『投球論』
(川口和久・著/講談社現代新書)
(岡山県・おぐらだいすけ)
広島〜巨人と18年間、左腕のエースとして投げ続けた彼による野球論。先発とリリーフの両方を経験し、投球数はやたらと多いがバッタバッタと三振の山を築く、「無礼なピッチャー」であろうとした様を著したもの。
彼への印象は、1984年の日米野球での投打に及ぶ活躍、1991年の日本シリーズで全盛期の西武相手に孤軍奮闘、晩年のリリーフ転向時の変化球投手になってしまった(変化球自体が悪いというわけではない)ときの寂しい思い出がある。
またセーブがたった4つしか無いというのも意外な感じがした。胴上げ投手になったのと、やっとまともなリリーバーが出てくれた(石毛や西山が伸び悩み、マリオがネタ切れになって活躍できなくなった)という思いまら、もっと挙げてるのではないかと思ったものである。
カーブ主体になっていたものの、大野に続く40代投手も夢ではないなと思っていただけに、引退した時は非常にもったいない思いをしたが、肘や肩ならとこかく腰も相当ガタついていたという件には、余力を残してと見えていたので、意外だった。
彼自身の投球による変化球のあり方や組立方、在籍していた球団の両極端の特徴など余すところ無く書き上げたその文章力からは、解説そのままの面白さがにじみ出ている、入り口から奥深さ迄を識る上でも群を抜いていて、640円も手頃すぎる申し分ない値段である。