8月3日 近鉄−ロッテ
(大阪ドーム)

(京都府・ふさ千明)

「じゃ、お先に失礼しまーす」と職場をでたのが、9時40分。とっとと官舎に帰って汗を流し、一式準備し、いざ出発。途中地下鉄でバファローズユニフォームを着た少年たちが多数乗って来て、車内の野球濃度が上がり、私の観戦に向けてのテンションもあがった。

球場に入る際に「フルスイング!」と書かれたうちわをもらう。裏にはスポンサーの名入りで「目指せ、日本一!!」と書かれているのはいいのだが、そのスポンサーが現在日本一他人を心配している場合じゃない企業であるりそな銀行だったのでちょっと笑った。

試合開始までまだ余裕のある時間帯だと言うのに、すでにレフトスタンドは真っ黒。ライトもかなり赤で染まっている。それでもようやく座席を見つけて一息つくと、既に名物と化した感のある「レッドdeハッスル」が流れてきた。

今日は関東各地から来たマリーンズファンが多く、曲が始まると「何だか凄いことになってるぞ」という空気が色濃く流れた。しかし戸惑っているのはマリーンズファンだけではないようで、バファローズファンがこの歌に合わせて何かやっているというのはまだ見たことがない。そのうち踊ったりするのかもしれないが。

できれば逆転優勝して日本シリーズで流してほしいと思うのは私だけだろうか。セリーグしか見ない人たちが「近鉄はこんなオモロイことやっとんのか」とひとりでも思ってくれればめっけもんである。個人的にはこの歌のCD、できればプロモーションビデオも入手したいのだが。球団にはなんとか発売を検討していただきたいものである

さて。この日は夜勤明けで何も食べていないため試合開始前の腹ごしらえと言うことで売店へ出向き、環状線弁当とか猛牛弁当とか色々あった中でローズ弁当を買ってみた。マリーンズも幻の背番号4ことR・ローズ入団にあわせて「ローズカツ弁当」なるものを企画していたが。そのことを思い出してちょっと複雑な気分になった。

開けてみると、コンセプトの良く分からない弁当だった。ローズをイメージしたのだろうが、正直どの当たりにそれが表れているのかよく分からなかった。かろうじて豆のケチャップ煮がソウルフードっぽくてそれに該当するか。太巻きやら鳥の唐揚げやら個々の味は悪くなかったのだが。ちょっと選手弁当としては惜しい感じ。

また、ゲートのところに紙がはってあり、なにやら告知してあった。見てみると、マリーンズのユニフォーム姿でライトスタンドをうろつく者がおりトラブルの素になっているため、一見して分かる姿でライトスタンドには行かないようにと呼び掛けるものだった。なんだかなぁ。

大阪ドームに限ったことではないが、外野という場所はどうにもトラブルになりやすいようで。選手に物を投げたりという不届きな輩も現れたりする。私などは食べ物を求めて方々うろうろするのでこの警告にもあてはまりかねない。気をつけたいと思いつつ、ここがビジター球場であることを再認識させられた。ビジターのファンであっても、それを忘れさせるような居心地の良さがここにはあったのだが。いろんな意味で残念である。

閑話休題。無駄話はこのくらいにして本筋に戻ろう。

スタメン発表。
先攻マリーンズは1番ショート小坂、2番レフト井上純、3番セカンド堀、4番DHフェルナンデス、5番ファースト福浦、6番サードR・ショート、7番ライト立川、8番センター諸積、9番キャッチャー里崎、ピッチャー渡辺俊介。

後攻バファローズは
1番センター大村、2番セカンド星野、3番レフトローズ、4番サード中村、5番DH川口、6番ファースト北川、7番ライト礒部、8番ショート阿部真、9番キャッチャー藤井、ピッチャーバーン。

スタメンのいじり方、マリーンズが相変わらず顕著である。広岡元GMが見たらなんと言うか…。とにかくいじり方にポリシーの感じられないのである。打順ごとの役割とかそういうことをどれだけ意識しているのか。無為無策でいるよりは良いのかもしれないが、「勝ちゃあいいんだ」的であり、ビジョンが感じられないのがファンとしては非常に残念だ。

対するバファローズはどのように成績が変動してもローズ&中村は不動であり、その他の選手も入れ替えはしても打順は激しくいじらない。あまりこの辺の違いが自信の差、ひいては順位の差に表れているように思えてならない。

