6月30日 近鉄−ダイエー
(大阪ドーム)

(京都府・ふさ千明)

気が付くと、もう半月以上も球場に行っていなかった。これは私のライフスタイルとしては激しく間違っている。そのため夜勤明けのこの日大阪ドームに足を向けた。色々あって出発が遅れたが、それでも6時過ぎには球場に到着した。

この日は「サラリーマンデー」なので身分証明書を持参し外野席に500円で入場。しかし。入るとすぐに聞こえてきた「外野は1階席が満席です。2階席へお回り下さい」とのアナウンス。あの席、別に嫌いでわけではないが、せっかく久々の観戦なのでもうちょっと近いところに座りたい。やむなく一旦出て内野自由席を買い直す。

そんなこんなで席に着いたときにはすでに3回表。2ー1でホークスがリードしていた。試合開始に間に合わないと分かったときに「ついたころ先発のどっちかもうマウンドにいないかもなー」とか不謹慎なことを言っていたのだが、幸い門倉も新垣もマウンドに居た。嬉しいことである。特に新垣は球場で見るのが初めてであり、実に嬉しい。

ただ、困ったことにこの日は観戦メモノートは持ってきていたが筆記用具がなかった。まぁ、別になくても観戦自体は困らないのであるが、私は記憶力がとてつもなく乏しいので今こうして観戦記を書く段になって困っている。やむなくネット上の資料を記憶とあわせて書くことにしたが、どうにも自分のメモではないのでしっくりこないが、ご容赦願いたい。

スターティングメンバーは以下の通り。

先攻のホークス
一番センター村松、二番ショート川崎、三番レフトバルデス、四番ファースト松中、五番キャッチャー城島、六番DHズレータ、七番ライト柴原、八番サード ネルソン、九番セカンド鳥越、ピッチャー新垣。

後攻のバファローズ
一番センター大村、二番ショート阿部真宏、三番レフト狼主、四番サード中村、五番ライト礒部、六番ファースト北川、七番DH川口、八番セカンド星野、九番キャッチャー藤井、ピッチャー門倉。

門倉はこのシーズンここまで先発の柱として好投を続けてきているが、この日も良かった。何度もピンチを迎えたが、最後の最後で踏み止まる強さがあった。

一方の新垣の感想だが、とにかく球が速い! でもってコントロールも悪くない。これではマリーンズの選手は打てないはずだと納得するしかなかった。マリーンズより遥かに好打者の揃っているはずのバファローズの選手ですら打ちあぐねている。大村が、ローズが、中村が、礒部が。振り遅れ詰まらされている。ゴールデンルーキー恐るべし。これでここまで4勝6敗と言うのがよく分からない。防御率はそう悪くないし、おそらく「運が悪い」のだろうとその場では推測した。

3回表、先頭の村松のヒットで出塁し、それを川崎が送って一死二塁。迎えるはダイエーが誇る破壊力抜群のクリーンナップ。ここで門倉の変化球が冴えた。バルデスセンターフライ、松中サードファールフライでチェンジ。

3回裏、ローズ空振り三振、中村レフトフライ、礒部うまくあわせてライト前ヒットも、北川サードゴロでチェンジ。真っ向勝負で快速球。若武者、見事。

4回表、先頭のネルソンレフト前ヒットで出塁するも、門倉後続を抑えてチェンジ。

4回裏、新垣またも真っ向勝負でゼロに抑える。胸のすくようなまっすぐの投球に一塁側であることも忘れて拍手。

5回表、川崎からの打順、またも先頭バッターがヒットで出塁。バルデスはフライですんだが、松中のセカンドゴロで川崎が進塁。城島敬遠で二死一、二塁。新外国人ズレータ、粘ったがセカンドフライでチェンジ。門倉、粘り強い。

5回裏、二番の阿部真宏からの打順だったが、三者凡退。ローズは新垣から二打席連続三振を喫する。これはますますこのルーキーをほめたくなってしまった。

6回表、門倉も負けじと三者凡退にとる。こちらは下位打線相手だったが、柴原、ネルソン、鳥越はそうなめたものでもなく、やはり立派だと思う。

6回裏。そろそろ猛牛いてまえ打線にエンジンがかかる頃である。先頭の礒部セカンドゴロでワンナウト。つづく北川、毎度お馴染み「逆転イッパツマン」のテーマに乗って打席に入る。眼下の子供達が「アンパンマーン」と声をかけていて非常に笑った。

その北川、ここまで打ちあぐねていた新垣の速球にうまくあわせてライトへ弾く。打球は柴原と村松の間を転々、その間にセカンド到達。一死二塁。川口、これに応えて同じようなコースに打球を飛ばし、これがタイムリーツーベースとなる。これで2−2の同点。

