池粘りに粘るが空振り三振。ほっと一息。鈴木も空振り三振でチェンジ。1点止まりで一安心。

3回表は三者凡退。特にサブロー、波留は1球ずつで仕留められてしまい、高村を助ける結果となった。

3回裏は下山のなんでもないサードゴロを初芝が綺麗に弾く。やっぱり初芝。高須の3球目、下山が走ったが、清水の強肩の前にアウト。これで初芝のミスも帳消し。将海見事! 気をよくしたか後続断ってこの回結局3人で終わる。

4回表。メイはセカンドゴロで早々にあきらめる。こう言うところが反感を買う一因になっている。ショートは初球を打って、球はマウンドに当たる。ラッキーなセンター前ヒットで一死一塁。井上ファーストゴロだが、セカンドは高須がボールを逸らしてセーフ。二死二塁。そして初芝。タイムリーなら待望の追加点だがセカンドフライ。

4回裏。初芝に代わって渡辺正人が入り、ピッチャーは小林宏之に代わる。昨シーズンの酷使の影響(58試合で81と1/3回に登板)が気にかかるところだが、荒れ球でボール先行ながら球威で抑えて無失点。剛腕今年も健在か。

5回表。ピッチャー高村から小池に代わる。「ロッテにだけは行きたくない」の逸話を覚えている者も今ではどれだけいるか分からないが、因縁浅からぬピッチャーである。できれば打っておきたいが、三者凡退。なんというかこう、いいように料理されてしまった感じである。

5回裏。ヒットで出た永池を鈴木が送れず、下山も三振に倒れ、挙げ句高須の打席で永池盗塁失敗。三人で終わる。将海、頼もしい限り。

6回表。小池は1イニングだけで、ピッチャーは2年目左腕の有銘に代わる。波留ショートゴロのあと、福浦技アリの大飛球はローズの頭を越えるツーベース。一死二塁。メイセンター前ヒットだが福浦帰れず。一死一、三塁。有銘は早々に降板となり、三澤が出てくる。切り替えが早いというかなんというか。右を抑えて左に2本打たれてしまった時点でテストとしては十分なのか。

場面は三澤対ショートとなる。ショート。彼にはローズにかかっていた期待がそのままとは行かないが、少なくとも幾分かはかかっているだけに、プレッシャーは大きかろうが、外野フライでいいのだ。何とかして欲しい。ボール、ボール。探るような2球に、じっと見送るショート。何かを待っているようだ。そして3球目。ボールは三遊間に。中村捕ってホームへ送球。アウト。幸いに他はセーフで二死一、二塁と変わる。福浦がうずくまっていたのでヒヤッとする。特に先日小久保が大怪我を負ってしまったことを知っているだけに…。しかし無事立ち上がって一安心の三塁側。井上純セカンドフライ。チェンジ。

6回裏、福浦に代わって代田がファーストに入った。大事をとっただけだといいのだが。というか、なぜに代田なのか。澤井でも垣内でもいいんじゃないだろうか。また、波留に代えて立川がセンター、そしてピッチャーは28番加藤康介に。この「2代目園川」に、ひときわ大きく声援を送った。

加藤は先頭の高須を歩かせるが、続くローズを1球で仕留める。しかし中村にうまく流し打ちされ一死一、三塁。中村の代走に武藤。チャンス到来に、バファローズ応援団がタオルを構える。今年最初に見る、タオル踊りだ。こうなるとついついグラウンドではなくスタンドを見てしまい、決定的瞬間を見逃してしまうのだが、今回は見逃さなかった。吉岡への初球、カーブが真ん中へと入ってしまいレフト線を深く深く破られる。走者一掃のツーベース。重い、大きい2点が入る。M1−Bu3。磯部のサードゴロ、渡辺弾くが前に落として無事アウト。鷹野空振り三振で2点止まり。チェンジ。

7回表。「We Love Marines」を歌い、「Take me out to the ballgame」を歌う。久しぶりに、歌う。この回、バファローズは思い切って布陣をいじってくる。2番に益田を入れレフト、3番に森谷を入れライト、4番には代走の武藤がそのまま入りセカンド、6番に山下が入りサード。ややこしいがローズや中村が引っ込んだことでだいぶ怖くなくなった。意気込み新たに、攻撃開始。渡辺正人、ツースリーから見逃し三振。清水センター前ヒットで、代走には西岡がコールされた。ご当地選手であり、期待のルーキー登場。小坂センターフライ。西岡飛び出してアウト。ルーキーにありがちなミスとは言え……まあ、オープン戦で良かったとも言えるが。チェンジ。