プレイボール。

1回表。
小坂空振り三振。井上純ぼてぼてのショートゴロ。堀、じっくり見てフォアボール。二死一塁。バッターは四番、ホセ・フェルナンデス。おとといの貴重なホームランを目の当たりにしているだけに期待は大きい。4球目で堀、スタートを切った。藤井不意をつかれて送球できず。二死二塁。常にない積極的な展開に意気あがるレフトスタンド。ノーヒットながら得点圏にランナーは進み、バッターは四番打者。いやが上にもボルテージはあがる。そしてフェルナンデス、フルカウントからの6球目を悠々見逃してフォアボール、かと思ったらアムパイアの右手が挙がった。見逃し三振でスリーアウト。この、ランナーは出るんだけどあと一本が出ずに先制機を逃すというシーン、何度見てきただろうか…。

1回裏。
毎回書いているので恐縮だが、これを書かないと俊介登板の実感がでないため今回も書かせていただく。マリーンズの先発渡辺俊介は現役では日本一低いところからボールを投げるピッチャーである。変則投法のためバッターとしてはタイミングが取りにくく、打たせて取ってなんぼだが、それだけにタイミングがあったときはポンポン飛ばされる。カブレラを初めとして、タイミング外しても力で持って行けるバッターなんぞもいるので、正直なところ猛牛いてまえ打線相手にどこまで通用するか…。そういう不安もあるので今日は常にも増して打線には早めに先制点を取ってほしかったのだが。

大村変化球引っ掛けてセカンドゴロ。星野は戸惑いながらもよくボールを見、そしてよくあわせてファールで粘った。結果はセンターフライだったが、次打者にはいい援護射撃になったのではないだろうか。そして迎えるバッターはローズ。被本塁打率の高い俊介にとっては、何よりいやなバッターであろう。ローズのフルスイング初球打ち。高くあがった打球に思わず頭を抱えて絶望したが、失速してライトフライ。俊介もライトスタンドもホッと一息。チェンジ。

2回表。
福浦空振り三振。R・ショートの打球は阿部真の守備範囲。深いところで掴んだため一塁セーフかと思ったが鈍足が災いしてアウト。この場合は阿部を褒めた方が良いのだろうけども…。ツーアウトになってバッターは立川。昨日の試合でこそタイムリーが出たが、トータル的にはここのところあまり仕事のできていない立川である。

彼の登場時、本来ならSANBA DE JANEIROのアカペラで迎えるところだがライトスタンドは静寂を保つ。バッターボックスにたって2球目から応援をはじめるも、あまり熱はこもらない。いつもとちょっと違う雰囲気の中、3球目デッドボール。これにもブーイングより拍手の方が多かった。

二死一塁でバッター諸積。初球バントの構えに「ツーアウトだぜ」とライトからも声が飛ぶ。95年にはやたらセーフティを決める選手だったモロも近年はバントの下手なイメージの方が強くなってしまった。初球はバットを引いてストライク。2球目ボール。3球目ファール。4球目で立川盗塁! 本来走攻守三拍子揃った選手として入団したことを思い出させてくれる、そんな快走で二死二塁。またも得点圏にランナーが進んだ。しかもノーヒットでだ。今度こそ、と意気込んで見つめる5球目、またもアムパイアの右手が挙がった。見逃し三振でスリーアウト。また、同じ展開。

2回裏。
中村振り鈍くショートゴロ。川口2球目をうまくあわせてレフトへ持って行く。ボールが井上純の右を転々とする間に川口二塁到達。一死二塁。得点圏でバッターは“逆転イッパツマン”の北川。セカンドゴロ。礒部もセカンドゴロでチェンジ。

3回表。
里崎粘るもどん詰まりライトフライ。小坂振り回してサードファールフライ。井上純空振り三振でスリーアウト。素人目にもバーンの速球に力負けしているというのが分かって来た。

3回裏。
阿部真、初球を打って三塁線に良いゴロが飛ぶ。これをR・ショートが横っ跳びで捕らえて一塁送球。間にあってワンナウト。藤井、ファール3つと粘るがサードゴロ。大村は粘りがちのセンター前ヒット。しかも大村は続く星野の2球目で盗塁を決める。得点圏に俊足のランナーが進んで、バファローズには絶好の先制機。しかし星野ファーストゴロでチェンジ。俊介粘り勝ち。

