7月26日 近鉄−西武
(大阪ドーム)

(京都府・ふさ千明)

バファローズのBはビクトリーのB

セントラルリーグでは阪神タイガースが首位を独走し、マジックも着実に減る。疑り深いベテランのファン達もようやくその半信半疑の瞳を七分三分くらいに緩めはじめた、そんなころ。

我らがパシフィックリーグはどうかといえば。首位ダイエーホークスを近鉄&西武で追い掛けるという、今年もやってきた「熱パの構図」。七月はここまで雨に祟られ思うように観戦できなかった私は、月末になってようやく時間が取れたこともあり挑戦者決定戦とも言うべき近鉄−西武戦に足を向けた。

大阪ドームは夏休み期間、外野席をおとな600円と言う破格値(ファンクラブ割り引きより安い!)にしていた。「優勝して阪神と御堂筋シリーズをやるんや!」と言う意気込みのもと、観客を増やして選手の士気を鼓舞すべくバファローズ営業部の下した英断だろう。この心意気に感じ入った私は割引を利用せず、あえて内野指定席を購入した。

中に入ってみると。一塁側は上段席まで大分埋まっていた。内野指定ですら七割方人が入っているようだった。三塁側もそこそこの入り。この日もまた遅刻してしまい、着いたときにはすでに一回の裏ワンナウトランナー一塁。バッターはローズというなかなかいい状況。

帆足ボールが決まらずに苦しみながらもしぶとくコーナーを突いて見事見逃し三振にきってとった。一死一塁でバッターは中村。最近不調をかこっているがそれでもホームラン16本はさすが。帆足も投げにくそうにしていた。ストライク、ボール、ファールときての四球目、まん中よりに入ってきたボールをセンターへ弾き返してランナーは三塁へ。

二死一、三塁と変わる。吉岡、この場面で期待に応えてセンター前ヒット三塁ランナー生還してバファローズ一点先制。なおもランナーは一、二塁。北川ストレートのフォアボールで満塁。初回からあっぷあっぷの帆足。内野陣が心配してマウンドに集まる。 ライトスタンドすかさず「ハヨヤレ」コールの大合唱。帆足はこれが効いたのか阿部をサードゴロに打ち取る。これで長い攻撃もようやくチェンジ。

さて。ここでオーダーを記しておきたい。

先攻のライオンズ
一番ショート松井、二番センター佐藤、三番レフト和田、四番DHカブレラ、五番サードマクレーン、六番ライト大島、七番ファースト後藤武、八番キャッチャー細川、九番セカンド高木浩、ピッチャー帆足。

後攻のバファローズ
一番センター大村、二番セカンド水口、三番レフトローズ、四番サード中村、五番ファースト吉岡、六番DH北川、七番ショート阿部真、八番ライト下山、九番キャッチャー藤井、ピッチャーバーン。

ライオンズの方はここ数年見る機会が乏しかったためスタメンを見て正直戸惑うほどである。特に七番八番は今日初めて見るので、じっくり楽しみたい。バファローズの方はおっさんルーキー下山が楽しみだった。噂の長打力はどれほどのものか。あと付け加えるならば我がマリーンズのチーム本塁打数を二人で凌駕しかねないカブレラとローズのホームラン合戦も楽しみであった。

また。この試合の両先発だが。最初に各々の総評をしてしまうと。バーンは元中日のアンダーソンを思い出させるようなピッチングだった。速球のコントロールはいまいちだが変化球をうまく使い分けることで空振りをとっていく。帆足は左バッターのときには強気。右バッターのときには弱気。バッターの強弱に関わらず一貫してそんな感じだった。

二回表。
ライオンズはマクレーンから大島、後藤武と続く攻撃。三人共バーンの速球に押されている。マクレーンは詰まってライトライナー、大島は速球に手こずった挙げ句変化球で空振り三振、後藤はどん詰まりセカンドフライ。

二回裏。
おっさんルーキー下山鋭い打球でセンター前ヒット。九番藤井なので当然のように送りバントの構えなのだがライトスタンドは「続け続け藤井」コール。先日は先日で「根性見せたれ」と要求するし。このノリは後述の水口の応援歌にも言えることだが、いかにも近鉄らしくて好ましい。藤井、惑わず初球を送りバント。きっちり決まって下山二塁へ。

バッタートップにかえって大村。期待は大きかったがショートゴロでランナー進めず。二死二塁。「♪栄治のバットが火を噴くぞ、ソレホームラン」と応援歌の歌詞にホームランの文言が入っている中でも特にホームランとは縁の薄そうな(失敬!)水口、叩き付けるバッティングはサードゴロ。ぼてぼてすぎてセーフかと思ったがマクレーン素早く捕ってスナップスローで一塁へ。間に合ってスリーアウト。

