8月31日 五輪予選壮行試合 五輪日本代表−ヤクルト・巨人選抜
(神宮球場)

(千葉県・ふさ千明)

私は物心ついてからは初の神宮観戦なので少しはしゃぐ。ためにバックネット5列目が空いていたのをいいことにここで見ようと主張して同行者を手こずらせる。滅多に見られない席に座るチャンスだと息巻いていた。結局グラウンドレベルとほぼ水平ではかえって見にくいことが解り、後に移ることになったが。

この日は夏休み最終日。ためか我々の2列前では子供が宿題持参で取り組んでいた。その隣ではやはり子供がカラーゲームボーイに興じていた。何しに来た。いくら小学生は無料だといってもあんまりだろう。試合始まってまでやっていた。一体何しに来やがった。

席についてまもなくスターティングメンバーが発表される。先発の榎をはじめ、スタメンの大半が1軍経験者であり前日の日ハム・西武連合ようにはいくまいと期待する。

2軍と言えどプロはプロだ、と思っていた。この試合を見るまでは。と言うか、佐々木明義の先頭打者ホームランを見たときも、まだそう思っていた。

しかし、4回が終わる頃には目が覚めた。この時点で3−1。全日本チームリード。試合が進むうちに、ファーム連合が妙にやりにくそうにしていることに気がついた。

相手が相手だからかと思ったが、それよりも普段敵味方の人間と組んでいるためにしっくりこないようにも見える。合同練習の機会もそうあったわけではないだろうし。 

同じチーム同士でしかバッテリーを組まないのは、サインなどの関係上やむを得ないのだろう。ただ、スコアボードのチーム名<ヤ巨>の文字が最後までしっくりしなかった。

5回。全日本の鷹野が死球を食って代走を出される。予選でならともかく練習試合の、しかも3−1で勝っている場面でのことであり、気の毒に思った。7回にヤクルトの小野が2度のパスボール。巨人のピッチャー相手ならば、慣れない相手だ仕方ない、ともなろうが、自軍のピッチャー相手にこれではなぁ、と嘆息一つ。「どっちがプロだ!」と野次が飛ぶ。

最初は静かだったのだが、回を追うごとに野次親父たちの本領が発揮され、にぎやかになってくる。どうやら巨人やヤクルトの野次親父のみならず、六大学やノンプロの野次親父たちも来ていたようで、変な表現になるが、七色の野次が飛ぶ。

どちらのチームにも容赦がない。特に負けているプロチームには身のすくむようなのが飛んだ。これだけでも個人的には元が取れた感じだ。関西だったらどうなったか、そのあたりも興味深い。

応援は、さすがに組織だった楽器のドンドンヒャラヒャラパラッパはない。ヤクルト→六大学→ノンプロ→巨人の順で拍手が小さくなるのが、ものすごくわかりやすい。ヤクルトのメガホン持参の人間もおり、ここが神宮であるという何よりの実感になる。

神宮の実感といえば、売店で売っていた「神宮観戦ガイド」が、プロ半分大学野球半分なのにも神宮らしさを見た。「らしさ」と言うよりは「ならでは」か。他の本拠地球場では見られない。思わず買う。試合は6−1で全日本チームが勝った。プロの意地は9回登板した入来兄がぴしゃりと締めて見せてくれた。

後日、阪神の2軍が単独で五輪選抜に勝利したというニュースを知り、巨人にしろヤクルトにしろ単独だったらまた違った展開になったのでは、と思わずにはおれなかった。

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