7回裏。西岡がそのまま入りショート。小坂に代わって辻がキャッチャーで入る。ショート西岡。いずれはスタメンでそうコールされるのか…。松井稼頭央にも劣らぬ大型ショートとなって君臨してくれることを願って止まない。永池に代打川口。ツースリーからセンター前ヒット。鈴木に代打北川。セカンドへの打球もリック・ショートが取れずライト前ヒット。エラーにこそならなかったが、今のはエラー級の守備だった。

無死一、二塁。北川には代走前田。続く下山フォアボールで無死満塁。益田ファーストゴロもホームのみアウト。ウエスタンのスプリンター森谷。レフト前ヒット。井上の返球が逸れる間に前田も帰って2点追加。M1−Bu5。武藤空振り三振。吉岡に代打藤井。「代打藤井」というコールを聞くと、パリーグが誇った満塁男のあの人を思いだしてちょっとしんみりした。藤井、サードフライでチェンジ。この回の2点は、左の胸を撃たれたあとに右の背中も打ち抜かれたようなダメージの追加点。痛い。

8回表。代打の川口がファーストへ。同じく代打の藤井がキャッチャーに。そして代走前田がショートへ。さらにピッチャーは小野へと代わった。小野は小野でも晋吾ではなく仁のほう。巨人のドラフト2位。彼がプロ入りした当時はまだ巨人ファンもやっていたが、イースタンでは何度か見たという程度しか知らない。さて、どんなピッチングを見せてくれるのか。

先頭のサブロー、ショートゴロに倒れワンナウト。バッターは立川。「この対決、浦和か読売でしか見られなかったのになぁ」と後ろで誰かが話していたのが聞こえてきた。イースタンで打たれた記憶でも蘇ったか、フォアボール。次打者は代田。これまたイースタンで顔を合わせた仲だ。それがダメなのか、フルカウントからライト前ヒットを打たれ一死一、二塁。メイに代打佐藤幸彦。ライト前ヒットだが、ホームには行けず満塁。ショート。先ほどのサードゴロの記憶が脳裏を占める。それでも「リック・ショート」コールを送る。2球目を打ってショートゴロ。6−4−3。ゲッツー。チェンジ。「初芝は2人もいらないんだよ!」辛辣な一言が背中に飛んだ。

8回裏。ピッチャーは加藤から神田へ。本来なら豊橋で先発しているピッチャーだったが、雨に泣きこの場面での登板になった。さぁて、ルーキー、どんなピッチングを見せてくれるのか。山下倒れて鷹野には代打大村。見逃し三振でツーアウト。「憲史」コールでおなじみの川口登場。ストライク2つのあと、様子探りのボール2つ。決め球をカットされての6球目、打球は高く上がって、誰もいないレフトライン際にポーンと跳ねた。貫禄勝ちとも言えるツーベースヒット。前田にもセンター前に持って行かれる。川口がホームへ突っ込むのを立川が見てすかさず送球。中継の西岡、やや逸れたコースへ投げてしまうが、運良くそこに川口がいて、アウト。チェンジ。

この回を見て思ったのだが、神田はタイプでいうと三澤ではないかと思う。スピードは140キロ台前半で、コントロールがそこそこ良い。あとは場数を踏んでいくことでさらに育っていってくれると思う。やっぱりルーキーには経験が必要だ。

9回表。松本拓也の名が告げられる。某出版社の名物編集者と同姓同名のこのピッチャーは新人王候補にも挙げられている。井上純そのまま打席に入ってレフトフライ。渡辺に代打諸積。井上に出番を食われっぱなしのモロに、精一杯の声援を送る。制球に苦しむ松本の5球目をレフトにもっていった。益田が打球の処理を誤る間にセカンド到達。こういうプレーにはスカッとする。こういうプレーこそプロのものだと思う。レフトスタンド大喝采。

西岡ファーストゴロは進塁打になる。二死三塁。辻、サブローと連続フォアボール。これで二死満塁。点差は4点。一発出れば同点。そして立川は先日サヨナラスリーランを放っている……。レフトスタンドは「天国と地獄」のテーマに乗せて「打て打て打て打て!」の大合唱。ライトスタンドも負けじと「頑張れ頑張れ松本!」と叫ぶ。点差やオープン戦であることなどは無関係に、高まる緊張感。ボール、ファール、ファール、ボール。カウントツーツーからの5球目、立川のバットは空を切った。空振り三振でゲームセット。

勝利投手 三澤
敗戦投手 加藤
本塁打  磯部

この敗戦はオープン戦でもあり、仕方ないと言えば仕方ないのだが、負けるにも負け方がある。公式戦での勝利への布石と感じさせる物がなければ、タダの負けである。早くグラウンドで喜多や今江を見たい。そんな渇望感すら覚えた一戦だった。

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