三回表。
細川、高木浩之、松井と三者凡退。

三回裏。
ローズ、中村と倒れてこちらも三者凡退かと思ったら吉岡がフルカウントから打って出てセンター前ヒット。北川もレフトへフェンス直撃のシングルヒット。当たりが良すぎるとこうなりますという見本のような打球だった。バッター阿部と言うところでタオル踊りが発動する。帆足も何だか投げにくそうに見えた。というか、たぶん投げにくいんだと思う。しかしここは踏んばって空振り三振に切ってとる。帆足もまた、見事。

四回表。
佐藤の打球はサードへ。中村これを弾いてしまう。無死一塁。バッター、和田。初球ボールのあとの二球目、バーン一塁牽制! タッチアウト! バーンを褒めつつ、何だか西武らしくないなぁ、と思ってしまう私はまだ森西武の幻影に引きずられているのだろうか。と言ってる間に和田もショートゴロでツーアウト。バッターカブレラ。

なんだかんだでここまでノーヒットか、と思った瞬間だった。打球が、消えた。正確に言うと見失うほどの鋭い打球がレフトに飛んだ。カブレラの本領発揮ソロアーチで1−1の同点。マクレーンもライナー性の打球をレフトに飛ばし、二死一塁。しかし大島続けずセカンドゴロ。チェンジ

四回裏。
同点になったあとのこの攻撃、下位からだが、それだけに重要とも言える。バッターは先ほどヒットを打った下山。ボール、ストライク、ファールでカウントツーワン。四球目、バチッとあったタイミング。ライト方向へ飛んだ打球は、全盛期の清原を思い出させた。追い付かれたらすかさず突き放すおっさんソロアーチで2−1。

藤井も右方向へ鋭い打球。高木浩之横っ跳びも及ばず、ライト前ヒット。大村ストレートのフォアボールで無死一、二塁。バッター水口、バントの構え。バッテリー、これを外してすかさずセカンドへ送球! 藤井反応鈍くタッチアウト。さすが西武。しかし次の球で大村盗塁。細川虚を突かれて送球遅れ、セーフ。一死二塁。そのうえ水口フォアボールで一死一、二塁。似たような展開再び。

ただ、今度はバッターがローズだった。しかし、帆足何を根拠にしているのか妙に落ち着いている。初球、二球目と大胆にストライクをとっていき、最後は空振り三振。しかも再度ランナーを刺して三振ゲッツー成立。三振と二走塁死でチェンジと言う非常に珍しい展開。

五回表。
先頭の後藤三振に倒れ、バッターは細川。先ほどの打席は三球三振であり、この打席もあっと言う間にツーナッシングになった。しかし、ここからが違った。ボールを挟んで四球目、先ほどのカブレラの打球をなぞるかのような爽快な一発。同点ソロアーチで2ー2。「これが上位同士の試合か…」と呟く私。高木、松井と倒れるも、さすが西武と唸らされる展開である。

五回裏。
早々と帆足降板。ピッチャー芝崎が告げられる。中村がヒットで出るも、後続がばたばたと倒れて一塁残塁。あっさりチェンジ。そして。このあと、「レッドdeハッスルOSAKA SONG 2003」なる曲が、場内に流れた。しかもオーロラビジョンに映像入りで。これのために作ったプロモーションビデオを流しているそうである。

近鉄電車の車内で「大阪をまっかまっかに染めまっか」というフレーズの広告を目にしたことが何度かあったが、それ絡みの曲だな、と言うことは想像にかたくなかった。しかし。その内容はこちらの想像をはるかにこえていた。

インパクトだけが脳に焼き付き、歌詞が余り良く思い出せないのだが、一つ覚えているのは間奏時に「バファローズのBはビクトリーのBや!」という赤の文字列が表れ、それにすかさず「ビクトリーはV」の文字列が突っ込みを入れるということ。泉南河内と言った大阪南部のおっちゃんなら一度は口にしたであろうギャグなのだが、こうして見るとかなりインパクトが強い。

圧倒されながら「近鉄はつくづく自分とこのチームカラー良く分かってるよな」と考えたりした。いちいち引き合いにだすのもなんだが、伊良部にファッションモデルのまねごとさせてしまったうちのチームよりはるかに良いだろう。一種独特の雰囲気のうちに曲は終わり、試合は何ごともなかったかのように再開された。

六回表。
佐藤、和田、カブレラと続く打線が三者凡退。バーンがいいのか、それとも別の理由か…。

六回裏。
ライオンズのピッチャー、昨日五勝目をあげた長田に代わる。その長田、先頭の下山にいきなりデッドボール。今日二打数二安打一ホーマーのバッターだけに、一塁側からの野次が凄い。そこにすかさず藤井が初球きっちり送りバント。一死二塁。大村も初球打ちでライト前ヒット。一死一、三塁。水口に代打星野。ファーストゴロ。ファースト後藤、ベースを踏まずにセカンドへ送球。しかしルーキーの悲しさか、これがそれて松井の横を抜けレフトを転々。この間に下山生還して3−2。