4回表。
堀セカンドゴロ。フェルナンデスフォアボールで一死一塁。ここまでノーヒットながらランナーは確実に出ている。そろそろ付け込まなければ。折よくバッターはチーム一の巧打者福浦。期待は膨らみ「俺らは叫ぶ〜打て福浦〜」の声援にも一層熱が入ったが中途半端なスイングでの空振り三振。R・ショートもセンターフライでランナーまたも残塁。打線がまたも機能しない。

4回裏。
ローズ、またも初球打ち。またも高くあがった打球は左中間の深いところ、ちょうどスタンドからは見えない当たりに行った。祈りを捧げて結果を待つとレフトフライ。中村は高めのボール球振って3球三振。川口ショートライナー。ジャンプした小坂のグラブにすっぽり納まりスリーアウト。

5回表。
三者凡退。立川、諸積、里崎の三人は守備より打撃でスタメンに名を連ねているのではないのか…。工夫ゼロ。

5回裏。
北川、チョーンという感じで出したバットでライト前に運ぶ。さぁ、ノーアウトのランナーが出てしまった。礒部、なんと送りバントの構え。きっちり決めて一死二塁。マリーンズなら福浦クラスのバッターなのだが。梨田監督の執念というよりも、むしろ「これがAクラスの野球だよな」と思った。正直な話、先ほどの福浦の打席、送らせても良かったのではないか。

バッターボックスに阿部真が入る頃、ライトスタンド推定3000人が一斉に立ち上がり真紅のマフラータオルを構えた。名物タオル踊り発動である。阿部が初球に手を出してショートゴロになってもやむことなく、次打者藤井に飽くなき声援を送る。「藤井、藤井」の大合唱。個人的な印象だが、この藤井という選手には勝負強いイメージがある。「根性見せたれー」と言われて吉田修司からタイムリー打った時もそうだが、とにかく相手チームが「ここで打たれたくない」と言う場面でしっかり仕事をしている。

一番マリーンズに欠けていると思われるタイプだけによく覚えているのかもしれない。ともかく、この場面で迎えたくなかったと言う意味では、私の中ではローズに匹敵した。俊介もなにかいやなものを感じたのかボール先行、投げにくそうにしている。タオル踊りに圧倒されているのかもしれないが。

ファール一つ挟んでカウントワンスリーになった5球目、打球は美しい弧を描いて立川の前に落ちた。先制タイムリーとなって北川生還。1−0。大村セカンドゴロでチェンジとなり失点は最小ですんだが、打線が頼りないだけにいやな一点である。

5回終了したので再び「レッドdeハッスル」が流れる。試合開始時にはいなかった人も含めてざわつくレフトスタンド。「まっかまっかって」「ビクトリーのBらしいぞ」「とりあえずこれ聞けたから来た甲斐あったよ」等々。試合開始前にも増してなにやら周囲で話している声が聞こえてくる。反響は上々のようである。

6回表。
小坂また振り回してレフトファールフライ。井上純、ツーナッシングからファール4つ粘ってフォアボールを稼ぐ。今のは明らかに粘り勝ち。本来はこういうことを小坂にやってもらいたいのだが…。一死一塁。そしてアナウンスにて代走早坂が告げられる。井上もそんなに足の遅い選手ではないので、というかむしろルーキー早坂とは走塁技術を差引すれば同等ではないかな、と思い交代には首をかしげてしまう。その早坂、しきりにリードを取り、バーンの集中力をそぐ。二度三度と牽制が行われ四度目、タッチアウト。脱力。堀もショートゴロでどっちにしろゲッツーだったような気もする。後ろ向きに結果オーライ。

6回裏。
星野には粘られつつファーストゴロ。ローズがバッターボックスに入ると、内野の守備陣形が大きくライトに寄った。サードを空けて堀が一、二塁間を守る。ローズシフトとも言うべき形になった。それでもフルカウントからの6球目をライト方向へ打ったローズ、見事。結果はライトフライだったが自分のバッティングを貫いたのは見事と言うしかない。中村、カットカットでヒット狙いにかかったが、10球目カット失敗してサードゴロ。結果は三者凡退だが、だいぶタイミングが合ってきた。そろそろ代え時だろうが、好投を続ける俊介だけに、一点ビハインドでは交代させにくい。打線に期待するしかないところなのだが…。

