5月28日 明治大−東京大〜東京六大学春季リーグ戦
(神宮球場)

(東京都・むさし)

この日神宮球場で、明大・小林千紘(2年)と東大・竹本恵(3年)による東京六大学史上初の女子投手による先発対決があるという。この試合は本当は前日に予定されていたのだが、雨天により順延。ということで、少々予定が狂ってしまったが、そんなことはどうでもいい。神宮に行こう。

試合開始の1時間ほど前に神宮球場へ到着。するとさっそく応援団の音が場外にも聞こえてきた。試合開始までまだ1時間もあるのに、もう応援合戦を始めているのか。…と思ったら、隣の第二球場で行われていた東都大学2部の国士館大−東農大の応援の音のようであった。

東都2部は1試合のみの開催にもかかわらず午前10時半から試合をやっているようだ。これは第二球場がゴルフ練習場を兼ねているために、早く試合を終わらせるための措置なのだろうか。やはり2部だと待遇が悪くなるのだな。

ネット裏の特別指定席券を購入して入場。まずは一塁側・明大ベンチのほうを見やると、多くの報道陣の姿。ちょうど小林がブルペンに投球練習に向かうところであった。

入場券(日付は5月27日のまま) 多くの報道陣

そのうちに神宮球場のほうでも両校による応援合戦が始まる。明大の応援団が「ひとつ言えることはぁ〜、竹本恵よりも小林千紘のほうがかわいいということであるぅ〜!」と言っていた。一般的にはやはりそうか(笑)。

明大応援席 東大応援席

さて、試合開始15分前になりスタメンの発表。学生野球では基本的に「1番センター○○くん」と「くん付け」でアナウンスされる。女子選手の場合はひょっとして「さん付け」になるのかと注目していたら、「9番ピッチャー竹本くん」と男子と同様の扱いであった。

また、小林のほうはスコアボードに「小林千」と表記された。この日球場で買った東京六大学メンバー表(50円)には、他に小林姓はいない。と言うか小林千紘も載っていない(笑)。これはシーズン途中で登録されたためだろう。ちなみにこちらで調べたら明大には小林姓は全部で4人いた。

ところで女子選手の出場というと、1995年秋季リーグ戦で、ジョディ・ハーラー(明大)が対東大戦に先発投手として出場したのが史上初である。また、日本人選手としては、つい先日の4月14日に竹本恵(東大)が対慶大戦に打者2人に対して登板したのをはじめ、ここまで都合3試合に登板している。

12時、ホームプレートをはさんで両校の挨拶のあといよいよプレイボール。まずは明大・小林がマウンドへ上がる。小林は新人戦にも出ていないので、リーグ戦でいきなり神宮初登板ということになるわけだ。


試合前の両校による挨拶

ここで私は写真を撮るためにネット裏前方へ移動する。しかしそこには報道陣が多く陣取っていて、なかなかいい場所を確保できなかった。普段の東京六大学はもとより、プロ野球でもあまり見られない報道陣の数である。中には、カメラマンに視界を遮られるため、怒っている観客もいたほどだ。

東大の1番打者沢本(3年)が左打席へ入る。注目の第1球はいきなり空振り。しかし小林はキャッチャーからの返球を後に逸らしてしまう。これはご愛嬌といったところか。


注目の第1球
ハゲ頭がちょっと邪魔(笑)

続いて2球目を打ってセカンドゴロ。まずは1アウトである。ここで、新聞に掲載されていた対戦各選手のコメントを挿入していってみよう。

「相手が女性ということは気にしないようにしてたけどダメだった」(沢本)

続いて2番真鍋(4年)が右打席に入る。1球目ストライク。2球目ボール。3球目ボール。4球目ボール。これでカウントは1−3。1番打者があっさり打ってしまったため、2番打者はじっくりボールを見ているようである。

5球目ストライク、6球目ファウル。そして7球目をとらえるが今度はショートゴロ。スコアボードの球速表示を見ると、打ち取った球は「109km」であった。

「話題で登板している投手に打ち取られたくなかった」(真鍋)

3番入山(3年)が右打席へ。いよいよクリーンアップとの対戦である。ここで小林は2球続けてストライク。簡単に2−0とバッターを追い込んだ。そして3球目。入山はバットを出すが、ボテボテのピッチャーゴロ。

「余計な緊張感があってつらかった」(入山)

東大打線をあっさりと三者凡退に退ける堂々としたピッチングである…、と思ったらここで小林は一塁へ悪送球。先程のキャッチャーの返球を逸らしたことも含めて、ピッチングだけで手いっぱいで守備にまでまだ手が回らないといったところだろうか。

2アウト一塁となって、左打席に4番児玉(4年)を迎える。初球はボール。ここで主将の前田遊撃手がマウンドへ歩み寄り何か一言。これが効果あったのか、2球目を児玉が打ち上げてセンターフライ。とりあえず1イニングを無安打無失点で切り抜けた。

「客寄せみたいな試合は二度とやりたくない。時代の流れだからしょうがないけど、あきれ気味です」(児玉)

1回裏、今度は東大・竹本がマウンドへ。今まで映像では見たことはあったがナマのピッチングを見るのは初めてだ。左のアンダースロー。まるで水原勇気が現実の世界に現れたような妙な気分である(笑)。

まずは1番奥井(4年)が左打席へ。初球はボール。しかし2球目、3球目とストライクが入る。4球目はボール。カウントは2−2となった。そして5球目、奥井が初めてバットを振る。打球はショートゴロ。まずは1アウト。こちらもとりあえず無難な立ち上がりを見せた。球速表示を見ると「91km/h」。小林と比べると10km/hほどスピードは遅いようである。

「思わず手が出てしまった。女性と意識しないようにしてたんですが」(奥井)

2番深堀(4年)。初球ボール、2球目ストライクのあとの3球目をライト前ヒット。ヒットを打った余裕からかコメントは以下のとおり。

「歴史的な試合に出場できてうれしいです」(深堀)

1アウト一塁となり、打席には3番岩元(4年)。まずは一塁へ牽制球。牽制のほうも無難にこなしているようだ。そしてもう一回牽制球。しかしこれが今度は悪投となり、ランナーは一気に三塁へ達した。

せっかく無難にこなしていると思った矢先のエラーであった。これでスコアボードの両軍の「E」の欄には、ともに「1」と表示された。それはどちらも女性投手によるものだ。やはり竹本のほうも守備にまであまり手が回っていないのか。

岩元に対しては、ボール、ストライク、ファウルでカウント2−1。そして4球目、打球はセンター前に上がる。これがポテンヒットとなり三塁走者が生還。明大が1点を先制した。打者走者の岩元は二塁へ。

「昨夜から意識しちゃいました。いい球投げてました」(岩元)

「昨夜から意識」って、初デートじゃないんだから…(笑)。

なおも1アウト二塁とチャンスが続く中、打席には4番前田(4年)。ボール、ストライクのあとの3球目をサードゴロ。これで2アウト。

「ほんろうされちゃいましたね。『千紘効果』でチームはまとまっていましたが」(前田)

2アウト二塁となり、打者は5番庄田(4年)。3球ボールが続きカウントは0−3。このあと2球ストライクを投じ、踏ん張るも結局四球。これで2死一、二塁。

そして打席には6番西谷(1年)。ボール、ボール、ストライク、ボールでカウント1−3。そして5球目をとらえてセンター前へ弾き返す。と思ったら、ショートの越智が好捕し二塁封殺。結局被安打2、1失点でこの回は終了した。

「コントロールが良かった。四球は考えませんでした」(西谷)


竹本のピッチング

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