『勝利投手』      

 (梅田香子著/河出書房新社)

(愛知県・4番コーチンホームラン)

本書はプロ野球の世界に彗星のように現れた、一人の女子野球選手(国政克美)を主人公とした娯楽小説であります。そして広岡達朗氏(元西武監督)の愛娘がモデルだと言われています。

昭和61年に「文藝賞佳作」を受賞しており、星野監督を始め当時の多くの選手が実名で登場したり、作者が若い女性である(当時22歳)等と話題性が多く、「中日スポーツ」でかなり大きく扱われた事を覚えていますが、今まで読む機会がありませんでした。

しかし昨年暮れに正月用に買い求めた何冊かの野球4コマ漫画本に混じっていたので懐かしく、1日で一気に読破してしまいました。この間にアニメにもなりTVでも何回か放映したので観た人も多いのではないでしょうか?

当時、野球は男性のみの競技だったものが、最近では大学野球にも女子選手が参加し、また高校野球でも各地で男子に混ざってプレーする女子が居ますし、女子のみの硬式野球大会も行なわれています。いずれは、本書のように、プロに女子選手が現れるかも? と夢想するのも楽しいものです。

そして本書は、普通の野球小説としても十分楽しめる作品でしたが、野球小説の形を取った恋愛小説と言うべきだとも思いました。

何故、恋愛小説と思えるかは−「人生の勝利投手」−この言葉が語られる舞台であるラストシーンを読まれれば多分お解りになると思います。取り敢えずお薦めの一冊です。

なお作者は、本書を契機に「中日スポーツ」にコラムの連載を持ったり、レポーターとしてマスコミに登場したり、野球に関わる仕事を始め、近年でも新年のドラゴンズ特集に超短編小説を寄稿したりと、ドラゴンズと「中日スポーツ」とは縁が深いようです。

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