なお一死一、二塁。これで長田降板。ちょっと気の毒。ピッチャーは三井に。ローテーションも任せられそうなピッチャーが中継ぎで出てくるのはさすが。しかし三井、期待に背いてローズにフォアボールを与える。これで一死満塁。ノリ中村登場。ライトスタンドからは暴れん坊将軍のテーマが。やっぱりノリはスターなのだと再認識する。球場の雰囲気が違う。ノリ、期待に応えてセンター前タイムリーヒット。ノリ、これで猛打賞。大村生還して4ー2。なお一死満塁。

三井降板で告げられたピッチャーは、なんと松坂大輔! 思わぬ千両役者の登場で、満場拍手喝采大騒ぎ。しかし私は「できればノリの打席で出てきてほしかったなぁ」と贅沢なぼやき。レフトもライトも関係なく、視線は松坂に集まる。病み上がり休養明けだが、そのピッチングは十分注目に値する。ピッチング練習の一球たりとも見のがしたくないと思わせてくれた。

しかし、やはり中継ぎには向いていないのか。吉岡レフト前ヒットで一点献上。5−2。そしてなお一死満塁は続く。北川にはフォアボールで押し出し。6−2。満塁祭りは五人連続で続き、バッター阿部。阿部、松坂の速球を強振! 横っ跳びした松井の横を抜けるレフト前二点タイムリーヒット。8−2。打者一巡で下山が打席に。松坂ようやく落ち着いたか空振り三振。藤井もライトライナーで長いイニングが終わった。

七回表。
大勢決したようにも見えるが、昨日九回表に八点取ってるだけあってレフトスタンド全然あきらめていない。「さすが20年Aクラスのチームは違うよなー」と感心。さんざん家の近所の西友で聞いた『吠えろライオンズ』が「ほーえろーライオンーかっ飛ばせーライオンーほーえろーライオンー西武ーライオンズー」と声高らかに歌われる。

それに気を良くしたのかどうか。先頭バッターマクレーン、初球打ちは今日三度目のレフトへのソロアーチ。これで8−3。さぁ、これを反撃の狼煙とできるかライオンズ。その意気込みも大島センターフライ、後藤ライトフライ、細川空振り三振で断たれスリーアウトチェンジ。

七回裏。
ピッチャーは松坂から土肥に代わる。松坂はアレで調整になったのだろうか…。先発復帰はマリーンズ戦からと聞いていたので、ちょっと気になった。先頭の大村ショートゴロ。星野には代打鷹野。鷹野、態勢崩しながらもレフト前ヒット。すかさず代走前田が告げられる。一死一塁でバッターはローズ。ここまでノーヒットだが、それでもファンの期待は大きい。点差とかそういうものはもはや関係ない。みなローズのホームランが見たくて盛り上がっている。

ローズもそれに応えて、フルスイングを繰り返す。だから、ここまで3タコ2三振でも歓声がひときわ大きいのである。ストライク、ストライク、ボール、ボールときての五球目、フルスイングの空振り三振! 胸のすくようなスイングだったからか、はたまた大量リードの余裕か、近鉄ファンから温かい声が複数かかる。中村ファーストファールフライでチェンジ。大量点差での気楽さからかも知れないが、ここは素直に土肥を褒めたい。

八回表。
代走の前田がショートに入り、阿部がセカンドに回った。昨日の中継ぎ崩壊に懲りてか、今日はバーン続投である。高木ショートゴロ、松井空振り三振、佐藤空振り三振で三者凡退。ライオンズ、打つ手はないのか。頻繁な投手交代とは反対にここまで代打なしなのは監督のこだわりなのか。

八回裏。
ピッチャーは大沼に。なんのかんのいいつつ、やっぱりリーグ一豊富な投手陣はここだと痛感する。吉岡サードゴロ。北川が今日三つ目のフォアボールで出塁するが阿部のゲッツーでチェンジ。大沼、仕事きっちり。

九回表。
バーン悠々完投かと思ったら、高村に代わった。和田ファーストファールフライ、カブレラ三球三振、マクレーンフォアボールで二死一塁。大島サードフライでゲームセット!

ヒーローインタビューはプロ入り初ホームランが決勝打になった下山が呼ばれた。「みなさんの声援のおかげで打てました!」と殊勝なことを言っているのだが、あんまりウケてない。マリーンズの選手がこんなこと言ったらライトスタンド大歓声が沸き起こるのだが。やはり笑いを取った方がウケが良いのだろうか。

今日はあらゆる角度で近鉄の魅力を堪能できたように思った。しかしなにより「やっぱりAクラスって良いなぁ…」としみじみ思ってしまった。優勝の望みがあり、戦力が整い、そして何より盛り上がりが違う。いつしか私も、千葉マリンスタジアムでこのような状況を楽しみたい。頑張れマリーンズ。

Bu 8−3 L

勝 バーン4勝6敗
敗 長田 5勝5敗

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