さらに星野もライト線へ強い打球を返してツーベースヒット! 北川、川口、星野の三連続二塁打で一挙逆転。3−2とする。バファローズファンにとっては、これまでの我慢が花開いた瞬間である。耐えた分だけ、カタルシスは大きく、歓呼、歓呼で埋まる一塁側。

なおも藤井がレフト前ヒットで続いて一死二、三塁。バッター、大村というところで新垣、無念の降板。5回1/3を3失点。奪三振は2ながら、それが全てローズからと言うところに新垣らしさ、と言うものを見い出してもいいのではないかと思った。

正直よく投げたとは思うが、最後はいささか集中力が切れてしまったのか、同じようなところに投げて同じようなところに打たれてしまったように見えた。これがアレだけの投球をしながら負け越している理由なのかもしれないと思ったりした。

ピッチャーは篠原。バッター大村に対して、ライトスタンドのみならず一塁側総出とすら言えるタオル踊りの熱い声援。これを受けての打球は、惜しくもセカンドゴロ。4−6−3とわたって併殺。チェンジ。とどめの一撃は出なかったものの、下位での逆転劇はいてまえの面目躍如。守備につく面々に一層の声援が送られた。

7回表、南海時代いらいのグリーンの旗も翻る中、レフトスタンドではラッキーセブンの球団歌合唱。ホークス戦が久しぶりと言うこともあり、一塁側ながら私も歌う。マウンドには小池があがった。ホークスは一番からの好打順。それでも小池はバルデスを歩かせただけでノーヒットに抑える。逆転したあとの大事な場面、小池、グッジョブ、である。

7回裏、そして今度は「Dream&Power」の番である。両方歌うのも私くらいのものだろう。バファローズも二番からの好打順、篠原の前に見事沈黙。戦前の予想を覆す投手戦の展開に私は満足なのだが、派手な打ち合いを期待してきた人たちにはいささか物足りないだろうな、とは思う。

8回表、小池に代わって三沢が。松中にヒットを打たれるもズレータをショートゴロにしとめて6−4−3。柴原もセンターフライに打ち取ってチェンジ。
好リレー。

8回裏、マウンドには吉田があがる。吉田修司が巨人のドラフト一位だったことをここにいるどれだけの人が覚えているのだろうか…。というかそのときまだ生まれていなかったと思しき子供達も結構な数いるので率としては大分少ないと思われる。

その吉田、先頭の礒部にセンター前ヒットを浴びる。北川ショートゴロでランナーはセカンドへ。代打鷹野サードゴロ。代打吉岡に物凄い声援。よみうりランドのジャイアンツ球場で苦しい日々を送っていた頃を思い出し、ホロッと来た。バファローズに来て、ホントに良かったね吉岡、と心で語りかけてしまう。

この元・ジャイアンツ対決はこれまた元・ジャイアンツの王監督敬遠を指示しておじゃん。ホントに敬遠が好きな監督だよな、と誰かの声が聞こえた。ランナーがたまって、バファローズファンチャンステーマを発動させる。いつものタオル踊りではなく「藤井根性見せたれー!」というタイプの応援。この「根性見せたれー!」というところがいかにもチームカラーにぴったりで思わず私もつり込まれてしまった。

そして藤井は、根性を見せた。追い込まれてもファール、ファールでひたすら粘る。その間もバファローズファンは「根性見せたれー!」の大合唱。休むことなく声援を送りつづける。バファローズファンの声も枯れはじめてきた頃、打球は前に飛んだ。右中間に飛んで、大飛球となった。これはスタンドには及ばなかったものの藤井“根性の走塁”と相まって二点タイムリースリーベースとなった。藤井の根性を見せてもらった。続く大村三振でチェンジだが、場内の興奮はあまり醒めていない。守備につく藤井に、感極まったような大声援。波濤のような藤井コールの声、声、声。

9回表、シメに登場したのは高村だった。高村、なれぬリリーフで井口にデッドボールを与え川崎にライト前ヒットを打 たれながら、それでもなんとかゼロに抑え、チームに勝利をもたらした。終わってみれば5ー2。点差以上の緊張感があり、また打も投も楽しめた。さらにいうならば首位攻防戦という状況下ならではの好ゲームだったと思う。野球への餓えを満たすにはこの上ないものだった。

帰宅後、珍しくスポーツニュースを見ていたらちょうどこの試合のことをやっており、8回裏の出来事を「ホークス中継ぎ陣に不安」と解説していたが、あの現場に居たものなら「違う」と思ったことだろう。「アレは藤井の根性が勝ったんだ」と。

「根性見せろ」と要求するファンが居て、それに応える9番バッターが居て。やはりこのチーム、素敵である。また大阪ドームに行こう。マリーンズ戦でなくても行こう。そんな気持ちになった。

勝利投手  門倉  4勝1敗
セーブ   高村  5勝2敗2S
敗戦投手  新垣  4勝7敗

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