7回表。
「俊介を見殺しにするんじゃねぇぞ」といういささか気荒い念を込めながらウィラブマリーンズとTake me out to the ballgameを歌う。場面としてはソロアーチ一発でかまわないので、そういう意味では一番期待のできるフェルナンデスからなのはラッキーである。期待にそぐわず大飛球が左中間に飛んだ。スタンドにはわずかに及ばないがフェンス直撃し、マリーンズ待望の初ヒット。フェルナンデス当然のようにセカンドに向かったが大村好返球。タッチアウト。今日一番の脱力感。こんなんだったらいっそノーヒットノーラン見たかったと言いたくなるくらいの脱力感。福浦、ショートともにバーンの速球に詰まらされ外野フライ。チェンジ。

7回裏。
風船飛ばしとドリーム&パワーの間に飲み物を買ってくる。順番を待っていると、後ろの喫煙コーナーから近鉄ファンのおっちゃんの嘆きが聞こえて来た。「ロッテとやるとなんかこう、試合がウチらしゅうないなぁ。勝負やから勝ち負けはしゃあないけど、うちらしゅうない試合になんのはイヤヤナァ」うーん。マリーンズファンとしては「いつもの展開」なのだがバファローズにしてみれば「相手のペース」なのかも知れない。

代走の早坂センターに入り、センターの諸積がレフトに回った。いつものパターンなのでこのときは全く気にしていなかったが、これが伏線になるのだから野球はホントに油断できない。川口の打球はファーストへ。「よっしゃワンナウト」と思ったら福浦がうまくさばけずファースト内野安打に。北川バントの構え。礒部に送りバントさせるくらいだから不思議はないのかもしれないが、やっぱり一点リードしててのこの姿勢は見習うべきであろう。

礒部、意地&技ありの流し打ちはレフトへ。諸積追い付けずボールは転々する間に川口生還して2−0。礒部はセカンド到達してこれで一死二塁。続く阿部も同じようにレフトへ打って二者連続タイムリーツーベース。3−0。藤井空振り三振でツーアウトもなおチャンスは続き、祭りは続く。大村のレフト前ヒットは打球の速度が速かったため強肩の選手であれば刺せたかもしれなかったが、あいにくと諸積には無理だった。阿部生還で4−0。星野ショートフライで長い攻撃が終わった。

8回表。
立川、諸積と連続で空振り三振。あっと言う間にツーアウト。里崎、初球攻撃。沈滞したレフトスタンドを一気に沸点まで押し上げるパワフルな右打ちで4号ソロホームラン。小坂セカンドゴロ。

8回裏。
ピッチャーは俊介から高木に代わった。代えるんならもう少し早く、とも思ったが、今の打線では一緒か。ローズには決めダマに苦しみながらもファーストゴロ。中村にはヒット狙いされて綺麗にセンター前に弾かれる。一死一塁。今日2安打の川口には代打吉岡がコールされた。梨田監督も左右にはこだわる人であるが…いいのだろうか。吉岡はピッチャーゴロ。高木から小坂、福浦とボールは渡りダブルプレー。チェンジ。

9回表。
3点差を追い掛けての最終回。レフトスタンドのテンションは未だ冷めていなかった。「俺たちの誇り千葉マリーンズ」を高らかに歌い「あきらめるなよ!」とマリーンズナインへ意思表示。

井上純速球に押されて空振り三振。堀はフォアボールで一死一塁。フェルナンデスライトへの飛球、礒部がランニングキャッチ。ツーアウト。バッターは福浦。今日チームが2安打なのに3打席もランナーがいる場面で回って来ている。3度目こそなんとかしてくれと願いを込めるがショートゴロで万事休す。ゲームセット。

振り返ってみれば、バファローズはランナーを出したとき2度送りバントをし、2度とも得点につなげた。それにたいしマリーンズは犠打ゼロ。ついでに代打もゼロ。負けるべくして負けたように思えてならない。バーンの速球のキレは確かに良かったが「相手のピッチャーのキレが良かったから駄目でした」というのはプロとしていかがなものだろうか。これがAクラスとBクラスの、ひいては優勝を争えるかどうかの差なのではないかな、と思ったりした。

M 1 − 4 Bu

勝利投手 バーン  5勝6敗。
敗戦投手 渡辺俊介 3勝3敗。

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